42 / 252
蠢動
しおりを挟む
「グレーム卿、首尾の方はどうなっておる」
「はっ、恐れながら今のところ芳しくありません」
グレーム卿と呼ばれた男は声の主に対し苦々しい顔をして返答をしています。
「そもそも、あれがまずかったのだ!!」
そう怒りを露わにしているのはヌスターロス大陸の北東よりにあるウェース聖教国、ネレースへの信仰を教義とした国の教皇です。
そしてグレーム卿と呼ばれた男は、教皇の就任に尽力し現在教皇の右腕としてウェース聖教国で辣腕を振るう男です。
「さようでございますな、まさかあの男が本当に異世界から転移して来た者であったとは」
今から約20日前の夜にヌスターロス大陸全土の住人に神託がありその内容は異世界からの転移者が多数この世界に来るとの事。しかし、その前日にウェース聖教国は一人の異教徒を処刑していました。
その者は、「ネレースに誘拐されこの世界に来ただけで自分はこの世界の人間ではない、元の世界に返してくれ」と言いながら衆目の目が集まる中で磔にされ処刑をされました。
神託があったのはその夜です。
神託があった後、ウェース聖教国は異世界人をネレースが招待した神客として迎え入れると公表し異世界人探しを始めましたが異世界人が自ら現れることはありません。
しかしウェース聖教国としてはネレースの神託にあった、この世界より発達した文明の知識を求め、また求心力を失いつつあるウェース聖教国の威信を取り戻すため、異世界人を何としても迎え入れたい状況でありました。
「何か策はないのか?」
教皇はイライラした感じで質問をします。
「策ですか・・・下手な策は異世界人に対し余計警戒感を与えます。今のところは各村へ通達と、騎士を教国内の各地に送り異世界人らしき者を見かけたら保護するようにする事ぐらいしかございません。」
「それでは他国に後れを取るではないか!!」
教皇の癇癪が爆発しました。
しかしグレーム卿と呼ばれた男は眉一つ動かさずに答えます。
「今は保護をしている3名を使い同じ異世界人の警戒を解き、また近隣各国に間者を送り込み異世界人の情報を集めるのが得策かと」
「しかしその異世界人は既に仲間が殺されるのを見ているのだぞ。報告では元の世界に返してくれというだけで我々に協力する気配はないとの事ではないか!!」
「それにつきましては、待遇を改善し、またウェース聖教国としても異世界に帰るすべを探すなど約束をして協力させるのが得策かと思います」
「約束など出来るわけなかろうが!!」
「確かに元の世界に返すと言う約束は出来ませんが帰るすべを探すのに協力する、となら約束が出来ます。もっとも探したとて見つかるわけもありませんが、形だけ協力してる振りをしていればいいだけです」
「それで奴らが信用して協力するのか?」
「彼らも元の世界に帰る為には必死になるでしょう。もっとも異世界からの転移など初めて聞きましたので帰れるとは思えませんが」
「じゃあそうしろ!!」
そういうと教皇は席を立ち退出していきます。
その場に残されたグレーム卿は大きなため息をし自身も退出をします。
実際グレーム卿の元へは異世界人らしき者を見かけたとの情報は入ってきますがどれも処刑が行われる前の過去の事で、処刑後の目撃情報はほとんどなくなっています。
「恐らく他国に逃げたか、それとも民衆に紛れているのか・・・」
そう思いながら自身が組織している諜報員からの報告書に目を通します。
内容は正教国内にて異世界人は異端者として処刑する為、懸賞金をかけて探しているとのうわさが蔓延している事、近隣国では複数の異世界人を確保している兆候が見られることなど正教国にとってはマイナス面の報告書ばかりです。
「どこの国も異世界人の囲い込みに躍起か・・・それとも既にネズミに匿われているか・・・」
そういうと諜報部へ再度、正教国が神客として異世界人を迎えている、処刑されたのは異世界人ではなく盗賊だったとのうわさを流すことと、各国の間者の監視強化を指示します。
実際、神託の後、各国は近隣諸国に間者を大量に送り込み異世界人の捜索と確保に躍起になっている結果、現時点でウェース聖教国内に転移された日本人の大半は各国の諜報員に確保され匿われています。
こうなっては異世界人を確保するには出国する際に確保するか、匿われている場所を見つけ出し強襲して強引に確保するしか選択肢がありません。
「少しでも下手を打つと隣国との軋轢を生むな・・・」
そう独り言を呟き、グレーム卿は大きなため息をします。
「とりあえず隣国との手前に検問所を設け出国する者を監視するしかないか・・。」
そういうと呼び鈴で従者を呼び出し諜報担当責任者を呼ぶよう申し付け背もたれに身を任せ目を閉じます。
「うまくいかんもんだな・・・」
「はっ、恐れながら今のところ芳しくありません」
グレーム卿と呼ばれた男は声の主に対し苦々しい顔をして返答をしています。
「そもそも、あれがまずかったのだ!!」
そう怒りを露わにしているのはヌスターロス大陸の北東よりにあるウェース聖教国、ネレースへの信仰を教義とした国の教皇です。
そしてグレーム卿と呼ばれた男は、教皇の就任に尽力し現在教皇の右腕としてウェース聖教国で辣腕を振るう男です。
「さようでございますな、まさかあの男が本当に異世界から転移して来た者であったとは」
今から約20日前の夜にヌスターロス大陸全土の住人に神託がありその内容は異世界からの転移者が多数この世界に来るとの事。しかし、その前日にウェース聖教国は一人の異教徒を処刑していました。
その者は、「ネレースに誘拐されこの世界に来ただけで自分はこの世界の人間ではない、元の世界に返してくれ」と言いながら衆目の目が集まる中で磔にされ処刑をされました。
神託があったのはその夜です。
神託があった後、ウェース聖教国は異世界人をネレースが招待した神客として迎え入れると公表し異世界人探しを始めましたが異世界人が自ら現れることはありません。
しかしウェース聖教国としてはネレースの神託にあった、この世界より発達した文明の知識を求め、また求心力を失いつつあるウェース聖教国の威信を取り戻すため、異世界人を何としても迎え入れたい状況でありました。
「何か策はないのか?」
教皇はイライラした感じで質問をします。
「策ですか・・・下手な策は異世界人に対し余計警戒感を与えます。今のところは各村へ通達と、騎士を教国内の各地に送り異世界人らしき者を見かけたら保護するようにする事ぐらいしかございません。」
「それでは他国に後れを取るではないか!!」
教皇の癇癪が爆発しました。
しかしグレーム卿と呼ばれた男は眉一つ動かさずに答えます。
「今は保護をしている3名を使い同じ異世界人の警戒を解き、また近隣各国に間者を送り込み異世界人の情報を集めるのが得策かと」
「しかしその異世界人は既に仲間が殺されるのを見ているのだぞ。報告では元の世界に返してくれというだけで我々に協力する気配はないとの事ではないか!!」
「それにつきましては、待遇を改善し、またウェース聖教国としても異世界に帰るすべを探すなど約束をして協力させるのが得策かと思います」
「約束など出来るわけなかろうが!!」
「確かに元の世界に返すと言う約束は出来ませんが帰るすべを探すのに協力する、となら約束が出来ます。もっとも探したとて見つかるわけもありませんが、形だけ協力してる振りをしていればいいだけです」
「それで奴らが信用して協力するのか?」
「彼らも元の世界に帰る為には必死になるでしょう。もっとも異世界からの転移など初めて聞きましたので帰れるとは思えませんが」
「じゃあそうしろ!!」
そういうと教皇は席を立ち退出していきます。
その場に残されたグレーム卿は大きなため息をし自身も退出をします。
実際グレーム卿の元へは異世界人らしき者を見かけたとの情報は入ってきますがどれも処刑が行われる前の過去の事で、処刑後の目撃情報はほとんどなくなっています。
「恐らく他国に逃げたか、それとも民衆に紛れているのか・・・」
そう思いながら自身が組織している諜報員からの報告書に目を通します。
内容は正教国内にて異世界人は異端者として処刑する為、懸賞金をかけて探しているとのうわさが蔓延している事、近隣国では複数の異世界人を確保している兆候が見られることなど正教国にとってはマイナス面の報告書ばかりです。
「どこの国も異世界人の囲い込みに躍起か・・・それとも既にネズミに匿われているか・・・」
そういうと諜報部へ再度、正教国が神客として異世界人を迎えている、処刑されたのは異世界人ではなく盗賊だったとのうわさを流すことと、各国の間者の監視強化を指示します。
実際、神託の後、各国は近隣諸国に間者を大量に送り込み異世界人の捜索と確保に躍起になっている結果、現時点でウェース聖教国内に転移された日本人の大半は各国の諜報員に確保され匿われています。
こうなっては異世界人を確保するには出国する際に確保するか、匿われている場所を見つけ出し強襲して強引に確保するしか選択肢がありません。
「少しでも下手を打つと隣国との軋轢を生むな・・・」
そう独り言を呟き、グレーム卿は大きなため息をします。
「とりあえず隣国との手前に検問所を設け出国する者を監視するしかないか・・。」
そういうと呼び鈴で従者を呼び出し諜報担当責任者を呼ぶよう申し付け背もたれに身を任せ目を閉じます。
「うまくいかんもんだな・・・」
8
お気に入りに追加
332
あなたにおすすめの小説
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた
藤岡 フジオ
ファンタジー
遥か未来の地球。地球型惑星の植民地化が進む中、地球外知的生命体が見つかるには至らなかった。
しかしある日突然、一人の科学者が知的生命体の住む惑星を見つけて地球に衝撃が走る。
惑星は発見した科学者の名をとって惑星ヒジリと名付けられた。知的生命体の文明レベルは低く、剣や魔法のファンタジー世界。
未知の食材を見つけたい料理人の卵、道 帯雄(ミチ オビオ)は運良く(運悪く?)惑星ヒジリへと飛ばされ、相棒のポンコツ女騎士と共に戦いと料理の旅が始まる。
元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~
冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。
俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。
死んだと思ったら異世界に
トワイライト
ファンタジー
18歳の時、世界初のVRMMOゲーム『ユグドラシルオンライン』を始めた事がきっかけで二つの世界を救った主人公、五十嵐祐也は一緒にゲームをプレイした仲間達と幸せな日々を過ごし…そして死んだ。
祐也は家族や親戚に看取られ、走馬灯の様に流れる人生を振り替える。
だが、死んだはず祐也は草原で目を覚ました。
そして自分の姿を確認するとソコにはユグドラシルオンラインでの装備をつけている自分の姿があった。
その後、なんと体は若返り、ゲーム時代のステータス、装備、アイテム等を引き継いだ状態で異世界に来たことが判明する。
20年間プレイし続けたゲームのステータスや道具などを持った状態で異世界に来てしまった祐也は異世界で何をするのか。
「取り敢えず、この世界を楽しもうか」
この作品は自分が以前に書いたユグドラシルオンラインの続編です。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる