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100階層の主2
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「久々の来客だ、そう直ぐに帰らなくても良かろう、私の質問に答えれば苦しまずに楽にしてやるぞ」
そんな言葉が背中越しに聞こえて来くる。
震える足を押さえ、気力を振り絞り、振り向くと、石の棺から起き上がった純白のローブを纏った何かが立っている。
人? フード被ってるから顔が良く見えないけど、人なのか?
いや違う、ミイラ?
フードから覗く顔は、スケルトンのように骨と言う訳でも無く、皮があり、ローブの袖から見える手も骨と皮だけの指が見え隠れしている。
「質問? 自分に質問って何を聞きたいんですか?」
恐らく声は上擦って、顔は引きつっているだろう。
やっとのことで声を絞り出すと、声の主は楽しそうに口を開きます。
「まず今はロマーラル歴何年だ? いや、以前来た冒険者はロマーラル帝国は滅び、今はノーム歴と言っているのか…。 それで今はノーム歴何年だ?」
決して寒くは無いのに、恐怖で体中の毛穴か開き、汗が噴き出し、服が体に張り付く。
ゴクリと生唾を飲み込み、意を決してアンデッドの質問に答える
「ノーム歴241年」
やっとの事でそれだけ口にするが、それ以上の言葉が出てこない。
「そうか、それでロマーラル歴は何年で終わったんだ?」
「お、教えられた限りだと、416年…。 それがどうしたって言うん、で、ですか?」
「ほぅ、羽虫のくせに質問をして来るとは…。 楽に死にたくはないようだな、それとも私から逃げれると? まさか倒せるなんて思っていないだろうな?」
そう言うとアンデッドの魔力が膨れ上がり、不快な魔力が身体に絡みつく。
「い、いや、そもそも授かったギフトがもとで家を追い出されて、ハズレダンジョンと言われる場所で基礎能力向上させる為に来ただけで、倒そうとか思ってませんから…。 ていうか村から出たばっかりで、この世界の事もよく分からないし…」
「この世界の事? 面白い事を言うな…、それにギフトが元で追い出されただと? 余興としてきいてやろう、追い出される程とは、どのようなギフトだ?」
そう言うとアンデッドは膨れ上がった魔力を一旦おさめ、質問を投げかけてきた。
話が通じる…。
これならもしかしたら逃げるチャンスがあるかも…。
不快な魔力がおさまり息苦しさも収まったので、アンデッドへ向き直り、自分のギフトを話す。
「器用貧乏だと? なんだそれは、そのようなギフトなぞ聞いたことがないぞ!」
「聞いたことがないと言うのは村の司祭も言っていたんだけど、前世の世界では、器用だから大体の事はこなせるけど色んな事に手を出し過ぎてすべてが中途半端になるって感じの事なんだけど、この世界では貧乏になると言われて家を…、いや村からも追い出されたんだよ」
「前世? お前は前世の世界と言ったか?」
「言ったけど、それがなにか?」
「お前は召喚者か? いや前世という事は転生者か?」
「多分転生だと思う、前世では酔っ払って階段から落ちたとこまで記憶があるから、死んでこの世界に転生したと思う」
「そうか、転生者か…。 これは珍しい、召喚者は幾人も見て来たが、転生者は初めてだ、だが階段から落ちて死ぬとは…、間抜けとでもいうのか…」
そう言うとアンデッドは、そうかそうか、と何故か好戦的な雰囲気から何か楽しそうな感じで部屋の隅に乱雑に置かれている品々の中からテーブルと椅子を持ってきた。
えっ?
何? 何故に椅子とテーブル用意する?
そんな自分の困惑をよそにアンデッドは手際よくテーブルの上にお菓子を並べ、お茶の支度をし始めた。
「お主、名はなんと言うんだ? まあ立ち話もなんだ、椅子に座ってゆっくり話を聞こう、茶もあるぞ」
唖然とする自分をよそにアンデッドは、高そうなティーセットのカップにお茶を注ぎ差し出す。
うん、何故かアンデッドに接待されてるのが疑問だけど、もうかなりの間、飲み物は水だけだったから、お茶って新鮮だ…。 そして美味しい。
カップに注がれたお茶を飲み干し、お替りを貰い久々に飲む水以外の飲み物を堪能してい居ると、その姿を見たアンデッドは表情こそ分からないが、雰囲気的に心なしか楽しそうな感じがする。
なんで…、なんでこうなった?
詰んだと思ったけど一応何とか危機は回避できたから深く考えるのをやめよう。
うん、機嫌損ねないように注意して会話をしよう。
なんかこのアンデッド運良ければ無事に帰らせてくれそうだし、そして何より人間じゃないけど、久々にまともな会話が出来る事に何故か恐怖より喜びが湧いて来たんだけど…。
やっぱりボッチだったから病んでるんだな…。
そんな言葉が背中越しに聞こえて来くる。
震える足を押さえ、気力を振り絞り、振り向くと、石の棺から起き上がった純白のローブを纏った何かが立っている。
人? フード被ってるから顔が良く見えないけど、人なのか?
いや違う、ミイラ?
フードから覗く顔は、スケルトンのように骨と言う訳でも無く、皮があり、ローブの袖から見える手も骨と皮だけの指が見え隠れしている。
「質問? 自分に質問って何を聞きたいんですか?」
恐らく声は上擦って、顔は引きつっているだろう。
やっとのことで声を絞り出すと、声の主は楽しそうに口を開きます。
「まず今はロマーラル歴何年だ? いや、以前来た冒険者はロマーラル帝国は滅び、今はノーム歴と言っているのか…。 それで今はノーム歴何年だ?」
決して寒くは無いのに、恐怖で体中の毛穴か開き、汗が噴き出し、服が体に張り付く。
ゴクリと生唾を飲み込み、意を決してアンデッドの質問に答える
「ノーム歴241年」
やっとの事でそれだけ口にするが、それ以上の言葉が出てこない。
「そうか、それでロマーラル歴は何年で終わったんだ?」
「お、教えられた限りだと、416年…。 それがどうしたって言うん、で、ですか?」
「ほぅ、羽虫のくせに質問をして来るとは…。 楽に死にたくはないようだな、それとも私から逃げれると? まさか倒せるなんて思っていないだろうな?」
そう言うとアンデッドの魔力が膨れ上がり、不快な魔力が身体に絡みつく。
「い、いや、そもそも授かったギフトがもとで家を追い出されて、ハズレダンジョンと言われる場所で基礎能力向上させる為に来ただけで、倒そうとか思ってませんから…。 ていうか村から出たばっかりで、この世界の事もよく分からないし…」
「この世界の事? 面白い事を言うな…、それにギフトが元で追い出されただと? 余興としてきいてやろう、追い出される程とは、どのようなギフトだ?」
そう言うとアンデッドは膨れ上がった魔力を一旦おさめ、質問を投げかけてきた。
話が通じる…。
これならもしかしたら逃げるチャンスがあるかも…。
不快な魔力がおさまり息苦しさも収まったので、アンデッドへ向き直り、自分のギフトを話す。
「器用貧乏だと? なんだそれは、そのようなギフトなぞ聞いたことがないぞ!」
「聞いたことがないと言うのは村の司祭も言っていたんだけど、前世の世界では、器用だから大体の事はこなせるけど色んな事に手を出し過ぎてすべてが中途半端になるって感じの事なんだけど、この世界では貧乏になると言われて家を…、いや村からも追い出されたんだよ」
「前世? お前は前世の世界と言ったか?」
「言ったけど、それがなにか?」
「お前は召喚者か? いや前世という事は転生者か?」
「多分転生だと思う、前世では酔っ払って階段から落ちたとこまで記憶があるから、死んでこの世界に転生したと思う」
「そうか、転生者か…。 これは珍しい、召喚者は幾人も見て来たが、転生者は初めてだ、だが階段から落ちて死ぬとは…、間抜けとでもいうのか…」
そう言うとアンデッドは、そうかそうか、と何故か好戦的な雰囲気から何か楽しそうな感じで部屋の隅に乱雑に置かれている品々の中からテーブルと椅子を持ってきた。
えっ?
何? 何故に椅子とテーブル用意する?
そんな自分の困惑をよそにアンデッドは手際よくテーブルの上にお菓子を並べ、お茶の支度をし始めた。
「お主、名はなんと言うんだ? まあ立ち話もなんだ、椅子に座ってゆっくり話を聞こう、茶もあるぞ」
唖然とする自分をよそにアンデッドは、高そうなティーセットのカップにお茶を注ぎ差し出す。
うん、何故かアンデッドに接待されてるのが疑問だけど、もうかなりの間、飲み物は水だけだったから、お茶って新鮮だ…。 そして美味しい。
カップに注がれたお茶を飲み干し、お替りを貰い久々に飲む水以外の飲み物を堪能してい居ると、その姿を見たアンデッドは表情こそ分からないが、雰囲気的に心なしか楽しそうな感じがする。
なんで…、なんでこうなった?
詰んだと思ったけど一応何とか危機は回避できたから深く考えるのをやめよう。
うん、機嫌損ねないように注意して会話をしよう。
なんかこのアンデッド運良ければ無事に帰らせてくれそうだし、そして何より人間じゃないけど、久々にまともな会話が出来る事に何故か恐怖より喜びが湧いて来たんだけど…。
やっぱりボッチだったから病んでるんだな…。
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