器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。

武雅

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冒険者のパーティー

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宿屋に併設される酒場で働きだして3か月程過ぎた。

春になってルミナ村を拠点に薬草採取や動物や魔物を狩る冒険者が続々とやってきて酒場は夜になると大盛況といった感じで最初は忙しさで冒険者に話しかけ情報収集をする暇も無かったけど、10日もすれば顔も覚えられ、また8歳という事もあり顔なじみの冒険者なんかからはお小遣いと言って銭貨をチップとして貰う事もある様になってきた。

まあ宿屋で生活をするようになって、早朝から村の外周を走り、その後木の棒で素振りをしている子供がいれば、人の良い冒険者なんかはからかい半分で構ってくれる。

とはいえ何で宿屋で生活をするようになったかと言うと、ハッキリと父に夕方から夜の間、酒場で働くなら宿屋に部屋を用意してやるからそこで生活しろといわれたからだ。
まあ深夜に家に帰り水浴びをして自室に帰り寝る感じだが、自分が帰るまで家の戸締りは出来ないし、夜遅くにゴソゴソされるのが迷惑だったとと言った理由が建前だ。
実際は兄たちから周囲に自分のギフトが器用貧乏と言う未知のギフトである事が伝わってしまったために体よく追い出したというところだろう。

とは言え8歳児を追い出すと近隣の目もあるので一応、自分の部屋はそのままで、酒場の仕事が無いときは家に戻り食事や自室で寝るのは禁止されていない。
あくまで自分から酒場で働きだしたので、働いている日はいっその事宿屋で寝泊まりしろという事らしい。
ただ宿屋に部屋を用意されたことでメリットもあるので一概に酷い親だとも言えないんだけど。

そのメリットの一つ、Dランク冒険者パーティーのフォレスト、男3人に女2人の5人パーティーで薬草採集をメインとし、魔物が居れば魔物を狩る、そんな冒険者パーティーのフォレストに気に入られ、彼らが休養日の時は剣の稽古や弓の使い方、そして魔法まで教えてくれる事だ。

リーダーのバイルさんは20歳で、武器は剣を使い、戦闘時などは指示を出しながら戦う、若いのにダンディなお兄さん。

女性で魔法使いのレーナさんは18歳はスタイルも良くかなりの美人、そしてバイルさんの恋人らしい…。
こんな綺麗でスタイルの良いお姉さんに、あんな事やこんな事を出来るとは…バイルさん羨ましい。

もう一人の女性アマンダさんは21歳、武器は大剣を使う筋肉質なお姉さん。
美人ではあるが筋肉美の方についつい目がいってしまう。 そして珍しいギフト【狂暴】を授かったみたいだけど、そのギフトが原因で自分のように家を追い出されたらしい。
ただスキル【狂戦士化】をギフトと同時に手に入れた事で冒険者の道に進んだらしい。
狂戦士化ってどんな感じなんだろう。
暴走して見境なく大剣を振り回し動く物に襲い掛かるのかな…。
ちょっと怖くて聞けないや。

そして、筋肉質でどう見ても戦士と言った感じのダルムさん 28歳で最年長、見た目に反してオネェ系でヒーラーとの事。
人は見た目じゃ無いんだね。
でも武器はかなり重そうなメイスって、ヒーラーじゃなくやっぱり戦士なんじゃ…。

最後に、細身のヤランさん、22歳で武器は弓、そして索敵なども行うシーカーも兼任しているようで、スキル【探知】を持っているらしい。

そんなフォレストのメンバーに剣や弓、魔法を教えて貰えるのはある意味幸運と言ってよかったのかもしれない。

何よりこの世界にはギフトとは別にスキルが存在し、ギフトはあくまで加護であり加護に見合ったスキルを習得しやすくする効果だけと言う事を教えて貰えた。
ただ身に付けたスキルを確認するには町のギルドか教会で調べてもらうしか方法が無く、ルミナ村では自分がどんなスキルを得たかは調べる術がないらしい。

バイルさんは「剣や弓の練習をしてればいつの間にかスキルはついているよ」
と爽やかに言っていたけど取得したスキルとそのスキルレベルを調べる術が無いのは若干モチベーションが…。
だけど魔法に関しては、習得が意外と容易な事に驚き、そして心の中でガッツポーズをした。

なんせ魔法を覚えるには魔法を使える人と両手を繋ぎ、覚えたい魔法をイメージしながら相手の魔力と自分の魔力を一緒に循環させるだけで覚えられるというお手軽さ!

ただ魔法と言ってもどうやらこの世界では、一部の高位魔法や特殊魔法を除いてこれと言った詠唱や効果は無く、使用者のイメージと練習の結果、自分だけの攻撃魔法を使用するらしい。

なので、魔法使いのレーナさんから教えて貰えるのは基本の火、水、風、土、雷、光のみで後は自分で効果をイメージし魔法を身に付けるしかないようだ。

とは言え、ヒーラーのダルムさんから教えてもらったヒール、病気などに使うリカバリー、そして解毒魔法に浄化魔法は詠唱は必要ないうえ、他の魔法と違い覚えられれば後は使用する魔力量に応じて効果が出る。
ただ、これは相性と言うものが特に強くあるらしく、魔力循環で教えて貰えても使用できるとは限らないらしい。

うん、自分は使えるようだから相性は良いみたいだ。
まあこれも器用貧乏の恩恵かな?

そしてリーダーのバイルさんからは身体強化を教えて貰えた。
これも魔法の一種らしく魔力循環で覚えられるけど、無理やり自身の身体能力を魔力で強制的に向上させる為、普段から鍛えていないと使用後に良くて筋肉痛、悪ければ筋肉断裂や骨折などするとの事なので、体力向上トレーニングは怠らないようにと釘も刺されてしまった…。

とは言え8歳児の自分は魔力量が少ない為、フォレストのメンバーのように魔法は使えないので、レーナさんから教わった魔力量を増やす為の訓練も日々のトレーニングに加えよう。

あと、アマンダさんが教えてくれたけど、早急に魔力や身体能力を向上させたい場合などは、魔物を倒すとその魔物が持つ魔力の一部が身体に吸収され魔力や身体能力が向上するとの事なので、魔物を数多く倒すことで上昇するらしい。
教えられた後に、だからと言って絶対に魔物を倒しに村の外に行かないようにと約束させられてしまった…。

そして、その他の冒険者もフォレストのメンバーが剣や弓、魔法を教えてるのを見て、面白半分で自分も教えてみようといった感じなのか、水魔法の応用である氷魔法を教えてくれたり、収納魔法であるアイテムボックスを教えてくれたり、剣の稽古を付けてくれたりしてくれたので、自分で計画した日々のトレーニングをこなす以上に充実した日々になっている。

それにしても収納魔法、いやアイテムボックスがあるってのはやっぱり異世界だな…。
聞く限り、アイテムバッグもあるみたいだけど、魔法ならバッグを持ち歩く必要も無いし、盗難の心配も無いもんね。

収納魔法を教えてくれた冒険者の人には、酒場でコッソリ料理サービスしなきゃ。
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