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魔闘技

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「魔闘技とは珍しいな~、それもオークの頭を吹っ飛ばす程とは…」

オークとの戦いを見ていたルイーズさんが、珍しい物を見たという風な顔で女の子に声をかける。

「魔闘技? ルイーズさんそれ何?」
「カツヒコお前、魔闘技って知らないのか?」

「知りませんよ。 聞いた事も無いですし…。 ただなんか凄いって事は分かりますけど」
魔闘技と言う初めて聞く名前、技ってつくから何かしら凄い技なんだろうけど、見た感じ、徒手格闘に特化した技? って思っているとカトレアが魔闘技について説明してくれた。

どうやら魔闘技とは魔纏に似ていて、違う所と言うと魔力で全身に纏い攻撃の際、拳や足などで相手に打撃を与える際に魔力を放出し打撃の威力を何倍にもする技らしい。
とは言えベースとなる魔力量に加え魔力操作などがうまく出来ないと威力も落ちるうえ、基礎体力や格闘技術も必要とするものらしい。

カトレアの説明を聞いた後、女の子の方を見るも、魔力量や魔力操作は良いとして、基礎体力とかあまりなさそうに見える。

「それで? 魔闘技の使い手が一人旅って事はあなた冒険者?」
「あ、はいぃ~、Eランク冒険者ではありますが、依頼途中とかではなくってぇ~、人探しの旅をしてるんですぅ~」

どうやら冒険者らしいけど、こんなんで冒険者やってけるのかな…。 まあ自分が言うのもなんだけど…。
オークの死体をアイテムBOXに収納し、村を目指し歩きながら色々と話を聞く。

どうやら女の子は、16歳との事で名前はリーズとの事。
樹の国から光の国を挟んで北西にある土の国から来たようで魔闘技は父親から教わったらしい。
そして探し人と言うのも父親らしくリーズさんが13歳の時に旅に出てしまったとの事で、その父親を捜すのが旅の目的らしい。
ただ父親を見つけてどうするのかと聞くと、特に何かある訳でもないらしく、反対に何故探すのかと考え込んでしまった。
うん、まったくもってよく分からない人だ…。

「だけどリーズさん、父親探しの旅してたらお母さんが心配するんじゃ無いんですか?」
「リーズでいいですよぉ~、それに母は私が9歳の時にでていっちゃったんでぇ~、心配する人いないんですよぉ~」

そう言って、身の上を話し出したリーズさん、カトレアもルイーズさんも開いた口がふさがらなくなっている…。

どうやらリーズの父親は魔闘技を使いこなすBランクの冒険者だったらしく、リーズが6歳ぐらいまでは何処にでもある普通の家庭って感じだったらしい。
ただ一点、父親が魔闘技バカで家でも魔闘技の話ばかりをしていた事、リーズに魔闘技を教えていた事を除いて…。
ただリーズの母親は流石に結婚してから同じ話を何度もされていることに嫌気がさしたのか、村の若い男と不倫を始めたらしい。
そして、母親が不倫相手と一緒に居る時、運悪く帰って来た父親はその光景を目にすると驚くべきことを口にしたらしい。
本来なら怒るとかが普通だろうけどリーズの父親から出て言葉は、「君も一緒に住もう! そして俺が魔闘技を教えるから一緒に冒険者になれば収入も2倍で今よりもっといい生活が出来るぞ!」 だったらしい。
元々リーズの父親はBランクという事もあり生活に困るような事も無く、村では裕福な家庭だったが、不倫相手の男に対しても、不貞を働いた妻にも怒るでもなく平然とそう言いのけた事で、流石に不貞を働いていた妻も呆れ数日後にはリーズを残し男と一緒に村を出て行ってしまったらしい。
それでもリーズの父親は怒るでも落ち込むでもなく、残されたリーズに魔闘技を教え続け、そしてリーズが13歳の時、今まで稼いだお金であろう金貨50枚程を置いて、魔闘技を世間に広めると言い残し旅だったとの事らしく、リーズとしては、お金には困らないものの村で一人魔闘技の修行を続けているのもつまらない為、冒険者になったものの、ギルドの依頼も飽きたらしく、父親を捜すという名目で旅に出たらしい。

なんだこの人…。
よく分からない!! 父親も変な人っぽいけどこの娘も変な感じだ。

「それで、あなたを置いて旅に出た親父さんの足取りはつかめたのかい?」
ルイーズさんが少し呆れた感じの顔をしながら追いかけるも、リーズは全く足取りどころか噂すら聞かないとの事だ。

「う~ん、まあとりあえず樹の国の王都であるバラムイまで一緒に行きます?」
「たすかりますぅ~。 さっきみたいに数で来られたら私一人だと凌ぎ切れるかわからないですしぃ~、むしろ私からお願いしま~すぅ」

凄く間の抜けた喋り方で反対にイライラするけど、まあ放置したとしても行先は一緒だしね…。
自分と同じことを思っていたのかカトレアもルイーズさんも仕方ないといった顔をしてる。
せめて間の抜けた喋り方はどうにかならないのか? と思ったのでとりあえず本人に聞いてみた!

「普通の方がいいですかぁ~? 父がこういう風に喋ると育ちが良い良家のお嬢様のように見えると言ってたので実践してたんですけどぉ~、おかしいですかぁ~?」
「おかしいです!! 凄くおかしいです!!! そして絶対にリーズのお父さんの趣味です!!!」

即答した!!
そして断言した!!
どう考えても父親の趣味としか思えないから!!

「そうですか、じゃあ普通に話しますね」
「話せるんだ…、癖になってるから普通に話すのが得意じゃないとかそう言うの無く普通に話せるんだ!!」

「はい、あの喋り方をすると父が喜んでいたのでそうしてましたけど、普通に話せます。 むしろあの話し方は結構疲れるんで皆さんが普通の方が良いのなら…」

良かった…。
頭がお花畑な人じゃなくって。
そして歩きながら話を聞くと、どうやらあの喋り方で居ると、ギルドとかで奢ってくれたりする冒険者が居たりして食事代が浮いたりするから続けていたらしい。
うん、それって絶対に下心丸出しの馬鹿な冒険者だね。
しかも奢ってあげてもお持ち帰り出来てないみたいだし、ある意味カモられてる?
それにうまい事誘い出して襲ってもリーズに魔闘技で抵抗されたら返り討ちにされてそうだし…。

そしてリーズを加えて4人旅となったものの予定通りキャールの街を出てから6日後の昼過ぎには王都バラムイに到着した。

王都はキャールの街と比べると2倍程の高さはあろうかという城壁に囲まれ、王都自体の広さもキャールの何倍あるのかすら分からないほどだ。
門の所では王都に入ろうとする人の審査の列が出来ているが、冒険者は別に並ばなくても入れるらしくルイーズさんを先頭に門へ向かう。
歩きながらルイーズさんに聞いたら、キャールと同様で王都の住人証を持っている人、商人等の通行証を持っている人、そしてFランク以上の冒険者証を持っている人は衛兵に見せるだけで入れるらしく、並んでいる人は村から個人で物を売りに来た人や買い物に来た人に旅人、そして職を探して王都に来た人達らしい。
最下層のGランク冒険者は王都に入る際の通行税は免除されるものの基本的にギルドで受けられる依頼は街中の雑用の為、王都の外に出た場合は列に並ばないといけないらしい。

それにしてもみんな冒険者ギルドで登録して冒険者証を手に入れとけば通行税タダになるんじゃない?
そう思いルイーズさんに聞いてみたら、どうやらギルドに登録してもGランクの場合、最低でも月に5回は依頼を受けないといけないらしく、5回以下の月が3か月続いたらギルド登録が無効となるらしい。

初めて聞いた! と言うとカトレアも同く知らなかったらしく、恐らく最初の講習の際にダイルンさんが説明し忘れたんだろうとの事だった。
あのオッサン、ギルドの支部長なのに大事な説明をすっ飛ばしやがった!!
自分達はFランクスタートみたいなものだったから良いものの、普通の人に説明し忘れてたらどうするんだか…。

そしてルイーズさんに聞いたらGランクの冒険者証はFランク以上の金属製と違い木製となっていて裏に最終依頼達成日が記載され、その日から3か月経過していると無効とみなされ、再登録の際も登録料が2倍になるとの事だった。
初めて知った!!

因みにと、Fランク以上の冒険者証について聞いてみたら、冒険者証に魔法で情報が書き込まれているらしくギルドにある専用の機械に冒険者証をかざすと口座情報から依頼の達成状況まで分かるらしい。

おかしいな…。
ギルドの支部長から直接説明を受けたはずなのに初めて知る事ばかりだ…。
あのオッサン本当にギルドの支部長なのか?
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