器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。

武雅

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特別試験

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ダイルンさんに言われた特別試験の内容は、1日で角ウサギを40羽討伐する事。
うん、無理じゃね?

1人40羽は分かるけどカトレアと二人だと80羽なんだけど、そんなに沢山キャールの街近隣に居るの?

「いやいや、ダイルンさん、1人で40羽は分かるけど、2人で80羽を1日でって、そんなに角ウサギは居るもんなの?」

そんな抗議の声を上げると、酒場でたむろしている冒険者達から盛大な笑い声が聞こえてくる。
殆ど…、と言うより全てが嘲り嘲笑する者ばかりで完全に出来るわけないといった感じの雰囲気がギルド内部を包み込む。

「居るも居ないも冒険者には関係ないだろ? 居なければ探して狩る、それが冒険者だ! それと1人40羽だが、2人で協力するなら100羽だ!! あと本来の討伐証明は角だけだが、肉も食用になるし皮も使えるからそのまま持って来い!」
「いやいや、ハードルをサラッと上げてるし、そもそも角ウサギの習性も生息地も知らないのに狩れっておかしいでしょ! せめて生息地と習性は伝えるのが普通じゃない?」

「まあいいだろう、角ウサギは角を含めて60センチ程の大きさで生息地はこの辺りの森だ、奴らは肉食に近い雑食で鼻が利くうえ獰猛だ、そして街の周囲にある畑の作物を食い荒らすから定期的に駆除をしている。 とは言え角ウサギは首の可動域が広いからFランク冒険者でも死傷する奴もいるぐらいだ」
「その弱そうで意外と厄介な角ウサギを2人で100羽倒して持ってこいと…」

「そうだ、それが特別試験の内容だ! ああちゃんと仕留めて持ってきた分はギルドが責任を持って買い取るから安心しろ」
「まあそれは当然でしょ! 買い取らないで試験だからってギルドがタダで取り上げたらおかしいし、不条理だもんね」

「まあそういう事だ、あと依頼以外でも確保した素材やアイテム類などをギルドに売却したらその売却金額に応じてランクアップの査定に追加されるからな、まあギルドへの貢献度ってやつだ、覚えておけ」
「じゃあダンジョンから得た宝石類やドロップした武器や防具をギルドに売ったら試験無しでGランクから上に上がれるんじゃない?」

「それは無理だ、GランクからFランクに上がるには依頼達成回数を規定以上こなす必要がある。 最低限の知識や技術を身に着けて貰わんと若い冒険者の死亡率が上がるからな」
「そう、じゃあFランクになったら墳墓のダンジョンで得た宝石類やドロップ武器と防具を売るんで」

「おう、それでもいいぞ、お前らに暫く安定して生活できる金銭的余裕があるならな」

そう言って鼻でわらうダイルンさんに、多少の貯えは持って来てる事を伝え、明日の朝、ギルドへ顔を出した後試験を受ける旨を伝えギルドを後にする。

「カツヒコ、流石に1日でウサギ100羽は無理じゃない? 街中での雑用とは屈辱だけど私が生きていた頃とギルドの在り方が随分変わってるから諦めてGからスタートでも私は構わないわよ、雑用なんてした事なかったからどんなものか興味あるし」
「まあ雑用を数こなしてFランクに上げるんでもいいんだけど、問題はどの程度数をこなせば上がるかなんだよね…。 実際その辺の説明はぼやかされてたし。 Gランクは仕事に就けない人の受け皿的な事も言ってたし毎日仕事がある保証も無いし、最悪1年以上昇格までかかる可能性もあるから飛ばせるもんなら飛ばしておきたいね」

「まあカツヒコが言いたい事も分かるけど、100羽よ? 探知を使って探し回っても1日で100羽も見つけられると思ってるの?」
「う~ん、普通に考えたら無理っぽい…。 だから今方法を考えてる。 それに試験は1回だけとは言われてないし、一網打尽にする方法を考えて試すを繰り返すのもアリだよね」

そう言いながら一旦宿屋に戻ると丁度夕飯の支度をしている途中なのか1階にある食堂から肉の焼けるいい匂いがして来る。

「おう、お前達帰って来たか! もうすぐ晩飯出来るから部屋で待ってな! 今日は一角牛のいい肉が手に入ったからステーキだぞ!! 出来たら呼びに行ってやる!」
厨房から顔をのぞかせた宿屋の親父ことアルさんは、そう言ってまた調理を再開し始める。

「カトレア、いい方法思いついた!! 上手くすればまとめて一網打尽の方法…」
「はぁ? そんな方法があるの?」

「多分ね…。 まあ失敗する可能性も高いけど、普通に探知で探し回って狩るよりはましだと思う」

そう言うと厨房に居るアルさんに肉と炭を売っている店の場所を聞き、急いで教えられた店に行く。

「カツヒコ、どういう事? 何で肉屋に行くのよ」
「まあ、とりあえずは肉屋が閉まる前に明日使う物を仕入れないと…」

不思議な顔をしながらついて来るカトレアを他所に肉屋に向かって走る。
何とかまだ営業はしていたけど、閉店間際で店主いわくロクな肉が残っていないとの事。

「おっちゃん、捨てる内臓や痛んで捨てる予定の肉でも良いから売って!!」
そんな言葉にカトレアと肉屋のおっちゃんは何を言ってるんだ? と言う顔をしてるが、自分が食べるわけではないので問題は無い。

肉屋のおっちゃんから、捨てる予定だった内臓や筋、売れ残って廃棄予定の肉などをかなり安く売ってもらい肉屋を後にして炭を買ってから宿に戻る。

「カツヒコ、あなた何をしようって言うの? 教えなさい!!」
そう言うカトレアに食事しながら説明すると伝え、【中州の蝶】の店主アルさん特製のステーキを食べる為に食堂へ向かう。

「おう、肉屋と炭屋で欲しい物は買えたか?」
「ええ、買えました。 ありがとうございます!」

そう言ってテーブルにつき運ばれてきたステーキを食べながらカトレアに説明をする。

「はぁ~~、よくそんな成功するかも分からない事思いつくわね…。」
説明を終えるとカトレアが盛大にため息をついたけど、意外とよい方法な気もするんだよね…。
まあ試してみない事にはどうなるか分からないけど…。

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