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異世界で奴隷を買いました
3. 薄顔アルバート
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大声で叫んだ私は結局、地味顔の彼……名前はアルバートというらしい……の馬に乗って街に連れていってもらえることになった。
最初こそ訳の分からないドッキリかなんかだと思ったけれど、アルバートの話を聞いているうちにこれが悪ふざけでもなんでもないのかと思うようになった。なにしろ彼の乗っているのは角の生えた馬、茶色い体にクリーム色のたてがみ。それから頭ににょきりと生えた一本の長い角。ユニコーンなのだ。だけれどこちらではそれは珍しい動物でもなんでもないようで、アルバートは当然のようにそのユニコーンに跨るって頭を撫でたのだ。
あり得ない。それに日本で公道で馬に乗ることも滅多にない。それにこの道。ぽくぽくと平和に進んでいるが、道はコンクリートで舗装されておらず土がむき出しだ。それが永遠と続いていて、その道を逸れたところには草木が生い茂っている。よく見たらアルバートの服装もあまり現代では見ないもの、なめした革で作られたベストに、草を煮て染めた色のズボン。それから都会で暮らすにはごつすぎる実用的な革のブーツ。それらを着こなした地味顔アルバートは、慣れた様子でひらりと馬に飛び乗ると私に手を差し出したのだ。
異世界。そんな言葉が頭の中に浮かんでは打ち消し、だけど彼の話を聞くにつれてどんどんこれが「現実」なのだと脳みそに染みこんできたのだ。冗談じゃなくて、これはもしかしたらもしかするのかもしれない。
どうしよう。
どうしたらいいの。
え、だって私魔法とか使えないわよ。
「えーっと、じゃあニーナは田舎から出てきて、これから街で知人のところに行くんだね。その途中で倒れてしまったと」
「はい。……そんな感じです」
「そっか~。ニーナほどの美人が一人で歩いているのは危険だよ。出会えたことには感謝だけど」
広森という苗字はここでは目立ちすぎそうなので、荷菜という名前からとってニーナと名乗った。とっさに思いつけて良かったと思う。田舎から出てきたばかりの世間知らず。だけど父親の知人が面倒を見てくれることになっている……という適当を言ったのだけど、アルバートは結構あっさりと信じてくれたのだ。知人なんているわけないけれど、完全に身寄りがないとバレるのも危険かもしれない。そんなつもりで言った口から出まかせだけど、信じてくれてよかった。
「は、はは。美人ですか」
「いや本当に。君だったら護衛をしたいという男が山になっただろう」
「やめてください。そんなことないですよ……」
「そんなことあるよ。謙虚なところも素晴らしいと思うけどね」
盛大などっきりに引っかかっているのでなければ、ここは異世界なんだろう。もしくは私の夢。夢であると信じたいけど……体に感じる馬の夢も肌を照らす日差しの暑さもリアルすぎてとても夢とは思えない。
それにしても……この世界の人間はみんなこんな性格なのかしら。
さっきから隙さえあれば私の容姿を褒めてくるけれど、もう苦い笑いしか出ない。悪質なからかいかと思ったけど、それにしてはあまりにもしつこい誉め言葉。これはこちらの文化なのかしら。
強くやめてほしいと言っていいのか分からないまま、聞こえなかったふりをしていると、馬は街へと到着したようだった。
最初こそ訳の分からないドッキリかなんかだと思ったけれど、アルバートの話を聞いているうちにこれが悪ふざけでもなんでもないのかと思うようになった。なにしろ彼の乗っているのは角の生えた馬、茶色い体にクリーム色のたてがみ。それから頭ににょきりと生えた一本の長い角。ユニコーンなのだ。だけれどこちらではそれは珍しい動物でもなんでもないようで、アルバートは当然のようにそのユニコーンに跨るって頭を撫でたのだ。
あり得ない。それに日本で公道で馬に乗ることも滅多にない。それにこの道。ぽくぽくと平和に進んでいるが、道はコンクリートで舗装されておらず土がむき出しだ。それが永遠と続いていて、その道を逸れたところには草木が生い茂っている。よく見たらアルバートの服装もあまり現代では見ないもの、なめした革で作られたベストに、草を煮て染めた色のズボン。それから都会で暮らすにはごつすぎる実用的な革のブーツ。それらを着こなした地味顔アルバートは、慣れた様子でひらりと馬に飛び乗ると私に手を差し出したのだ。
異世界。そんな言葉が頭の中に浮かんでは打ち消し、だけど彼の話を聞くにつれてどんどんこれが「現実」なのだと脳みそに染みこんできたのだ。冗談じゃなくて、これはもしかしたらもしかするのかもしれない。
どうしよう。
どうしたらいいの。
え、だって私魔法とか使えないわよ。
「えーっと、じゃあニーナは田舎から出てきて、これから街で知人のところに行くんだね。その途中で倒れてしまったと」
「はい。……そんな感じです」
「そっか~。ニーナほどの美人が一人で歩いているのは危険だよ。出会えたことには感謝だけど」
広森という苗字はここでは目立ちすぎそうなので、荷菜という名前からとってニーナと名乗った。とっさに思いつけて良かったと思う。田舎から出てきたばかりの世間知らず。だけど父親の知人が面倒を見てくれることになっている……という適当を言ったのだけど、アルバートは結構あっさりと信じてくれたのだ。知人なんているわけないけれど、完全に身寄りがないとバレるのも危険かもしれない。そんなつもりで言った口から出まかせだけど、信じてくれてよかった。
「は、はは。美人ですか」
「いや本当に。君だったら護衛をしたいという男が山になっただろう」
「やめてください。そんなことないですよ……」
「そんなことあるよ。謙虚なところも素晴らしいと思うけどね」
盛大などっきりに引っかかっているのでなければ、ここは異世界なんだろう。もしくは私の夢。夢であると信じたいけど……体に感じる馬の夢も肌を照らす日差しの暑さもリアルすぎてとても夢とは思えない。
それにしても……この世界の人間はみんなこんな性格なのかしら。
さっきから隙さえあれば私の容姿を褒めてくるけれど、もう苦い笑いしか出ない。悪質なからかいかと思ったけど、それにしてはあまりにもしつこい誉め言葉。これはこちらの文化なのかしら。
強くやめてほしいと言っていいのか分からないまま、聞こえなかったふりをしていると、馬は街へと到着したようだった。
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