上 下
87 / 121

新たなる拠点へ

しおりを挟む
宿に戻ると、ズボンの右足部分にある血痕と穴を見て、カトレア達は大体予想通りになったか、と言う感じの顔で報告時の様子を話す自分の言葉に耳を傾けている。

「それにしても、徐々に精神を侵食して操るような魔法とか使うだろう予想してたけど、随分お粗末ね…。 聞く限りだと効果が現れるまで時間がかかってる感じだし、まあそのおかげで帰って来れたんだから良かったんだけど」

そう言ってカトレアは話を締めくくると、今後どうするのかに話題を変えた。
「まあ、自分が元で教会から目を付けられたんだけど、このままこの王都を拠点にしてるとまた何かしら教会に絡まれる可能性があるし、いっその事ほかの国に行くってのは?」

「あたしはそれでも良いけど、どこの国に行くんだ?」
「それなんだけど、海がある国とか良くない? 海産物とか美味しそうだし」

「あなたね~、食べ物で今後の行先を決めるの?」
カトレアが呆れたような顔をしてるけど、田舎育ちだし、海がある国なら貿易とかで栄えてそうだし、海産物や貿易品とかの珍しい食材とかありそうだし。

ルイーズさんは海のある国と聞いて、交易品の珍しい酒を飲めると思ったのか「いいんじゃないか」と言い、リーズは「私は何処でもいいですよ」との事だった。
そしてカトレアも、ため息をついた後、「じゃあ海のある国ね…」と言い、地図を眺め、目的地の候補を探し始めた。

海のある国と言えば、火の国か水の国のどちらかだけど、火の国に行くには、樹の国から北上して光の国を通過した先にあり徒歩で約20日以上かかり、水の国へは、樹の国から東に迎えば徒歩で10日程ぐらいで着く、なので今回は水の国へ行く事に決まった。
実の所、光の国までは普通の道だけど、光の国と火の国の国境を越えて暫く進むと砂漠があり、5日程は砂漠を歩くことになるから、全員一致で水の国になったんだけどね…。
うん、砂漠は歩きたくない。
火の国に行くなら、水の国から北東に向うルートの方が砂漠越えも無いしね。

目的地が決まったので、出発を明後日と決め、明日は各自必要な物の買い出し、そして明後日の朝、ギルドに拠点を移す事だけ伝えて出発する事になった。
本来はギルドに拠点を移すと伝える必要は無いんだけど、教会関係者に自分達はもうこの王都に居ないと思わせて諦めて貰わないと困るし…。
ただ、教会であった事はあえて報告をしなかった。

本来は報告をするべきなんだろうけど、話し合った結果、ギルドが調査に乗り出すとその期間王都に滞在しないといけなくなるうえ、巨大組織である教会に対してギルドがどこまで対応できるのか疑問と言う理由だ。
実際Cランク冒険者の証言だけだと、教会が知らない、そんな事は無い、証拠を、など言い出したらギルドもそれ以上追及出来ず、反対に自分達が不利になる可能性もある。
だったらとっとと拠点を移してしまった方が良いと結論に至った。

それにしても、海に棲む魔物の討伐とか大丈夫かな…。

翌日は食料などの買い出し、予備の武器や野営具の補充など購入し宿に戻ると、各自が買って来た品や荷物をアイテムBOXに収納するよう依頼された。
完全に荷物持ちポジション化してるような…。
まあ空間収納だから重くも無いから何の負担にもならないから良いんだけど。
唯一カトレアだけは自前のアイテムバッグに収納していたけど、他の人はアイテムバッグ持ってないもんね。

そして出発当日、宿を引き払い、ギルドに王都を出て他の国で活動する旨を伝えた後出発をする。

うん、良い天気で旅立ち日和だ!
キャールの街ではそこそこ有意義な活動が出来たけど、樹の国王都バラムイでは思い出してもこれと言って有意義な活動をした記憶が無いし、むしろ面倒事に巻き込まれた感が満載で良い思い出と言うと、宿に風呂がついてたぐらいだ…。
水の国では良い宿があって有意義な活動が出来るといいな。

そして出発から4日目、樹の国から水の国に入り、6日後には水の国王都シールラに到着した。
途中、稀に探知で発見したオークに加え、サーベルボアなどの獣を狩りつつ進んではいたけど、盗賊に襲われる事も無く平和な行程だった。

王都の門の前には予想通り大勢の人が並び、中に入る為の検査をしているが、冒険者証を持っているので、列に並ばず人が普通に出入りしている方に向かい、衛兵に冒険者証を呈示する。
リーズはDランク、カトレアと自分はCランクだったので、衛兵は若干ぶっきらぼうな対応だったけど、ルイーズさんがAランクと分かると、態度が急変し、良い宿やおススメのお店、ギルドの場所など色々と教えてくれた。
やっぱりランクが高い冒険者だと、態度も変わって来るんだな…。

特にトラブルと言うトラブルも無く、水の国王都シールラに足を踏み入れると、バラムイと異なる活気に満ちていた。

シールラは高い城壁に囲まれてはいるものの、海側に城壁は無く、岸壁となっていて船を直接接舷して荷下ろしなどが出来るようになっている。
しかも川の水を引き込んで王都のそこら中に水路が張り巡らされ、いざとなったら水路にかかる木の橋を燃やせば水路が水堀になるという、防衛も考慮されている作りだ。
勿論城壁が無い岸壁側にも水路があり海側から攻撃を受けても防衛できるようになっている。
キャールの街は変な形の城壁だったけど、シールラはかなり考えられた造りになってるな…。
これも召喚者か転生者が考えたのかな。

そして、おススメされた宿に向かい、部屋を確保した後、ギルドに向かう。
なんかギルドで良く絡まれるけど、ここでは絡まれませんように。

そう思いながらギルドに足を踏み入れると、海の男!! っという風体の冒険者が併設された酒場で酒を飲んで騒いでいた。
う~ん、なんだろう…、この場違いな感じの雰囲気。
鎧とか着てる人居ないし、ここはギルドで合ってるよね?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

異世界でゆるゆる生活を満喫す 

葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。 もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。 家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。 ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。

おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限
ファンタジー
 俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。  人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。  そんな俺は、突如病に倒れ死亡。  次に気が付いたときそこには神様がいた。  どうやら、異世界転生ができるらしい。  よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。  ……なんて、思っていた時が、ありました。  なんで、奴隷スタートなんだよ。  最底辺過ぎる。  そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。  それは、新たな俺には名前がない。  そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。  それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。  まぁ、いろいろやってみようと思う。  これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

ある日、近所の少年と異世界に飛ばされて保護者になりました。

トロ猫
ファンタジー
仕事をやめ、なんとなく稼ぎながら暮らしていた白川エマ(39)は、買い物帰りに偶然道端で出会った虐待された少年と共に異世界に飛ばされてしまう。 謎の光に囲まれ、目を開けたら周りは銀世界。 「え?ここどこ?」 コスプレ外国人に急に向けられた剣に戸惑うも一緒に飛ばされた少年を守ろうと走り出すと、ズボンが踝まで落ちてしまう。 ――え? どうして カクヨムにて先行しております。

処理中です...