上 下
70 / 121

2人の道

しおりを挟む
バイルさんとレーナさんの装備に関しては二人とも冒険者って事もありすんなりと自分に合う装備を見つけ購入したけど、日用品の購入は結構時間がかかった…。

バイルさんは特にこだわりも無く必要な物を買うだけですむので日用品の購入もすんなりと終わったけど、レーナさんの買い物は予想通り時間がかかった…。
と言うよりも、カトレアとルイーズさんが、遠慮するレーナさんを他所に女なんだからと言ってあれもこれもとお店を梯子し、バイルさんと自分が買い物に飽きて店の外で待っているといった感じだ。
やっぱりどこの世界でも女性の買い物は長い…。

そして昼食をはさんで買い物が終わった頃には夕方になりかけていた。
買い物もひと段落したところで朝、ルイーズさんに頼んでいた魔道具屋へ連れて行ってもらう。
キャールの街にある魔道具屋街に連れて行ってもらったが、魔道具街は大通り沿いではなく、2本程奥に入った所にあった。

ここは散策して無かったけど、こんな所があったんだ…。
そう思う程、魔道具屋街は道の左右に魔道具を扱う店が並び、店先や店内に所狭しと魔道具が並べられている。
「っで? カツヒコはどんな魔道具が欲しいんだ?」

ルイーズさんが案内をしてやると言わんばかりに聞いて来るも、実際これと言って欲しい物も無いので、出来る限り1軒ずつ店を見て周る。

ルミナ村ではほとんど魔道具なんか見かけなかったけど、街では料理の火も魔道具を使用しているようで、カセットコンロのような魔道具に水が出る魔道具、風が出る魔道具、虫よけの魔道具などが主流で戦闘に使うような魔道具はほぼ無いに等しく、有ってもゴブリンを倒せるかどうかといったぐらいの物しかなかった。

「カトレアの言ってた通り、生活用品的な魔道具しかないね…。 墳墓のダンジョンで手に入れた魔道具みたいに戦闘に役立ちそうな魔道具とか無いし」
「だから言ったでしょ、衰退してるって。 魔道具なんて簡単に言えば魔法陣に魔石の魔力を流して魔法を発動させる程度の物だし、この程度なら少し知識があれば簡単に作れる代物よ」

「カトレアは作れるの?」
「まあこの辺にある程度の物…、と言うよりも、もっとまともな物を作れるわ!」

「そうなんだ…。 今度作り方教えて」
そう言うとカトレアはなんかめんどくさそうな顔をしながら時間があれば教えてくれるとの事だった。
魔道具って作るのめんどくさいの?

そんな疑問を残しつつ宿に戻り夕食を摂る。
食後、ルイーズさんによる実戦形式の訓練をバイルさんと共に行い、2人そろってボコボコにされ、レーナさんはカトレアから魔法を効率よく使用する方法などを教えられていた。

レーナさんは勉強になったという顔してるけど、バイルさんはボコボコにされて凹んでる。
まあルイーズさんってAランク冒険者だし、ガチの肉体派なうえ一人依頼を受けて腕っぷしだけでBランクまで行った人ってこともあり実戦経験の差が如実に表れるんだよね。
手加減してくれないし…。

翌日、朝からギルドに向かいレーナさんの冒険者証を再発行してもらい、カトレア選んで来た依頼を受ける。

オークの討伐、損傷具合により価格変動アリ…。
ってこれ常時依頼じゃん!!

そう思いつつ、カトレアを見ると、バイルさんとレーナさんの実力を見る為だといわんばかりの顔でなんか文句ある? って顔をしている。
いえ、文句ありません…。

そして街を出て森に向かうと、カトレアが自分に探知を使用するのは良いけど、バイルさんとレーナさんには探知で獲物を見つけても教えるなと言って来た。
どうやら、2人で獲物を見つけ、2人だけで対処させるらしい。

バイルさんは探知を使えるのか、森に入ると反応のある方に迷わず足を向け、獲物を見つけるとレーナさんに合図を送った直後、一気に飛び出して行く。
最初の獲物はゴブリンが2匹だったが、バイルさんが急に飛び出したことに驚き身体が一瞬硬直した隙にレーナさんの杖から複数の風の刃を放つ。 ゴブリンの身体に致命傷とはいかないものの複数の傷を刻み、怯んだすきにバイルさんの剣がゴブリンの首を刎ねる。
そしてバイルさんは剣に着いた血糊をぬぐうと、即座に短剣を出して倒れたゴブリンから魔石を回収する。

「まあまあね。 とは言え力任せで剣を振って魔纏を使わないのが気に入らないわ」
「あ~、多分使えないんだよ! あたしは昔先輩冒険者に教えて貰ったから使えるけど、ほとんどの奴は使えないどころか魔纏ってモノを知らない奴だっているぐらいだからな」

カトレアの言葉にルイーズさんが答えると、カトレアは少し呆れたような顔をしている。
「冒険者が魔纏を使えないどころか知らないってどれだけ平和ボケしてるの? そもそも何で新人の時にギルドで教え無いの?」
「さ~ぁな、その辺の事はあたしには分からんね」

そう言いながらも、森の奥へ進むバイルさん達の後をついて行く。
今日1日で、バイルさんとレーナさん2人でゴブリン8匹、オーク2匹を狩ったけど、カトレア的にはまだまだらしい。

明日からは、バイルさんとレーナさん2人で街の周辺で狩りや採取をし、夜は宿でカトレアから魔纏を教えて貰うらしい。
もちろんバイルさんにはルイーズさんとの訓練もセットで付いて来る。
うん、魔纏の練習に加えルイーズさんにボコボコにされてバイルさんもグッタリだ…。
治癒魔法をかけてあげよう。
そしてレーナさんは、まだ気持ちの整理がついていないのか、常に魔法の練習などをし何かをして気持ちを紛らわせている感じだ。

こればっかりはカトレアもルイーズさんもどうにも出来ないしね…。
早く2人とも魔纏を覚えてくれればカトレアも後は2人でって言うんだろうけど。
それにしてもなんだかんだ言ってカトレアって面倒見良いよね。
口ではキツイ事言うけど、見捨てないで最低限の事を覚えるまで付き合うしね。

そしてバイルさん達と別行動で森に入りる自分達は午前中探知でオークやオーガを狩り、午後は森の中でカトレア相手に自分とルイーズさんの訓練をする。
そんな事を2週間程続けていると、レーナさんに続きバイルさんも魔纏を使えるようになった。

レーナさんも昼間はバイルさんと二人でいる為か、魔総契約を解除した頃に比べ笑顔も少しずつ戻って来たしなんか生き生きとしてきた。
狩りや採取で得たお金もある程度貯まったらしく、2人で部屋を借り、そこで生活しながらキャールの街で冒険者を続けると言っていた。

その後もギルドでたまに顔を合わせて話をすると、どうやら、定期的に薬草を採取してはスラムの薬屋に持って行ったり、狩りで得た獲物をあげたりとちょくちょくスラムに足を運んでいてスラムの人もバイルさんとレーナさんを拒む事なく今まで通り接してくれてるみたいだ。
餞別て訳じゃないけど墳墓のダンジョンで手に入れたアイテムバッグが結構役に立っていらしい。
ダンジョン産で量も結構入るし、状態保存の効果付きだから持ち運べる量に気兼ねなく狩りが出来ると喜んでた。

そしてスラムの子供とかを集めて定期的に剣や魔法、そして読み書きなんかも教えてあげてるらしい。
多分バイルさん的にはスラムから抜け出せない負のスパイラルを断ち切れるようにすることで自分を受け入れて支えてくれたスラムの人への恩返しなんだと思う。

それにバイルさんとレーナさんの仲も良好みたいだし、きっといつか結婚して子供が出来たらよい家庭になるんだろうな…。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

異世界道中ゆめうつつ! 転生したら虚弱令嬢でした。チート能力なしでたのしい健康スローライフ!

マーニー
ファンタジー
※ほのぼの日常系です 病弱で閉鎖的な生活を送る、伯爵令嬢の美少女ニコル(10歳)。対して、亡くなった両親が残した借金地獄から抜け出すため、忙殺状態の限界社会人サラ(22歳)。 ある日、同日同時刻に、体力の限界で息を引き取った2人だったが、なんとサラはニコルの体に転生していたのだった。 「こういうときって、神様のチート能力とかあるんじゃないのぉ?涙」 異世界転生お約束の神様登場も特別スキルもなく、ただただ、不健康でひ弱な美少女に転生してしまったサラ。 「せっかく忙殺の日々から解放されたんだから…楽しむしかない。ぜっっったいにスローライフを満喫する!」 ―――異世界と健康への不安が募りつつ 憧れのスローライフ実現のためまずは健康体になることを決意したが、果たしてどうなるのか? 魔法に魔物、お貴族様。 夢と現実の狭間のような日々の中で、 転生者サラが自身の夢を叶えるために 新ニコルとして我が道をつきすすむ! 『目指せ健康体!美味しいご飯と楽しい仲間たちと夢のスローライフを叶えていくお話』 ※はじめは健康生活。そのうちお料理したり、旅に出たりもします。日常ほのぼの系です。 ※非現実色強めな内容です。 ※溺愛親バカと、あたおか要素があるのでご注意です。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...