上 下
108 / 121

迷宮の疑問

しおりを挟む
49階層にあるパダムの町は活気に溢れている。
城壁に囲まれてはいるものの恐らく建物の数からして1000人ぐらいは生活してそうな気がするけどそもそもこの人達はどうやってここに来たんだろう。

いや、迷宮の入り口から入って来たのは分かるんだけど、一度下層まで来たら外に出るには腕の立つ冒険者を雇わないといけないし。
と言うかこの迷宮にある町や村に住んでいる人は外に出たいとは思わないのか?
だとしたら何故出たいと思ないんだろう?

そんな疑問をカトレア達にぶつけてみるも、あまり興味が無いらしく相手にしてくれない…。
酒場の給仕をしてるオバチャンにそれとなく聞いてみるも、生まれた時からこの町で過ごしていて町の外、ましてや迷宮の外など興味も無いし、行ってみたいと思った事は無いらしい。

不思議だ…。
人口は冒険者が住み着いたりすれば増えるけど、その多くは男だから男の多い町になりそうだけど見た限り男女比は5:5ぐらいでどちらかに偏っているとは思えない。
追加注文をするついでに質問チョイチョイしていて分かった事と言えば、生まれる子供は女の子が若干多い気がする程度の事だけだった。

分からない!!!
迷宮内に町や村があるのはまだわかる。
条件次第では住むことが出来る階層があるのだから危険があったとしても地上で仕事にあぶれたり、流浪するぐらいならと考える人が居てもおかしくないから。
だけどそれは上層であって魔物が強くなる中層に住むとなるとリスクが大きすぎる。
そもそもいつからこの町があったのかをオバチャンに聞いてみるも私が産まれる前からだけど何時ここに町が出来たのかは知らないらしい。
ただ気になった事は、「そんな事は産まれてこのかた考えた事も無いよ!!」と笑い飛ばされた事だ。
産まれ育った町の成り立ちを知らない?
考えた事がない?
興味が無い?

考え込んでいたらカトレアに「カツヒコがここに住み着く訳では無いんだから気にする必要はないでしょ!!」と言われてしまった。
確かに住み着く訳ではないから自分が気にする事では無いんだけど、疑問に思ったらその疑問を解消しないとなんか気持ち悪いじゃん?
そうカトレアに言うと、「どうせ数日もしたら忘れるでしょ!!」と言われてしまった…。
確かに!!

下層を目指して町を出て探索を始めたら数日で忘れるね。
そもそも迷宮と言う存在自体が疑問の塊だし!!

翌日、パダムの町を出発し、50階層に足を踏み入れる。
50階層へ続く階段を降りると、そこには広い空間があり、その空間を隔てた向かい側に下層への階段があった。
恐らく本来なら階層主が居るんだろうけど、恐らく既に討伐されてしまったんだと思う。
日付変更と共に階層主を討伐しアイテムを手に入れるのを専門にしている冒険者がここにも居るらしい。
この迷宮でまだ階層主に会った事ないから少しは期待していたのに、50階層でも階層主に会えなかった…。

その後気を取り直して下層へと足を踏み入れる。
51階層からは遺構型、洞窟型、自然型の順となっており、その順番が59階層まで続いていた。
遺構型では宝箱から魔道具やアイテム等が、洞窟型では金属塊や宝石が、そして自然型ではレレープと呼ばれるブドウみたいな果物や、ブーチと呼ばれる桃のような果物、他にもホイコン、ランジン、タマギギと呼ばれる野菜を収穫できた。
って、普通に大根と人参と玉葱じゃんか!!!
微妙に日本で呼ばれてた名前と違うけど、見た目は一緒だし味もほぼ一緒、そもそも村でも育ててたわ!!
レレープと呼ばれるブドウぽい果物は見るからにシャイン〇スカットだし、ブーチと呼ばれる果物は普通に白桃だ…。

ただレレープもブーチもメレンもレアな果物らしい。
酒場やギルドで仕入れた情報では、果物類は地上や上層階では育たないようで手に入れるには冒険者に依頼を出すか、冒険者が持って来てギルドに卸した物を買うかのどちらかしかないそうで結構な値段で売られているとの事だ。
野菜は…、まあ地上で育てた野菜よりも味が凝縮されていて美味しいらしく普通の野菜よりは高値で取引はされるものの良くて普通の2倍ぐらいの価格らしい。
なんかもう迷宮探索じゃなくて果物狩りに目的が変わって来てる気がする…。

そして60階層へ続く階段を降りると、そこは50階層同様に広い空間があり、その空間を隔てた向かい側に下層への階段があった。
ただ50階層と違う所は、ライオンの頭と山羊の胴体で尻尾が大蛇の魔物が居た事だ。

「キマイラね…」
「キマイラだな…」
「あれがキマイラですか? 初めて見ました!」

3人が落ち着きながらキマイラを眺め呑気に言葉を発する。

「えらく落ち着いてるけど、普通に強そうだよ? なんか山羊の角が電気でバチバチ言ってるし、ライオンは口から火が漏れてるから火を吐きそうだし、大蛇は毒とか持ってそうだし…」
「そうね、キマイラはそう言う生き物だから当然と言えば当然の感想ね。 だけど所詮は1匹、4~5匹居たら面倒だけど楽勝よ」

カトレアはそう言いながら後ろに下がり観戦モードに入った。

「カトレア? まさかこれを自分とルイーズさんとリーズの3人で倒すの?」
「はぁ? あなた何言ってるの? カツヒコとリーズの2人で倒すのよ! この程度ならむしろ1人で倒して貰いたいぐらいよ。 じゃないとこの先が思いやられるわ」

確かにそうなんだけどね…。
ただ見た目がなんかキモイと言うかエグイんだよね。
ライオンの口と山羊の口から涎がダラダラ垂れてるし、飛び掛かられたら涎が服に付きそうだし…。

これは涎をいかに浴びないで倒す事が重要な気がする。
迷宮内で獣の涎とか最悪だもんね…。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ゆとりある生活を異世界で

コロ
ファンタジー
とある世界の皇国 公爵家の長男坊は 少しばかりの異能を持っていて、それを不思議に思いながらも健やかに成長していた… それなりに頑張って生きていた俺は48歳 なかなか楽しい人生だと満喫していたら 交通事故でアッサリ逝ってもた…orz そんな俺を何気に興味を持って見ていた神様の一柱が 『楽しませてくれた礼をあげるよ』 とボーナスとして異世界でもう一つの人生を歩ませてくれる事に… それもチートまでくれて♪ ありがたやありがたや チート?強力なのがあります→使うとは言ってない   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 身体の状態(主に目)と相談しながら書くので遅筆になると思います 宜しくお付き合い下さい

異世界道中ゆめうつつ! 転生したら虚弱令嬢でした。チート能力なしでたのしい健康スローライフ!

マーニー
ファンタジー
※ほのぼの日常系です 病弱で閉鎖的な生活を送る、伯爵令嬢の美少女ニコル(10歳)。対して、亡くなった両親が残した借金地獄から抜け出すため、忙殺状態の限界社会人サラ(22歳)。 ある日、同日同時刻に、体力の限界で息を引き取った2人だったが、なんとサラはニコルの体に転生していたのだった。 「こういうときって、神様のチート能力とかあるんじゃないのぉ?涙」 異世界転生お約束の神様登場も特別スキルもなく、ただただ、不健康でひ弱な美少女に転生してしまったサラ。 「せっかく忙殺の日々から解放されたんだから…楽しむしかない。ぜっっったいにスローライフを満喫する!」 ―――異世界と健康への不安が募りつつ 憧れのスローライフ実現のためまずは健康体になることを決意したが、果たしてどうなるのか? 魔法に魔物、お貴族様。 夢と現実の狭間のような日々の中で、 転生者サラが自身の夢を叶えるために 新ニコルとして我が道をつきすすむ! 『目指せ健康体!美味しいご飯と楽しい仲間たちと夢のスローライフを叶えていくお話』 ※はじめは健康生活。そのうちお料理したり、旅に出たりもします。日常ほのぼの系です。 ※非現実色強めな内容です。 ※溺愛親バカと、あたおか要素があるのでご注意です。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

知らない異世界を生き抜く方法

明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。 なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。 そんな状況で生き抜く方法は?

無能と蔑まれた七男、前世は史上最強の魔法使いだった!?

青空一夏
ファンタジー
ケアニー辺境伯爵家の七男カイルは、生まれつき魔法を使えず、家族から蔑まれて育った。しかし、ある日彼の前世の記憶が蘇る――その正体は、かつて世界を支配した史上最強の大魔法使いアーサー。戸惑いながらも、カイルはアーサーの知識と力を身につけていき、次第に自らの道を切り拓く。 魔法を操れぬはずの少年が最強の魔法を駆使し、自分を信じてくれる商店街の仲間のために立ち上げる。やがてそれは貴族社会すら揺るがす存在へと成長していくのだった。こちらは無自覚モテモテの最強青年になっていく、ケアニー辺境伯爵家の七男カイルの物語。 ※こちらは「異世界ファンタジー × ラブコメ」要素を兼ね備えた作品です。メインは「異世界ファンタジー」ですが、恋愛要素やコメディ要素も兼ねた「ラブコメ寄りの異世界ファンタジー」になっています。カイルは複数の女性にもてますが、主人公が最終的には選ぶのは一人の女性です。一夫多妻のようなハーレム系の結末ではありませんので、女性の方にも共感できる内容になっています。異世界ファンタジーで男性主人公なので男性向けとしましたが、男女関係なく楽しめる内容を心がけて書いていきたいです。よろしくお願いします。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

処理中です...