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異世界で奴隷を買いました
7. 美醜逆転!?
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美しい。美しい。……美しい!?
今まで美人なんて言われたことない。小学校の頃、いえその前から誉め言葉と言えばせいぜい「落ち着きがある」「賢そう」「大人っぽい」とかで可愛いとか美人とか、それどころか美人になるよなんて優しいお世辞すらなかった。女には化粧があるから、なんて半分失礼な言葉はあったけど。
それなのにこの美青年ルドは人の顔をまじまじと見て真正面から美しいと言い放った。どういうこと。
だけどもし……もし彼が本当に私のことを美人だと思っているなら。
もし本当に美醜の基準が違うなら、ここに来てからの色々なことにつじつまがあう。やたらと自信満々だったアルバート。それから地味なはずなのに人の耳目を集める私。地味顔アルバートに虐げられていたルド……。
「うう……なんだか具合悪い……」
「!? 大丈夫ですか!?」
処理しきれない情報に思わずそう呟くと、ルドが飛び上がるようにして叫んだ。
「もう少し進んだところに俺が勤めている宝石の加工店があります! 店主も不細工ですけど、奥さんもいるんでそこで休みましょう!」
「え?」
ルドがそっと私の方へと手を差し伸べてくる。正直に言うと今まで異性と手を繋いだことなんてない。戸惑って彼の方を見ると、無意識だったんだろう。ルドは失敗したと言わんばかりに顔をぐしゃりと歪めて手をひっこめる。
「あ、すみません……!」
「ルドさん、あの」
「本当にすみません。忘れてください」
彼は早口にそう言うと、くるりと前を向く。
「体調、悪くなったら言ってください。人を呼んできます」
「いえ、全然問題ないです。その……気持ちの問題なので」
私がそう言うとルドは安心したように息を吐いて、再び静かに歩き出した。
だけど結局、手はもう差し出されることはなかった。
「うわ~! すごい美人! え、どうしたのルド! 誘拐はさすがにマズいって!」
薄暗い裏路地をひたすら通って連れてこられたのは宝石商の店……らしいんだけど、そこは思っていた宝石店とは違っていた。
宝石店って、こう豪華なつくりで綺麗な椅子やショーウィンドウがあるイメージだった。だけどそこはどちらかというと民家のようだった。小さな木造の店で、長屋のようにすぐ隣に別の店が並んでいる。店だというのに人通りの少ない道に建っているから、この世界に不慣れな私には店だとも分からなかった。読めない字で看板が下がっていて、その下にある古びた扉を開けると、中には少し汚れた普段着を来た若い男の人が質素な机の上で石を選り分けていた。
ルドよりは薄い顔立ちだけど、やっぱり外国人のような彫りの深い男の人だ。年はルドよりも少し上くらい。ルドと同じ茶髪に茶色の瞳で、その彼は私とルドを見るなり大声で叫んだのだ。
「気持ちは分かるぞ。俺だって美人なんて縁のない生活で、心も体もカラカラに枯れ果ててるけどそれでも犯罪は駄目だ!」
「違う。イーディー」
「そこまでお前が追い詰められてたなんて……すまない。俺が街に呼んだせいで辛い思いを……」
「だから待て!」
イーディーと呼ばれた彼はなぜか追い詰められたような顔をして目元を潤ませている。彼を落ち着かせようとルドが叫ぶけれど、埒が明かなそう。少し面倒事の予感がしながら、私は店内に一歩足を踏み入れると小さく声を上げた。
「すみません……あの、お邪魔してもいいですか?」
今まで美人なんて言われたことない。小学校の頃、いえその前から誉め言葉と言えばせいぜい「落ち着きがある」「賢そう」「大人っぽい」とかで可愛いとか美人とか、それどころか美人になるよなんて優しいお世辞すらなかった。女には化粧があるから、なんて半分失礼な言葉はあったけど。
それなのにこの美青年ルドは人の顔をまじまじと見て真正面から美しいと言い放った。どういうこと。
だけどもし……もし彼が本当に私のことを美人だと思っているなら。
もし本当に美醜の基準が違うなら、ここに来てからの色々なことにつじつまがあう。やたらと自信満々だったアルバート。それから地味なはずなのに人の耳目を集める私。地味顔アルバートに虐げられていたルド……。
「うう……なんだか具合悪い……」
「!? 大丈夫ですか!?」
処理しきれない情報に思わずそう呟くと、ルドが飛び上がるようにして叫んだ。
「もう少し進んだところに俺が勤めている宝石の加工店があります! 店主も不細工ですけど、奥さんもいるんでそこで休みましょう!」
「え?」
ルドがそっと私の方へと手を差し伸べてくる。正直に言うと今まで異性と手を繋いだことなんてない。戸惑って彼の方を見ると、無意識だったんだろう。ルドは失敗したと言わんばかりに顔をぐしゃりと歪めて手をひっこめる。
「あ、すみません……!」
「ルドさん、あの」
「本当にすみません。忘れてください」
彼は早口にそう言うと、くるりと前を向く。
「体調、悪くなったら言ってください。人を呼んできます」
「いえ、全然問題ないです。その……気持ちの問題なので」
私がそう言うとルドは安心したように息を吐いて、再び静かに歩き出した。
だけど結局、手はもう差し出されることはなかった。
「うわ~! すごい美人! え、どうしたのルド! 誘拐はさすがにマズいって!」
薄暗い裏路地をひたすら通って連れてこられたのは宝石商の店……らしいんだけど、そこは思っていた宝石店とは違っていた。
宝石店って、こう豪華なつくりで綺麗な椅子やショーウィンドウがあるイメージだった。だけどそこはどちらかというと民家のようだった。小さな木造の店で、長屋のようにすぐ隣に別の店が並んでいる。店だというのに人通りの少ない道に建っているから、この世界に不慣れな私には店だとも分からなかった。読めない字で看板が下がっていて、その下にある古びた扉を開けると、中には少し汚れた普段着を来た若い男の人が質素な机の上で石を選り分けていた。
ルドよりは薄い顔立ちだけど、やっぱり外国人のような彫りの深い男の人だ。年はルドよりも少し上くらい。ルドと同じ茶髪に茶色の瞳で、その彼は私とルドを見るなり大声で叫んだのだ。
「気持ちは分かるぞ。俺だって美人なんて縁のない生活で、心も体もカラカラに枯れ果ててるけどそれでも犯罪は駄目だ!」
「違う。イーディー」
「そこまでお前が追い詰められてたなんて……すまない。俺が街に呼んだせいで辛い思いを……」
「だから待て!」
イーディーと呼ばれた彼はなぜか追い詰められたような顔をして目元を潤ませている。彼を落ち着かせようとルドが叫ぶけれど、埒が明かなそう。少し面倒事の予感がしながら、私は店内に一歩足を踏み入れると小さく声を上げた。
「すみません……あの、お邪魔してもいいですか?」
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