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戦いの支度
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「うん、ゾルス、これは何?」
「はっ、我々の初陣でございますので皆勇んでおります!」
そう言ってゾルスは胸を張りますが、ゾルスの後ろには完全武装のゴブリンが大量にいます。
「因みに砦を守る留守番は?」
「いえ、内務にあたる者を除いで我ら1800、全員が戦いに行く予定です」
「いや、100ぐらい残そうよ、砦が丸裸ってどうなの?道路建設現場にも100匹は残してきたのに、取り合えず留守居を100匹程選抜して」
「左様でございますか・・・、では・・」
そう言ってゾルスは渋々と言った感じで留守居を選抜しますが、なぜでしょう、留守番を命じられたゴブリンもとても残念そうな顔をしています。
えっ?これって俺が悪いの?
そう思いながら留守番組には小さな魔石を3個ずつあげて砦の警備を万全にするように命じ、その他のゴブリンを転移魔法で作ったゲートで南西の森の前に移動します。
「マサト殿、これは・・・」
そう言って絶句するタロイマンさんですが、冒険者も兵士達もみんな絶句しています。
うん、実は密かに飼っていたゴブリンが増えに増えていつの間にか総数1900匹ぐらいになってたみたいです。
うん、砦と道路に100匹ずつ留守番させてるから今回の戦力は1700匹ですけどね・・・。
「マサト殿、このゴブリン達は我々に襲い掛かっては来ないのでしょうな?」
「それは大丈夫です、ゾルスにバルタ、ロゼフが支配していますし、かなり文明的な生活をさせているんでイメージしているゴブリンとは別物と考えて貰って良いと思います」
そう言っているそばからゾルス達は防衛用の柵の建設をテキパキと始めています。
「マサト殿、あの柵は?」
「多分スケルトンが押し寄せて来た時、一気に突破されないようにする為の柵だと思いますが・・・。ちょと聞いてきますね?」
「いや、マサト殿の指示じゃないんですか?」
そう驚いているタロイマンさんを置いておいてゾルスに柵を設置する意図を聞くとロゼフが一気に突破されないようにする為の足止めの一つだと言っていた、と言っていますので、タロイマンさんにはあえて、そう言っていたと伝えますが、なんか本当に大丈夫なの?って顔をされました。
だってそう言っていたんだもん。
そうしているうちにプレモーネからの兵士も到着し、ゴブリンと兵士、そして冒険者が一緒になって柵を建設しています。
うん、不思議な光景・・・。
そう思いながら自分は丸太を錬成術で加工し柵に使用する木材作りに専念します。
森の前には〈護武燐〉と書かれた旗と、ドグレニム領の旗、そしてなぜか《怒愚レ弐夢》や《瑠煉図》《棲螺威》の旗も並んでいます。
どうやら領内にあるルレンズの町とスライの町からも守備隊が合流し旗を靡かせているようです。
それにしても何処の誰だよ、異世界にヤンキー漢字を広めたの・・、どこの暴走族の集会ですか?
そう思いながら、タロイマンさんや指揮官クラスの人、そして年配兵士のマイルセン達と打ち合わせを始めます。
「とりあえず、アルチが足止めしてますが、スケルトンの群れは明るくなってから来てくれるとは限らないので夜戦になってもいい様に準備が必要だと思いますが、光魔法を使える人には空に向けて光を放つ魔法を撃ち続けてもらいます?」
「マサト殿、魔力が持ちませんよ、それに戦場が広くなれば反対に明るくなったり暗くなったりで不利になります」
そう言ってタロイマンさん含め全員が無理だと言います。
「じゃあ暗闇で月明りのみで戦うんですか?」
「いえ、それもかなり厳しいかと思うので、一定間隔で篝火を焚いて明かりを確保するしかないでしょう」
「篝火ですか、それで明かり確保できます?」
「まあ無いよりはましと言った感じですが・・」
そう言って歯切れの悪い感じですが、火を焚いて光源を確保する方法しかなさそうです。
「じゃあキャンプファイヤーみたいな感じで木を燃やしましょう。それなら広範囲を明るく出来そうですし」
「キャンプファイヤー?それはなんですか?」
どうやら異世界にはキャンプファイヤーは無いらしく全員の頭の上にクエッションマークが出ている感じです。
とりあえず全員に木を高く積み上げて真ん中に燃えやすい物を詰め盛大に燃やす物と伝えます。
「それなら燃え上がれば広範囲が明るくなりますが、そこに兵士がぶつかったらどうなりますか?」
「まあ確実に運が良くて大火傷、運が悪ければ死亡ですね・・・。まあその周りに衝突防止用の柵を立てれば事故は減るでしょうが」
「じゃあ夜までにそれはどのくらい作れますか?それにそれだけの木材はどうされるのですか?生木を燃やしても燃えにくいのでいざという時に役に立ちませんが」
「木材は沢山あるんで大丈夫ですね、とりあえずゴブリン達を総動員すればいくらでも作れますよ」
そう話すほかにいい案がある訳でもないのでキャンプファイヤー計画で決定します。
「因みにスケルトンなら火の魔法で燃やせば良いんじゃないですか?死霊と言ったら神聖な魔法か火魔法って相場が決まってません?」
「マサト殿の言う相場っていう物が分かりませんが、神聖な魔法などと言う物はありませんし、ましてやスケルトンに火魔法を放ったら燃え盛るスケルトンになるだけで手が付けられなくなりますぞ」
うん、どうやら日本のテンプレ常識は通じないようです。
ケルトン、まあ動く人骨に火を放ったら確かに、火を纏った動く人骨になりますよね・・・。
その後、大体の方針と部隊配置の打ち合わせが終わったのでゴブリン達を使ってキャンプファイヤーの準備をします。
大体3メートル位に切った丸太を交互に組み上げ2メートル位の高さにし、真ん中には枯れ草や細く切った木などを詰め込みます。
本来は2本の丸太を交互に組んで四角い形にしますが、今回は3本の丸太を交互に組んでタワーを作ります。
異世界に来て思ったのですが、ゴブリンって実は頭いい?そう思う程ゴブリン達は一度教えたら後は各自の判断でどんどん作業を進めていきます。
部隊の配置場所は森から100メートル程離れた場所に布陣し、森と部隊の間20メートル間隔くらいで木組みが夕方には完成しました。
ゾルス達にはゴブリン軍団に食事をさせていつでも戦えるように準備したまま休ませるように伝えます。
恐らく冒険者達もドグレニム領の兵も同じ考えのようで食事を始めています。
「おい!失礼な奴!」
そんな声がしたので声の主の方を向くと痛い人が居ます。
「ああ~痛い人か、スケルトン相手が怖くなった?」
「いや、それはない!そして俺の名前は野村だ!」
「野村って言うんだ、因みに自分は武内ね、それでどうしたの?」
「あの暴走族みたいな旗なんだが、どうしてこの世界にあんな文字の旗があるんだ?」
「あ~あれね・・、うちのゴブリン軍団の旗を考えてたんだけどいいの思いつかなくて、当て字でゴブリンって書いたら〈護武燐〉になった的な?そんでもってグランバルさんに見せたら気に入ってドグレニム領でも採用された感じ・・・」
「お前が犯人か!誤った日本文化を異世界に根付かせるなよ!」
「まあ本人達が気に入ってるようだし、そんな事言いに来たの?」
「いや、大規模な戦いになると言う割には作戦という作戦も無くただスケルトンの頭部を片っ端から破壊しろしか指示が無いんでな。武内なら何か知ってるかと思って聞きに来たんだ」
「ああ~そういう事ね、まあ相手は生者・・まあ命がある者に向かってくるだけだから作戦も何もないんだよね、スケルトンを全部倒したら終わりみたいな感じ?」
「そうか、じゃあ俺の拳で頭蓋骨を粉砕しまくればいいんだな!!」
「そう、ただし噛まれないようにね、噛まれるとゾンビになるから・・・」
「な、それは本当か!!そんなゾンビ映画みたいなことが本当に起きるのか?」
「うん、ウソ、ただ噛まれたら痛いじゃすまないから、接近戦なら特に気を付けないと肉食いちぎられるよ」
「そうか、ウソか・・・。ていうかこんな時に真顔でウソをつくな!!少し信じただろう!!」
「まあウソを付くときは真顔で言わないと信用されないからね・・・。とはいえ一人で突っ込んで孤立したら本当に肉とか食いちぎられるから、一人で突出しすぎると死ぬよ」
「まあ確かにそれはその通りだな、じゃあ俺は戻って皆に噛まれたらゾンビになると言うウソを付いてくる。まあこれが終わって一息ついたら戦友同士という事だし酒でも飲もう」
そう言って痛い人改め野村は盛大にフラグを立てて去っていきましたが、絶対大根役者っぽいから誰も騙せないでしょうね・・。
うんそれにしてもあえてフラグを立てて帰っていくって・・死にたいの?死ぬ気なの?
そう思いましたが、とりあえず野村の今後は放っておいて、再度、タロイマンさんや指揮官クラスの人、そして年配兵士のマイルセン達と打ち合わせをしますが、アルチからの知らせが来ない事には、あとどの位でスケルトンが森を抜けてくるかが分からないのでアルチの報告待ちとなります。
日が落ちてしばらくするとアルチが戻ってきて報告をしますが、あまりいい知らせとは言えないようです。
「じゃあスケルトンが森を抜けるのは朝方だけど日が昇るまでにはまだ時間がかかる頃ってこと?」
「はい、魔物をスケルトンの方に追い込んでみたのですが次から次へと進んで来るのでたいして足止めにもならず」
そう言って申し訳なさそうにするアルチですが、こればっかりはアルチ達が悪い訳ではないので気にしないように言ってスケルトンの情報を聞きます。
どうやらスケルトンは追い込んだ魔物に群がる様にして魔物を貪り喰っているようです。
ただ、骨なので食べても意味がない気がするのでその辺をアルチに聞きましたが理由は分からないとの事です。
そんな疑問に答えてくれたのが、年配兵士のマイルセンです。
マイルセンさんの話によるとスケルトンの魔石は頭蓋骨の中にあるそうで、恐らく貪り喰っているのは魔石を摂取しようとしているのではないかとの事です。
骨なのに口に入れた魔石は落ちないんだ・・・・異世界の七不思議の1つだ・・・。
うん、てことは魔石を摂取して進化したスケルトンも混ざっている可能性があるってことだよね・・。
魔物をスケルトンにぶつけて足止めって、なんか余計な事した気がしてきた・・。
153日目
夜間、森から出てくる魔物はカウア達ミノタウロスが処理をしていますが、多くがアルチ達に森の奥に追いやられた為、かなり散発的だったので冒険者も兵士もゴブリン達もゆっくり休めたようです。
とはいえ日付が替わってしばらくした頃には全員が起きだして腹ごなしをしています。
「ロゼフ、治癒魔法が使えるゴブリンはどのくらいいるの?」
「現在の所、治癒魔法が使える者は16匹です」
「16匹か・・・、その16匹はどの程度の治癒魔法が使える?」
「どの程度と言われましても、まあ止血と軽い傷を治せるぐらいでしょか。流石に命に係わるほどの怪我を治せる力はございません。」
「じゃあロゼフの治癒魔法は命に係わるほどの怪我を治せる?」
「まあ程度にもよりますが、余程酷いけがでは無ければ何とかなるとおもいますが、それが如何したのですか?」
「うん、ロゼフにはドグレニム領の兵士の治癒をして貰いたくてね」
「兵士達の治癒ですか?ですがあちらにも治癒魔法を扱う物は要るのでは?」
「まあね、ただロゼフ程の治癒魔法を使える人間は居ないでしょ、今後の事を考えると兵士達や冒険者の死者を少しでも減らしたいんだよね」
「左様でございますか、ただ我々ゴブリンの治癒は如何いたしますか?」
「そこなんだけど、今いるゴブリン達の治癒魔法で重傷者を延命して後でロゼフに治癒をして貰おうかと思っているんだ、まあ言い方が悪いんだけど、ゴブリンの犠牲は目を瞑って人間たちに恩を売る感じと思ってもらっていいよ。」
「かしこまりました。そう言うお考えなのでしたら従います。確かに我々が大手を振って行動できるようになるには人間に害はなく利があると知らしめる必要がありますので理にかなっているかと。」
「ゴメンね、同じゴブリンを犠牲にするような作戦で・・・」
「いえ、ゴブリンはすぐに増えますし、多少減ってもすぐに補充出来ますので問題はございますまい、お気になされますな」
そう言ってロゼフと共にタロイマンさんの所に行き、兵士達の治癒をさせる旨を伝え自分は、ゾルス達の所に行き戦いに備えます。
今は大体午前3時頃でしょうか、時計を持たない派の人間なうえ異世界に来てあんまり時間を気にしなくなったので正確な時間は分かりませんが、アルチ達が森から出てきて報告に来ます。
「マサト様、まもなくスケルトンの戦闘が森を抜けます。」
「分かった、ありがとう、あとアルチは働きっぱなしで申し訳ないでど、サンダーウルフ数匹連れてスケルトンの発生場所を探ってきて、残りのサンダーウルフはこの場で遊撃にあたって、出来る限り人間に死者が出ないように援護して」
そう言うとアルチはサンダーウルフを4匹連れて森に戻っていき、その他のサンダーウルフ達は戦場予定地に散会していきます。
「バルタ、タロイマンさんの所に伝令に行って、内容は、まもなくスケルトンの先頭が森から出て来るから、森の出口でミノタウロスが口減らしするからそれをすり抜けたスケルトンを叩いてって、あと、サンダーウルフ達とゴブリンは味方だから攻撃しないようにって」
「かしこまりました。」
そう言うとバルタはタロイマンさんの居る本陣の方にかけて行きます。
まだ日が昇るまでには時間がありそうですが、どうやらそろそろ戦闘になりそうです。
バルタの伝令が届いたのか、20メートル間隔くらいで積み上げたキャンプファイヤーに使うような木組に火が点火され辺りが明るくなっていきます。
静寂の中に木が爆ぜる音だけが響いてますが、その音に加え、森の中で何かが動く気配と共に歯をカチカチと噛み鳴らす音が聞こえだし、徐々にその音が大きくなっていきます。
「はっ、我々の初陣でございますので皆勇んでおります!」
そう言ってゾルスは胸を張りますが、ゾルスの後ろには完全武装のゴブリンが大量にいます。
「因みに砦を守る留守番は?」
「いえ、内務にあたる者を除いで我ら1800、全員が戦いに行く予定です」
「いや、100ぐらい残そうよ、砦が丸裸ってどうなの?道路建設現場にも100匹は残してきたのに、取り合えず留守居を100匹程選抜して」
「左様でございますか・・・、では・・」
そう言ってゾルスは渋々と言った感じで留守居を選抜しますが、なぜでしょう、留守番を命じられたゴブリンもとても残念そうな顔をしています。
えっ?これって俺が悪いの?
そう思いながら留守番組には小さな魔石を3個ずつあげて砦の警備を万全にするように命じ、その他のゴブリンを転移魔法で作ったゲートで南西の森の前に移動します。
「マサト殿、これは・・・」
そう言って絶句するタロイマンさんですが、冒険者も兵士達もみんな絶句しています。
うん、実は密かに飼っていたゴブリンが増えに増えていつの間にか総数1900匹ぐらいになってたみたいです。
うん、砦と道路に100匹ずつ留守番させてるから今回の戦力は1700匹ですけどね・・・。
「マサト殿、このゴブリン達は我々に襲い掛かっては来ないのでしょうな?」
「それは大丈夫です、ゾルスにバルタ、ロゼフが支配していますし、かなり文明的な生活をさせているんでイメージしているゴブリンとは別物と考えて貰って良いと思います」
そう言っているそばからゾルス達は防衛用の柵の建設をテキパキと始めています。
「マサト殿、あの柵は?」
「多分スケルトンが押し寄せて来た時、一気に突破されないようにする為の柵だと思いますが・・・。ちょと聞いてきますね?」
「いや、マサト殿の指示じゃないんですか?」
そう驚いているタロイマンさんを置いておいてゾルスに柵を設置する意図を聞くとロゼフが一気に突破されないようにする為の足止めの一つだと言っていた、と言っていますので、タロイマンさんにはあえて、そう言っていたと伝えますが、なんか本当に大丈夫なの?って顔をされました。
だってそう言っていたんだもん。
そうしているうちにプレモーネからの兵士も到着し、ゴブリンと兵士、そして冒険者が一緒になって柵を建設しています。
うん、不思議な光景・・・。
そう思いながら自分は丸太を錬成術で加工し柵に使用する木材作りに専念します。
森の前には〈護武燐〉と書かれた旗と、ドグレニム領の旗、そしてなぜか《怒愚レ弐夢》や《瑠煉図》《棲螺威》の旗も並んでいます。
どうやら領内にあるルレンズの町とスライの町からも守備隊が合流し旗を靡かせているようです。
それにしても何処の誰だよ、異世界にヤンキー漢字を広めたの・・、どこの暴走族の集会ですか?
そう思いながら、タロイマンさんや指揮官クラスの人、そして年配兵士のマイルセン達と打ち合わせを始めます。
「とりあえず、アルチが足止めしてますが、スケルトンの群れは明るくなってから来てくれるとは限らないので夜戦になってもいい様に準備が必要だと思いますが、光魔法を使える人には空に向けて光を放つ魔法を撃ち続けてもらいます?」
「マサト殿、魔力が持ちませんよ、それに戦場が広くなれば反対に明るくなったり暗くなったりで不利になります」
そう言ってタロイマンさん含め全員が無理だと言います。
「じゃあ暗闇で月明りのみで戦うんですか?」
「いえ、それもかなり厳しいかと思うので、一定間隔で篝火を焚いて明かりを確保するしかないでしょう」
「篝火ですか、それで明かり確保できます?」
「まあ無いよりはましと言った感じですが・・」
そう言って歯切れの悪い感じですが、火を焚いて光源を確保する方法しかなさそうです。
「じゃあキャンプファイヤーみたいな感じで木を燃やしましょう。それなら広範囲を明るく出来そうですし」
「キャンプファイヤー?それはなんですか?」
どうやら異世界にはキャンプファイヤーは無いらしく全員の頭の上にクエッションマークが出ている感じです。
とりあえず全員に木を高く積み上げて真ん中に燃えやすい物を詰め盛大に燃やす物と伝えます。
「それなら燃え上がれば広範囲が明るくなりますが、そこに兵士がぶつかったらどうなりますか?」
「まあ確実に運が良くて大火傷、運が悪ければ死亡ですね・・・。まあその周りに衝突防止用の柵を立てれば事故は減るでしょうが」
「じゃあ夜までにそれはどのくらい作れますか?それにそれだけの木材はどうされるのですか?生木を燃やしても燃えにくいのでいざという時に役に立ちませんが」
「木材は沢山あるんで大丈夫ですね、とりあえずゴブリン達を総動員すればいくらでも作れますよ」
そう話すほかにいい案がある訳でもないのでキャンプファイヤー計画で決定します。
「因みにスケルトンなら火の魔法で燃やせば良いんじゃないですか?死霊と言ったら神聖な魔法か火魔法って相場が決まってません?」
「マサト殿の言う相場っていう物が分かりませんが、神聖な魔法などと言う物はありませんし、ましてやスケルトンに火魔法を放ったら燃え盛るスケルトンになるだけで手が付けられなくなりますぞ」
うん、どうやら日本のテンプレ常識は通じないようです。
ケルトン、まあ動く人骨に火を放ったら確かに、火を纏った動く人骨になりますよね・・・。
その後、大体の方針と部隊配置の打ち合わせが終わったのでゴブリン達を使ってキャンプファイヤーの準備をします。
大体3メートル位に切った丸太を交互に組み上げ2メートル位の高さにし、真ん中には枯れ草や細く切った木などを詰め込みます。
本来は2本の丸太を交互に組んで四角い形にしますが、今回は3本の丸太を交互に組んでタワーを作ります。
異世界に来て思ったのですが、ゴブリンって実は頭いい?そう思う程ゴブリン達は一度教えたら後は各自の判断でどんどん作業を進めていきます。
部隊の配置場所は森から100メートル程離れた場所に布陣し、森と部隊の間20メートル間隔くらいで木組みが夕方には完成しました。
ゾルス達にはゴブリン軍団に食事をさせていつでも戦えるように準備したまま休ませるように伝えます。
恐らく冒険者達もドグレニム領の兵も同じ考えのようで食事を始めています。
「おい!失礼な奴!」
そんな声がしたので声の主の方を向くと痛い人が居ます。
「ああ~痛い人か、スケルトン相手が怖くなった?」
「いや、それはない!そして俺の名前は野村だ!」
「野村って言うんだ、因みに自分は武内ね、それでどうしたの?」
「あの暴走族みたいな旗なんだが、どうしてこの世界にあんな文字の旗があるんだ?」
「あ~あれね・・、うちのゴブリン軍団の旗を考えてたんだけどいいの思いつかなくて、当て字でゴブリンって書いたら〈護武燐〉になった的な?そんでもってグランバルさんに見せたら気に入ってドグレニム領でも採用された感じ・・・」
「お前が犯人か!誤った日本文化を異世界に根付かせるなよ!」
「まあ本人達が気に入ってるようだし、そんな事言いに来たの?」
「いや、大規模な戦いになると言う割には作戦という作戦も無くただスケルトンの頭部を片っ端から破壊しろしか指示が無いんでな。武内なら何か知ってるかと思って聞きに来たんだ」
「ああ~そういう事ね、まあ相手は生者・・まあ命がある者に向かってくるだけだから作戦も何もないんだよね、スケルトンを全部倒したら終わりみたいな感じ?」
「そうか、じゃあ俺の拳で頭蓋骨を粉砕しまくればいいんだな!!」
「そう、ただし噛まれないようにね、噛まれるとゾンビになるから・・・」
「な、それは本当か!!そんなゾンビ映画みたいなことが本当に起きるのか?」
「うん、ウソ、ただ噛まれたら痛いじゃすまないから、接近戦なら特に気を付けないと肉食いちぎられるよ」
「そうか、ウソか・・・。ていうかこんな時に真顔でウソをつくな!!少し信じただろう!!」
「まあウソを付くときは真顔で言わないと信用されないからね・・・。とはいえ一人で突っ込んで孤立したら本当に肉とか食いちぎられるから、一人で突出しすぎると死ぬよ」
「まあ確かにそれはその通りだな、じゃあ俺は戻って皆に噛まれたらゾンビになると言うウソを付いてくる。まあこれが終わって一息ついたら戦友同士という事だし酒でも飲もう」
そう言って痛い人改め野村は盛大にフラグを立てて去っていきましたが、絶対大根役者っぽいから誰も騙せないでしょうね・・。
うんそれにしてもあえてフラグを立てて帰っていくって・・死にたいの?死ぬ気なの?
そう思いましたが、とりあえず野村の今後は放っておいて、再度、タロイマンさんや指揮官クラスの人、そして年配兵士のマイルセン達と打ち合わせをしますが、アルチからの知らせが来ない事には、あとどの位でスケルトンが森を抜けてくるかが分からないのでアルチの報告待ちとなります。
日が落ちてしばらくするとアルチが戻ってきて報告をしますが、あまりいい知らせとは言えないようです。
「じゃあスケルトンが森を抜けるのは朝方だけど日が昇るまでにはまだ時間がかかる頃ってこと?」
「はい、魔物をスケルトンの方に追い込んでみたのですが次から次へと進んで来るのでたいして足止めにもならず」
そう言って申し訳なさそうにするアルチですが、こればっかりはアルチ達が悪い訳ではないので気にしないように言ってスケルトンの情報を聞きます。
どうやらスケルトンは追い込んだ魔物に群がる様にして魔物を貪り喰っているようです。
ただ、骨なので食べても意味がない気がするのでその辺をアルチに聞きましたが理由は分からないとの事です。
そんな疑問に答えてくれたのが、年配兵士のマイルセンです。
マイルセンさんの話によるとスケルトンの魔石は頭蓋骨の中にあるそうで、恐らく貪り喰っているのは魔石を摂取しようとしているのではないかとの事です。
骨なのに口に入れた魔石は落ちないんだ・・・・異世界の七不思議の1つだ・・・。
うん、てことは魔石を摂取して進化したスケルトンも混ざっている可能性があるってことだよね・・。
魔物をスケルトンにぶつけて足止めって、なんか余計な事した気がしてきた・・。
153日目
夜間、森から出てくる魔物はカウア達ミノタウロスが処理をしていますが、多くがアルチ達に森の奥に追いやられた為、かなり散発的だったので冒険者も兵士もゴブリン達もゆっくり休めたようです。
とはいえ日付が替わってしばらくした頃には全員が起きだして腹ごなしをしています。
「ロゼフ、治癒魔法が使えるゴブリンはどのくらいいるの?」
「現在の所、治癒魔法が使える者は16匹です」
「16匹か・・・、その16匹はどの程度の治癒魔法が使える?」
「どの程度と言われましても、まあ止血と軽い傷を治せるぐらいでしょか。流石に命に係わるほどの怪我を治せる力はございません。」
「じゃあロゼフの治癒魔法は命に係わるほどの怪我を治せる?」
「まあ程度にもよりますが、余程酷いけがでは無ければ何とかなるとおもいますが、それが如何したのですか?」
「うん、ロゼフにはドグレニム領の兵士の治癒をして貰いたくてね」
「兵士達の治癒ですか?ですがあちらにも治癒魔法を扱う物は要るのでは?」
「まあね、ただロゼフ程の治癒魔法を使える人間は居ないでしょ、今後の事を考えると兵士達や冒険者の死者を少しでも減らしたいんだよね」
「左様でございますか、ただ我々ゴブリンの治癒は如何いたしますか?」
「そこなんだけど、今いるゴブリン達の治癒魔法で重傷者を延命して後でロゼフに治癒をして貰おうかと思っているんだ、まあ言い方が悪いんだけど、ゴブリンの犠牲は目を瞑って人間たちに恩を売る感じと思ってもらっていいよ。」
「かしこまりました。そう言うお考えなのでしたら従います。確かに我々が大手を振って行動できるようになるには人間に害はなく利があると知らしめる必要がありますので理にかなっているかと。」
「ゴメンね、同じゴブリンを犠牲にするような作戦で・・・」
「いえ、ゴブリンはすぐに増えますし、多少減ってもすぐに補充出来ますので問題はございますまい、お気になされますな」
そう言ってロゼフと共にタロイマンさんの所に行き、兵士達の治癒をさせる旨を伝え自分は、ゾルス達の所に行き戦いに備えます。
今は大体午前3時頃でしょうか、時計を持たない派の人間なうえ異世界に来てあんまり時間を気にしなくなったので正確な時間は分かりませんが、アルチ達が森から出てきて報告に来ます。
「マサト様、まもなくスケルトンの戦闘が森を抜けます。」
「分かった、ありがとう、あとアルチは働きっぱなしで申し訳ないでど、サンダーウルフ数匹連れてスケルトンの発生場所を探ってきて、残りのサンダーウルフはこの場で遊撃にあたって、出来る限り人間に死者が出ないように援護して」
そう言うとアルチはサンダーウルフを4匹連れて森に戻っていき、その他のサンダーウルフ達は戦場予定地に散会していきます。
「バルタ、タロイマンさんの所に伝令に行って、内容は、まもなくスケルトンの先頭が森から出て来るから、森の出口でミノタウロスが口減らしするからそれをすり抜けたスケルトンを叩いてって、あと、サンダーウルフ達とゴブリンは味方だから攻撃しないようにって」
「かしこまりました。」
そう言うとバルタはタロイマンさんの居る本陣の方にかけて行きます。
まだ日が昇るまでには時間がありそうですが、どうやらそろそろ戦闘になりそうです。
バルタの伝令が届いたのか、20メートル間隔くらいで積み上げたキャンプファイヤーに使うような木組に火が点火され辺りが明るくなっていきます。
静寂の中に木が爆ぜる音だけが響いてますが、その音に加え、森の中で何かが動く気配と共に歯をカチカチと噛み鳴らす音が聞こえだし、徐々にその音が大きくなっていきます。
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そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。
【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
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