上 下
130 / 252

糸束の販路開拓②

しおりを挟む
「じゃあとりあえずジルクスパイダーの糸束を200程購入させてもらうわ。まあ私から商人達に卸す訳だから価格は安くしてもらえるんでしょ?」

そう言ってルイロウ領の領主のランリスさんはクスリと悪戯っぽく笑いながら価格交渉をしてきます。
「そうですね、じゃあ糸束一つを幾らで購入してもらえますか?」
「そうね、まあ糸束一つでかなりの量がありそうだから大体5000レンでどうかしら?」

そう言って価格を提示するランリスさんですが、実際、月山部長に糸束一つの相場を聞いて来るのを忘れたので、これが高いのか安いのか分かりません。
うん、困った・・・。

まあルイロウ領の商人がプレモーネに来た際は相場での販売になるだろうからここで損してもいいか・・。
そう思いながら、ランリスさんの提示した価格で了承し、ジルクスパイダーの糸束200束を納品し代金を受け取ります。

「そういえば、つい最近、ていうか2日前ですが、バイルエ王国の首都ドイルズに魔物が大量発生して押し寄せた情報は入ってますか?」
「あなたみたいに馬鹿げた能力がある訳じゃないんだからバイルエ王国で2日前に起こた事なんてそんなにすぐ情報が入るわけないでしょ?」

そう言って少し呆れたようなランリスさんですが、詳細には興味があるようで話を続けます。
「まあ大量発生の発端は分かりませんが、自分が昼前に首都ドイルズに転移したら既に戦闘が始まっていたんですが、大量の巨大芋虫が首都ドイルズに押し寄せて来た感じですね。まあ水堀のある場所は避けて城壁を登って来てたんで防戦するバイルエ王国側は城壁全体を守る必要が無かったんで守りやすかったでしょう。ただ、数が数なので一か所でも突破されて町中に侵入されたら相当な被害が出ていたでしょうね」

そう、簡単な状況を話すと、ランリスさんと結城さんは顔を顰めます。
うん、女性だもんね・・・。
巨大芋虫の大群って想像したくもないよね。

「まあ成り行きで防戦に参加させられたんですが、城壁から見たら見渡す限りの巨大芋虫の群れで倒しても倒しても切りがない状態だったんで、以前開発した広域魔法の実験をさせてもらいました。それでも巨大芋虫駆除に夕方までかかりました」
「そう・・・。まあ広域魔法の実験ってのが若干気になるけど、バイルエ王国は大した被害も無く魔物の大量発生を凌ぎ切ったのね?」

「ええ、凌ぎ切りましたね、ただ気になる事もあるんですよ」
「気になる事?」

そう言ってランリスさんは眉を顰めます。
「巨大芋虫の大群が群がってきたのは首都ドイルズだけなんです。近隣の村々には1匹たりとも巨大芋虫が現れていないんですよ」
「どういう事?魔物の大群は首都ドイルズだけに襲い掛かったとでも言うの?」

「そうなんですよ、理由は分かりません、近隣の村々には目もくれずにです。人口が多いのを本能で分かっていたのか、それとも何か別の理由があるのか・・・」
「理由は不明・・・・。だけど人口が多い所が本能で分かると言うなら、魔物が大量発生した場合、近くにある人口の多い町が狙われるという事になるわね」

そう言ってランリスさんは考え込んでしまいます。
「まあ、情報といったらこれくらいですが、あとは、魔物の大量発生の際には倒した魔物の魔石を回収しないと、仲間の魔石を摂取し上位種に進化します。なのでただ倒すだけだと場合によっては状況が悪化する恐れがある感じですね」

「まあ有意義な情報とまではいかないけど、無視できない情報ね」
「そうですね、知らないよりは知っていた方がましぐらいの情報ですが、魔物が大量発生した際の参考程度にしてください」

「そうさせてもらうわ、それはそうとルイロウ領で魔物が大量発生した場合はあなたは救援に来てくれると思っていいのかしら?」
「それは分からないですね。実際その時にドグレニム領でも魔物が大量発生してるかもしれませんし。まあ一応留意はしておきます」

そう言って通信魔道具をついでに売り込んでおきます。
「これは便利そうだけど、親機の大きさはどうにかならないの?これじゃあ持ち運びは出来ないわよ」
「まあ基本的に持ち運びは想定してませんし。子機は親機にしか通信できませんから小さいですが親機は付属の子機すべてと通信できるようにしてるんでどうしてもサイズが大きくなるんですよ。まあ一応子機を一台自分も持っておきますんで、最悪の場合は呼んでみてください。動けるようなら依頼という形で自分かゴブリン軍団が救援に来ますんで」

そう言って通信魔道具をボッタクリ価格で販売し、その後雑談をした後に領主館を後にします。
一応、結城さんには衣装は時間がかかるけど、声を拡声する魔道具を作って明日届けに来るって伝えときましたが、全力で拒絶されましたね・・・・。
まあ要らないと言われても強制納品しますけど。

その後はバイルエ王国に移動し城門でロ二ストさんに取り次いで貰います。
うん、何回も来てるとスムーズに取り次いでくれるようになったな・・・。

そう思いながら応接室に通されて暫く待つとロ二ストさんがやってきます。
「これはマサト殿、先日は首都ドイルズの防衛にご協力頂いたとの事、国王に替わってお礼申し上げます」
「いえいえ、土田に用事があってきたら巨大芋虫が群がってたんで・・・。まあそれはいいんですが、今日はジルクスパイダーの糸を売りに来たんですよ」

そう言ってテーブルに糸束を一つ出しておくとロ二ストさんは手に取り品定めをしています。
「それでマサト殿は商家に売りに行かずわざわざ国に売りに来たのですか?」
「まあ商家に売ってもいいんですけど、ドグレニム領に交易に行けばこれを仕入れられるよ。って宣伝をして貰いたいんでわざわざ国に売りに来たんですよ」

「そうですか、それで今回はいかほどお持ちになったのですか?」
「一応300束ですね、一束5000レンぐらいでどうでしょう?」

そう言うとロ二ストさんは少し考えた後、財務卿に確認をするとの事で一旦席を外します。
うん、基本ロ二ストさんを毎回訪ねているけど、あの人は外務卿だからね。

暫くするとロ二ストさんが戻ってきます。
「マサト殿、300束をバイルエ王国がすべてが買い取らせて頂きます。それと商家にも仕入れ先はドグレニム領だと伝えておきましょう」

そう言ってロ二ストさんは連れて来た使用人に糸束を運ばせていきます。
「それにしても、マサト殿が居る限りドグレニム領は発展の一途をたどりますな。羨ましい限りです」
「まあドグレニム領も発展しますけど、近隣に位置するバイルエ王国も交易の中継地点として発展するんじゃないですか?まあお互いに発展する感じですね」

そんな話をしながら、ロ二ストさんとしばらく雑談をします。
そんな中でやはり話題になるのは2日前にあった魔物の大量発生の話になります。
どうやらバイルエ王国内でも首都だけが襲撃を受けて村々には被害が出なかった事の理由を調べているそうですが、やはり結論は出ていないようです。

一応ロ二ストさんには原因とかが判明したら教えてくれるようお願いしてから、プレモーネに戻ります。

うん、一応月山部長にも販路拡大の為の営業は成功したと伝えたし今日はもう家に帰って魔道具作ったら寝よう。

そう言えば自分の屋敷建設の話しはどうなったんだろう。
うん、明日辺りグランバルさんに聞いてみよ。

ていうか屋敷と言ったら執事さんとメイドさんが定番だよね。
その辺も手配しないとな・・・・。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた

藤岡 フジオ
ファンタジー
 遥か未来の地球。地球型惑星の植民地化が進む中、地球外知的生命体が見つかるには至らなかった。 しかしある日突然、一人の科学者が知的生命体の住む惑星を見つけて地球に衝撃が走る。  惑星は発見した科学者の名をとって惑星ヒジリと名付けられた。知的生命体の文明レベルは低く、剣や魔法のファンタジー世界。  未知の食材を見つけたい料理人の卵、道 帯雄(ミチ オビオ)は運良く(運悪く?)惑星ヒジリへと飛ばされ、相棒のポンコツ女騎士と共に戦いと料理の旅が始まる。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

貴族に転生してユニークスキル【迷宮】を獲得した俺は、次の人生こそ誰よりも幸せになることを目指す

名無し
ファンタジー
両親に愛されなかったことの不満を抱えながら交通事故で亡くなった主人公。気が付いたとき、彼は貴族の長男ルーフ・ベルシュタインとして転生しており、家族から愛されて育っていた。ルーフはこの幸せを手放したくなくて、前世で両親を憎んで自堕落な生き方をしてきたことを悔い改め、この異世界では後悔しないように高みを目指して生きようと誓うのだった。

完結【清】ご都合主義で生きてます。-空間を切り取り、思ったものを創り出す。これで異世界は楽勝です-

ジェルミ
ファンタジー
社畜の村野玲奈(むらの れな)は23歳で過労死をした。 第二の人生を女神代行に誘われ異世界に転移する。 スキルは剣豪、大魔導士を提案されるが、転移してみないと役に立つのか分からない。 迷っていると想像したことを実現できる『創生魔法』を提案される。 空間を切り取り収納できる『空間魔法』。 思ったものを創り出すことができ『創生魔法』。 少女は冒険者として覇道を歩むのか、それとも魔道具師としてひっそり生きるのか? 『創生魔法』で便利な物を創り富を得ていく少女の物語。 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※カクヨム様にも掲載中です。

異世界でお金を使わないといけません。

りんご飴
ファンタジー
石川 舞華、22歳。  事故で人生を終えたマイカは、地球リスペクトな神様にスカウトされて、異世界で生きるように言われる。  異世界でのマイカの役割は、50年前の転生者が溜め込んだ埋蔵金を、ジャンジャン使うことだった。  高級品に一切興味はないのに、突然、有り余るお金を手にいれちゃったよ。  ありがた迷惑な『強運』で、何度も命の危険を乗り越えます。  右も左も分からない異世界で、家やら、訳あり奴隷やらをどんどん購入。  旅行に行ったり、貴族に接触しちゃったり、チートなアイテムを手に入れたりしながら、異世界の経済や流通に足を突っ込みます。  のんびりほのぼの、時々危険な異世界事情を、ブルジョア満載な生活で、何とか楽しく生きていきます。 お金は稼ぐより使いたい。人の金ならなおさらジャンジャン使いたい。そんな作者の願望が込められたお話です。 しばらくは 月、木 更新でいこうと思います。 小説家になろうさんにもお邪魔しています。

死んだと思ったら異世界に

トワイライト
ファンタジー
18歳の時、世界初のVRMMOゲーム『ユグドラシルオンライン』を始めた事がきっかけで二つの世界を救った主人公、五十嵐祐也は一緒にゲームをプレイした仲間達と幸せな日々を過ごし…そして死んだ。 祐也は家族や親戚に看取られ、走馬灯の様に流れる人生を振り替える。 だが、死んだはず祐也は草原で目を覚ました。 そして自分の姿を確認するとソコにはユグドラシルオンラインでの装備をつけている自分の姿があった。 その後、なんと体は若返り、ゲーム時代のステータス、装備、アイテム等を引き継いだ状態で異世界に来たことが判明する。 20年間プレイし続けたゲームのステータスや道具などを持った状態で異世界に来てしまった祐也は異世界で何をするのか。 「取り敢えず、この世界を楽しもうか」 この作品は自分が以前に書いたユグドラシルオンラインの続編です。

処理中です...