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ウェース聖教国の使節団1

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100日目

なんだかんだでこの世界に転移させられて100日が経過しましたが、何か日本に居た時より忙しいような気がします。
うん、何か自分働き過ぎていない?

そう思いながら朝一で領主館に向かいグランバルさんに石材採取から戻ってきた事と、城壁拡張を開始する旨を伝えます。
「それでマサト一人でやるのか?」
「それなんですが、今回は広すぎるんで城壁を作る場所を先に決めておきたいんで人を貸してほしいですね」

「それは構わないが力仕事か?」
「いえ、とりあえず馬車か何かで城壁周りを一定距離を保って一周してもらうだけでいいです。馬車の後部をちょっと改造し地面に線が引けるようにしますんで、その上でその線を元に城壁を作ります」

「そうか、それならアモンに指示を出すから守備隊に手伝ってもらえ」
「わかりました。じゃあとりあえず取り掛かりますね」

「それとマサト、分かっているとは思うが、あと7日でウェース聖教国の使節団が来るからな、使節団が来て帰るまではプレモーネから離れるなよ」
「了解です。逃げませんから安心してください」

そう言って門に向かいアモンさんに城壁工事の為の馬車と人員を借ります。
馬車の後部には上下に稼働する金属で出来た片方だけ尖ったツルハシのようなものを取り付け城壁から離れてプレモーネを一周してもらいます。
そして自分はその線に沿って土魔法と錬成術を融合させて幅4メートル深さ2メートルの垂直な堀を作成していき、掘り出した土は堀の左右に積み上げていきます。

流石に距離がありますが、以前も行った事のある作業なのでそれなりに順調に進んでいきますが、流石に1日では半分ほどまでしか出来ませんでしたので、明日再度作業を行います。

101日目
今日も昨日の続きで掘りを作成して行きます。
作っていて思ったのですが、道を外れてプレモーネに近づく人が掘りに落ちてケガとかしないか心配ですが、まあ街道を外れて町に近づく人はそうそう居ないでしょうし、その時はその時と割り切って作業を続けます。

どうやら今日中に掘り作りは終わりそうです。

102日目
今日から本格的な城壁づくりに取り掛かります。
最初に以前作りかけていた部分の城壁を解体し石材に戻して回収し、今回の城壁に再利用します。
地中に2メートル、高さは地上4メートル、幅も4メートルで石材をアイテムBOXから出して錬成術で城壁を作っていきます。
とりあえず上部は本来防衛の際兵士が通ったり出来るようにするのですが、まずは城壁を作ってその辺は後々作る方針で作業を進めます。

黙々と作業を進めていますが、なんせ城壁を作る距離も距離なのでさすがに一気に城壁が出来るわけでもなく、本日の作業で出来た城壁は大体1キロ分ほどになりました。

103日目、104日目、105日目、106日目
共に替わりもなく黙々と城壁づくりをした結果、大体5キロ分ぐらい、、大体城壁作成予定の1/3ぐらいが出来たでしょうか、城壁が完成までにはあと10日はかかりそうです。

107日目

今日は朝一でグランバルさんからの使いが来て領主館に来るようにとの事です。
まあ今日はウェース聖教国の使節団が来る予定ですので、恐らく出迎えやらの為に領主館に待機しておくようにという事でしょうが、実際の所、どうせ来るのは昼過ぎだからそれまでは作業をさせてほしかったです。

「まあ武内君、そう言わんであげてくれ、グランバルさんも使節団の受け入れに関しては大事な外交なんだから」

そう言ってブチブチ文句を言う自分に月山部長がフォローを入れてくれます。
「まあその辺は分かってはいるんですけどね、そう言えば今回も内田さん、丸山さん、野上さんの三人が晩餐の料理作成ですか?」
「ああ、本人たちも店を出したいとの事で今は物件を探している状態だが城壁の拡張が終わって町が広くなれば物件も多数でてくるだろうから、いま暫くは様子見している状況だな」

「そうですね、今急いで物件を探して店を出すよりも町が広くなってから店を探した方が良さそうですもんね」
「ああ、それにグランバルさんにもいい土地を融通してもらえる様話をしているからな、むしろ急いだら損をする感じだな」

そんな話をしながら時間をつぶしていると、まもなく使節団が到着するとの連絡が来ましたので、今回も自分はグランバルさんと一緒に門まで出迎えに向かいます。
うん、自分が出迎えに加わる意味あるんですか?

そう思いながら門に向かうと、門の前では兵士が正装で並び出迎えの準備を整えています。
「毎度ながら大掛かりですね」
「まあな、普通の使者ならこうはしないが、正式な使節団だからな、それ相応の出迎えが必要なんだよ」
「それにしても、ウェース聖教国が使節団を送り込んで来た目的は何でしょうかね?」

「わからん、教国からの難民も増える一方だし、日本人もろくに確保出来てないようだし、バイルエ王国のように友好を結びましょう、交易を活発化させましょうではないだろうな」
「じゃあ日本人を引き渡せとか言いに来たんですかね?まあそれなら使節団を送る必要もなさそうですが」

そう言ってグランバルさんも余計な手間が増えないか心配しているようです。

「ウェース聖教国 使節団、ご到着!!!」

門の上から大きな声で到着を知らせる声が聞こえると、門がゆっくりと開き100人程で馬車を数台引き連れた使節団がゆっくりとプレモーネに入ってきます。

グランバルさんが進み出て使節団の護衛責任者らしき人と少し言葉を交わした後、馬首を返し自分とアモンさん、そしてグランバルさんの先導で使節団が領主館に向かいます。

領主館に着くと前回と同様に饗応係りの人が護衛の人たちを宿舎に案内し、外交官などを領主館の待合室に通す手筈です。
流石に連続して使節団が来ると皆さん手際が良くなってますね。

そして自分やグランバルさん、月山部長に主だった人は会談を行う部屋に行き席について外交官の到着を待ちます。
しばらくして、案内係の人に先導され外交官が室内に入り挨拶をした後、席に座り会談が始まります。

「この度は使節団の受け入れを快諾頂き誠にありがとうございます。私はグレームと申します。ウェース聖教国では教皇様のおそばに仕えさせて頂き、この度も全権委任をされておりますので、有意義な話し合いができればと思っております。それと、こちらが聖女ステレーネ様です」
「これは、ウェース聖教国の宰相と言われるグレーム殿と聖女のステレーネ殿が使節団を率いて来られるとは」

グランバルさんもまさかの大物が乗り込んで来た事に少し驚いているようですが、流石領主だけあって顔には出さずに笑顔で応対しています。
「それでグレーム殿、この度は聖女殿も連れてのご来訪、どのような話し合いを希望されているのですか?」
「そうですね、名君、いや名領主と名高いグランバル殿にいきなり本題に入られたら、社交辞令は不要のようですので、さっそく本題に入らせて頂きましょう」

そう言ってグレームさんは一息ついてから今回の目的を話し出します。
「この度、私共がきたのは、ドグレニム領に流入した難民の引き渡し、そして今後の友好的な関係強化と交易の活発化促進、そして相互技術、知識供与、最後にバイルエ王国軍をたった1人で退けたマサト=タケウチ殿と聖女ステレーネ様との婚姻の話で参りました」

いやいや、何言い出してるんだこのおっさん!!
そう思いながらグランバルさんをチラリと見ると何か思案をしているようです。
「グレーム殿、難民についてはウェース聖教国の暴虐に耐え兼ね飢えから逃れて来た人達ですから、その申し出にはお応えできかねますな、それと相互技術・知識供与につきましても、こちらから教える技術や知識はあっても教国から我々が得られるものが少なく公平とは言えないのでは?まあ可能なのは友好的な関係強化と交易の活発化促進ぐらいでしょうな」

「ではマサト=タケウチ殿と聖女ステレーネ様との婚姻の話につきましてはいかがですか?」
「それは本人に聞いてくれ、マサトは俺の家臣では無いからその辺は本人次第だ」
「左様でございますか、ではマサト殿、如何でしょうか?」

うわ、グランバルさん、いきなり丸投げしてきたよ・・・。
「そうですね、お断りさせて頂きます」
「ほう、それはどの様な理由でしょうか?ウェース聖教国の聖女ともなれば各国の王族や大貴族からも縁談の話が来る程、それを即答でお断りされるとの事、それ相応のご理由がおありなのでしょう」

「そうですね、第1の理由は自分がこの世界の人間ではない、第2の理由が急に話を持って来られそれに応える理由が無い、第3の理由、これが一番重要ですが、面倒くさい!!以上の理由ですね」
「め、面倒くさいが聖女ステレーネ様との婚姻を断る一番重要な理由ですと?」

「そうですね、面倒くさいですよね。それに、王族や大貴族からも縁談の話が来るんでしたらそちらと話を進めればよくないですか?わざわざ異世界人の自分に持ってくる話ではないですよね?」
「それはバイルエ王国軍をたった1人で退けドグレニム領を発展させてるだけの方、各国の王族や大貴族にも勝りはすれど劣りはしない、ゆえにこの度のご婚姻の話となりました」

「とりあえずどんな噂が流れているかは知りませんが一人で退けた訳ではありませんよ。それにドグレニム領を発展させているのはグランバルさんです。自分は多少手伝ったに過ぎません。買い被り過ぎですね。まあ何を言われてもお断りしますが」
「そうですか、まあ時間はございますので、一度、聖女様とお話でもして親睦を深めてください。」

「まあ親睦を深めても結果は変わりませんけどね」
しつこく食い下がって来るグレームさんにハッキリとお断りを入れてグランバルさんに後を任せます。
「まあマサトがそう言っているなら俺が口を出す事でもないし、出す理由もない、まあこの度の来訪の件は分かりましたので一旦迎賓館にご案内しますのでそちらで晩餐までお寛ぎください」

グランバルさんが案内係の人に指示を出して使節団を迎賓館に案内します。

「それにしてもウェース聖教国はこんな要求をする為に来たんですか?」
「まあ何処までが本気なのかは分からんがこちらが呑める要求は友好的な関係強化と交易の活発化促進ぐらいだろうな」

「そのくらいなら、いちいち大々的に使節団を送らないで貰いたいですね、時間と金が無駄ですよ」
「まあそう言うな、友好的な関係強化は重要だ。まあ明日、明後日と会談を重ねてそれなりの言い分は聞くだけ聞いてやるさ、お前も聖女様からの婚姻の話考えておいた方がいいんじゃないか?」

「そうですね、どんなに考えても絶対面倒ですからお断りで確定ですね。ていうか明らかに政略結婚じゃないですか」
「まあ聖女との婚姻を足掛かりにマサトを教国に取り込もうという算段だろうな」

そう言ってグランバルさんは他人事のように笑っていますが、前回バイルエ王国の第4王女をグランバルさんの息子さんに押し付けたので文句を言う訳にも行きません。

もうなんか晩餐会に出席するのも面倒くさくなってきましたよ・・・。
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