器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。

武雅

文字の大きさ
85 / 121

失敗報告 1

しおりを挟む
遺跡で周辺にあるだろうとの事だった竜残血花を採取して来ると云う依頼は予想通り達成出来ず、ありふれた薬草と道すがら狩ったオーク数匹と獣数匹と言う20日も王都から離れた場所に行って来たにも関わらずほぼ実りの無い結果となってしまった。

王都に戻り、ギルドで薬草や獲物を換金し、受付で依頼失敗の報告をする。
受付のうさ耳お姉さんは、何度も断っていた依頼を受けさせた後ろめたさかなのか、耳をペタンとさせ申し訳なさそうな顔をしながら、教会へギルドから報告をし、その後、正式な失敗報告を教会にしに行ってもらう事になるとの事だった。

やっぱり、このまま教会に行って、教会関係者らしい下っ端を捕まえ依頼失敗したと伝えて終わりって訳にはいかなかった…。
直接教会に報告に行ってくださいって言われれば、この手で行こうかと思ってたけど、そうはいかなかった。
残念。

そしてギルドを出て宿に向かい、再度部屋をとり部屋に併設されたお風呂で20日間の旅塵を落とし明日以降の予定を確認する。

カトレアやルイーズさんの予想では教会から失敗報告に来るようにと言われるのは恐らく明後日以降だろうとの事なので、明日は各自自由に行動し、明後日以降、教会からの連絡がギルドに来るまでは今まで通り王都周辺で午前中狩りをし、午後は訓練をする事にした。
わざわざ帰って来た翌日だけ休み、翌々日には常時依頼をする理由としては狩や採取の為に夕方まで王都の外に行っているから教会がギルドへ今日来させろと言って来ても夕方まで帰って来ないから多少の時間稼ぎにもなる。
まあ時間稼ぎをしてもしなくてもあまり意味は無いと思うけど、極力相手のペースに乗らないようにするのが良いとの事だった。

翌日は、薬屋に行き気付け薬を購入し、魔道具屋に行って魔術耐性を高める物は無いか探したけど、流石に都合よく魔術耐性を高める魔道具は無かった。
カトレアのお墓だった墳墓のダンジョン100階層に有った魔道具の中にも魔術耐性を高めるアイテムは無かったので、魔術を使われたら気合で何とかしないといけなくなってしまった…。
魔術は気合で何とかなるかな。
その後、武器屋を回り、手に馴染む剣が無いか探し、投擲にも使えるナイフを10本程購入した。

そして王都に戻った翌々日、常時依頼である薬草採取と狩をした後、訓練をし夕方ギルドに換金に行くと、教会から正式に失敗報告をしに来るようにとの連絡がギルドに届いていた。
予想通り、教会からの連絡は午前中に来ていたらしいけど、宿にもおらず、王都の外に行っているだろうとギルド職員が伝えると、自分がギルド来た際にすぐ教会に報告に来るよう伝えるように言っていたとの事だった。

「これってさ、時間を指定されていないから今晩遅くに行くのってありかな? 狩に行ってて夕方に聞いたから、一度宿で汗を流して食事をし、一休みしてから来ましたよって感じで…」
「まあ、嫌がらせにはなるな、とは言え夜に行っても昼間に行っても変わらないだろ、どうせ奴らは教会に住み込んでるんだし、夜行ったら待たされる時間が長くなるだけじゃないか?」

ルイーズさんが苦笑いをしながらそう言うと、カトレアもリーズも同意するようにうなずいている。
うん、やっぱり明日の朝行こう。
そう宣言して、再度風呂に入りアイテムBOXの中身を再確認し寝る事にする。
本当は服に解毒薬や気付け薬を忍び込ましておきたいんだけど、持ち物検査みたいなのされて下手に警戒させたらどんな手段を取って来るか分からないからいざとなったらアイテムBOXから出して素早く飲めるようにした方が良さそうだしね。

翌朝、宿で朝食を済ませると、一人で教会へ向かう。
ルイーズさんやリーズは一緒に行った方が良くない? って言ってくれたけど、カトレアの予想では自分以外は待つように言われるだろうし、最悪隔離されたりするかもしれないから、最初から一緒に行かず様子を見るのが良いとの事で、3人は宿で待機する事になった。

教会に着くと、入り口に居た教会関係者らしき人に声をかけ、依頼失敗の報告に来たと伝え、依頼者への取次を依頼すると、既に話が通っているのか、スムーズに応接室へ案内された。

依頼者って教会からの依頼ってだけで、実際誰が依頼したのか知らないんだよね…。
依頼断ってた時に、教会からじゃなくて具体的に誰からなのかも確認しておくべきだったかも。
まあ、知っていたとしてもどうにかなる訳じゃないから今更どうでもいい事なんだけど。

通された応接室のソファーに腰掛けていると、シスターさんがお茶と菓子を用意してくれて、もう暫くお待ちくださいと言い出て行ったけど、お茶や菓子には手を着けず、依頼主がやって来るのを待つ。

大体20分程経った頃、応接室の扉が開き、4人が入室したが、予想通り1人は聖女見習いのイリーナさん、あとは見た事のない、太った壮年の司祭1人と年老いた司祭2人だ。
一応立ち上がり挨拶をすると、年老いた司祭の一人がそのままでと制し、そのまま4人が自分と向かい合うようにソファーに座ると、すかさずシスターが4人のお茶を用意し、自分のお茶を下げ新しいものと交換し部屋を出て行った。

「初めまして、私はこの王都教会を任されている大司祭のファームイと申します。 こちらがヤムダとダエタイ、そして聖女見習のイリーナです」
「どうも、初めまして、冒険者のカツヒコです。 今日はご存じの通り依頼失敗の報告に来ました」

そっけない態度で依頼失敗を伝えると、大司祭と名乗ったファームイさんは笑顔を崩さず、詳細を促してきた。

嫌味のつもりでそっけない態度を取ってるんだけど、全然気にした様子無いな…。
まあ友好的な態度をとる理由も無いしそっけない態度を終始貫こう。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

処理中です...