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プロローグ
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静寂のなか司祭が唱える祈りの声だけが響いている。
「天地を創造しせし女神ジャンダーク様、この者に女神のご加護をお与えください」
この国では8歳の誕生日になると教会で神からギフトという名の加護を授けられる儀式を受けるのが通例となっている。
お世辞にも綺麗とは言えない村の教会で8歳になった自分も両親に連れられて女神からの恩恵、ギフトの付与式に臨み、両親に見守られる中、祭壇の前で祈りを捧げギフトを授けてもらう。
司祭の祈りと共に身体が光に包まれ神からギフトが与えられるが…。
沈黙する司祭に父が急かすように与えられたギフトが何か問いかける。
「司祭様、息子はどの様なギフトを頂いたのですか?」
そう母が口を開き、父は司祭からの言葉を待つように押し黙っている。
「ふむ、これは…。 なんと言えばよいのやら…。 器用貧乏というギフトを授かったようですが…。 私もこのようなギフトは初めてです」
そう言う司祭の言葉に、器用、なのに貧乏という不思議なギフトを与えられた息子をまじまじと見つめ、司祭にどのようなギフトなのか詰め寄る母親に司祭は私にも分からない、恐らく器用さには長けているが貧乏になる運命にある、または貧乏を引き寄せる可能性があるギフトであろうと伝えると、両親も困ったような顔をし、なにやら司祭と話合ってるけど…。
「ファイン、お前のギフトは健康だ、周りにはそう言うんだ。 決して器用貧乏がギフトだと話すな、他人には健康だと言うんだ、お前は幸い今まで特に病気なども無いから誰も怪しまないだろうからな、分かったな!」
そう言い睨むように自分を見る両親の言葉にうなずき、教会を出て家路につきますが、とても気まずい感じなのか両親は一言も発しなかった。
ファイン、それが自分の名前、住んでるルミナ村は決して大きい村とは言えないけど、それでも1000~1100人程が住む村で、父は宿屋や商会などを営んでおり村ではかなり裕福な家、そんな家の三男として産まれ、先程まで何不自由なく育てられてきたが、神からギフトを授けられた瞬間から、昨日までの不自由のない生活が一変した。
それも、父も母も、自分が得た得体の知れないギフト、器用貧乏について調べてはみたようだが詳細どころか何の情報も得られず、器用さはあるけど貧乏になる疫病神的なギフトと認識したためだった。
夜、父に呼び出され屋敷のリビングに行くと、難しい顔をした父と母がソファーに腰掛けこちらに冷たい視線で見ている事で幼いながらも不穏な物を感じ取り、両親にギフトについて質問を投げかける。
「あ、あのお父さん、自分が頂いたギフト、器用貧乏のこと…」
そう言いきらないうちに顔を怒らせた父が歩み寄り自分の首を掴んで壁に叩きつけられる。
ドン!!
「そのギフトは口にするなと言ったはずだ!!」
首を掴み壁に自分の身体を押し付けた状態で父が怒鳴り、助けを求めるようにソファーに座ったままの母に視線を向けると、まるで自分の子供では無いかのように冷たい視線をこちらに向けたまま口を閉ざしている姿が目に移った。
ドン!! ドン!!
「分かったか、二度とそのギフトを口にするな! わかったな!!」
怒鳴りながら父は勢いよく自分を壁に押し付ける。
ドン!!
「分かったかと聞いてるんだ!!」
喉を押さえられ呼吸がしにくい状態の中でかろうじて、はい、と言う言葉を口にすると父は自分を壁に抑えつけていた手を放しソファーの方へ戻っていく、そんな後姿を薄れゆく意識の中で。
なんで…、なんで知らないギフトを授かっただけでこんな目に…。
そんな思いが一瞬頭に浮かびますが、深く考える前に目の前が暗くなりそのままその場で意識が薄れていく。
「国の法律で親は子の面倒を成人する15歳まで見ないといけない決まりだ、今すぐにでも出て行ってもらいたいが、それまではこの家においてやる、だが15になったら村を出て行ってもらうからな…」
薄れゆく意識の中でそのような声が耳に入るが、返事をする事も無くそのまま意識が闇の中に吸い込まれていった。
「天地を創造しせし女神ジャンダーク様、この者に女神のご加護をお与えください」
この国では8歳の誕生日になると教会で神からギフトという名の加護を授けられる儀式を受けるのが通例となっている。
お世辞にも綺麗とは言えない村の教会で8歳になった自分も両親に連れられて女神からの恩恵、ギフトの付与式に臨み、両親に見守られる中、祭壇の前で祈りを捧げギフトを授けてもらう。
司祭の祈りと共に身体が光に包まれ神からギフトが与えられるが…。
沈黙する司祭に父が急かすように与えられたギフトが何か問いかける。
「司祭様、息子はどの様なギフトを頂いたのですか?」
そう母が口を開き、父は司祭からの言葉を待つように押し黙っている。
「ふむ、これは…。 なんと言えばよいのやら…。 器用貧乏というギフトを授かったようですが…。 私もこのようなギフトは初めてです」
そう言う司祭の言葉に、器用、なのに貧乏という不思議なギフトを与えられた息子をまじまじと見つめ、司祭にどのようなギフトなのか詰め寄る母親に司祭は私にも分からない、恐らく器用さには長けているが貧乏になる運命にある、または貧乏を引き寄せる可能性があるギフトであろうと伝えると、両親も困ったような顔をし、なにやら司祭と話合ってるけど…。
「ファイン、お前のギフトは健康だ、周りにはそう言うんだ。 決して器用貧乏がギフトだと話すな、他人には健康だと言うんだ、お前は幸い今まで特に病気なども無いから誰も怪しまないだろうからな、分かったな!」
そう言い睨むように自分を見る両親の言葉にうなずき、教会を出て家路につきますが、とても気まずい感じなのか両親は一言も発しなかった。
ファイン、それが自分の名前、住んでるルミナ村は決して大きい村とは言えないけど、それでも1000~1100人程が住む村で、父は宿屋や商会などを営んでおり村ではかなり裕福な家、そんな家の三男として産まれ、先程まで何不自由なく育てられてきたが、神からギフトを授けられた瞬間から、昨日までの不自由のない生活が一変した。
それも、父も母も、自分が得た得体の知れないギフト、器用貧乏について調べてはみたようだが詳細どころか何の情報も得られず、器用さはあるけど貧乏になる疫病神的なギフトと認識したためだった。
夜、父に呼び出され屋敷のリビングに行くと、難しい顔をした父と母がソファーに腰掛けこちらに冷たい視線で見ている事で幼いながらも不穏な物を感じ取り、両親にギフトについて質問を投げかける。
「あ、あのお父さん、自分が頂いたギフト、器用貧乏のこと…」
そう言いきらないうちに顔を怒らせた父が歩み寄り自分の首を掴んで壁に叩きつけられる。
ドン!!
「そのギフトは口にするなと言ったはずだ!!」
首を掴み壁に自分の身体を押し付けた状態で父が怒鳴り、助けを求めるようにソファーに座ったままの母に視線を向けると、まるで自分の子供では無いかのように冷たい視線をこちらに向けたまま口を閉ざしている姿が目に移った。
ドン!! ドン!!
「分かったか、二度とそのギフトを口にするな! わかったな!!」
怒鳴りながら父は勢いよく自分を壁に押し付ける。
ドン!!
「分かったかと聞いてるんだ!!」
喉を押さえられ呼吸がしにくい状態の中でかろうじて、はい、と言う言葉を口にすると父は自分を壁に抑えつけていた手を放しソファーの方へ戻っていく、そんな後姿を薄れゆく意識の中で。
なんで…、なんで知らないギフトを授かっただけでこんな目に…。
そんな思いが一瞬頭に浮かびますが、深く考える前に目の前が暗くなりそのままその場で意識が薄れていく。
「国の法律で親は子の面倒を成人する15歳まで見ないといけない決まりだ、今すぐにでも出て行ってもらいたいが、それまではこの家においてやる、だが15になったら村を出て行ってもらうからな…」
薄れゆく意識の中でそのような声が耳に入るが、返事をする事も無くそのまま意識が闇の中に吸い込まれていった。
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