僕の尊敬する人へ

潮海晴

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悪魔

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あれから5日が経った。
事件の直後は生徒の自殺として話題となっていたが、5日も経てば特に話さなくなっていた。

なんにせよ、自分には関係の無いことだ。特に何も思うことも無く、普通の日常へ戻る。

しかし、連続自殺といってもわざわざ学校でやる必要はないだろう。少し興味が湧いてきた。自分なりの推理をしてみようと思う。まず、他殺だと仮定しよう。
そうすると、犯人は捕まっていないこの状況から、また自殺に見せかけた殺人が起こるだろう。
もしも、それが普通の殺人犯ではなく、共感性のないサイコキラーの場合、衝動に駆られ、間隔は狭まり、大体今日あたりに起こるのではないだろうか。まぁ、自分の推理が当たったことは今までで1度もないので、そこまで自信は持てないが…

そんな予想をしながら授業を受ける。
僕はある程度流し、重要なところだけ抑えていく。

いつもの慣れた作業をしていると、放送が鳴った。

「教員の皆さん。生徒安全集会を行いますので、至急職員室に集まって下さい。なお、生徒は自習を行なってください」

生徒安全集会…?
初めて聞く名前だな。そんなことを思っていると

「今の生徒なんたら集会ってなに?」
「初耳だわ。何するんだろ」

生徒間で雑談、というよりかはくだらない推測が始まった。
名前から分かるだろ、と呆れながら本を読む。

自習といってもすることがないので毎回読書をしている。
先生はまあまあ優秀な成績がある生徒には特に口を挟んだりはしない。

この時間、読書をしていたのは、僕と彼だけ。
2人だけ、というところに少しだけ優越感を覚える。

本が読みたいというよりかは、僕は彼と同じことをしたいだけなのかもしれない。

本を読み進めていくと、誰かが声高らかに言った。

「連続自殺がまだ続いてんじゃねーの?」

周りの人はそんなわけないじゃん、と笑い飛ばしている。だがみんな明らかに顔が強ばっていた。
5日前に起こった連続自殺。今回の“生徒安全”というキーワード。
無理もないかもしれない。



少しして先生が戻ってきた。
途端に静まり返る教室。

先生は教壇に立ち、言った。

「今日はここで終わりです。皆さん帰宅して下さい」

四方八方から、えぇー、なんでだよ。という反応が多くあった。
その反応とは裏腹に皆こう思っているだろう。


やはり連続自殺が起こったんだな、と。


先生が至るところに立ち、早く帰るように促している。
これは…見てみたいな。現場とやらを。

帰ったフリをし、校舎を一周し窓の中を確認していく。
すると、微かだが窓の外からでも分かるフラッシュが一瞬見えた。
あそこは…第一美術室?

第一美術室は3階にあるので、下からは見えにくい。

仕方がないので一旦帰宅することにした。
動きやすい服装と、カメラを持ち校舎に向かう。

先生はもう校舎付近にいなかった。

学校に入ってもバレないだろう。静かにドアを開け、校舎の中に入る

階段を上がっていく。物音を立てないよう静かに。そして第1美術室の所まで辿り着いた。

人影はなかった、だが見つかると厄介なので早めに見て帰ることにした。
教室のドアを開け、中を覗く。

天井から吊り下がる縄。下の方には輪があった。

…首吊りか。

このまま見ているとバレそうなので、その状態で写真を撮り、帰ってからデータを見ることにした。

さすがに遺体は警察に持っていかれてしまった。縄だけが放置されている。少し残念だった。だが、遺体がないのなら、他に用はない。
誰かに気づかれるとまずいので早めに退散することにしよう。

帰ろうとして、廊下を歩いていると、階段近くに人影が見えた。よく見ると、灰谷…彼の姿があった。何をしているんだろう、と思った後は無神経に彼の名前を呼んでいた。

彼は振り返り、笑顔を見せてくれた。
だが、その笑顔を見てゾッとした。尊敬している彼が一瞬悪魔に見えた。

翌日、特に休校にはならず普段と変わらず登校するらしい。
血痕の掃除は終わっているのか心配になるが、首吊りだからそんなものないか、と1人つぶやく。

学校に着く前に、遠目から校門前に人だかりが見えた。
なにやら、マイクやカメラを持っている。
生徒にインタビューをしているようだ。

気にせず通ろうとしても通れないだろうというほどの人数。
早く教室へ行き、これを回避しないと面倒だな…

そう思い、非常口階段を見ると廊下と階段を繋ぐ扉が開いていたため、そちらから行くことにした。



教室に入ると人影があった。灰谷…彼も非常口階段から来たのだろう。彼は、席につき何食わぬ顔で読書をしていた。
こちらの存在を確認すると、軽く会釈をしてくれた。昨日見た、悪魔の姿はなかった。きっと自分の思い違いだ。そう思うことにする。
    
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