こうゆうっ♪

た〜こいず

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第2章 交わる過去

仮面の日々 〜Story of 御万小郁〜

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「こんにちは~!寛二クンいるかー?」

 わざとらしく高笑いしながらドアを開いて中に踏み込む。
 虚しいかな、私一人の声が響くだけだった。

(うわ、誰もいない……)

 交遊部の部室はいつもと変わらない。
 ただ、人が一人もいない。

(いつもは誰かしらいるのになぁ~、つまんない)

 口先を尖らせ、壁をちょこんと蹴ってみる。

「まあ、考えてみればそうか~。時間的に先生は仕事、緒奈仁先輩は家の用事って言ってたし……奈瑠先輩と寛二クンは多分……デートだろうな」

 つい独り言を言ってしまう始末。
 しかしみんな最近忙しそうだ。

 奈瑠先輩と寛二クンに至っては、この前の二人きりのセックスがどハマりしたらしく。
 部の活動外でも、甲斐甲斐しくヤッておられるそうだ。

(マジで退屈……ボッチになるくらいなら、部活辞めようかな)

 壁にもたれ、ぼーっと部屋を見渡す。

 ふと壁に掛けられた写真に目が止まる。

 全部で四枚。
 一枚はこの部が作られた時の、緒奈仁先輩と先生二人の集合写真。
 一枚は全身びしょびしょでアヘってる奈瑠先輩。
 地面に寝そべり、弱々しくピースサインをしている。
 一枚は寛二クン。
 私達の儀式で、こちらも全身濡れ濡れで横たわった姿。
 それを囲む私たちは、ピースしながら写真に収まる。
 これ私が自撮りしたやつだ。

(なんかもう懐かしい……あれから四ヶ月だもんなぁ~)

 季節は八月、夏真っ盛り。

 陽当たりがそこまで良く無いこの部室は、クーラー無しでも涼しいところだ。
 そう思いつつ、最後に目を向けた一枚。

 ここに写っているのは、私。
 お尻とおまんこにバイブを突っ込み、乳首にはテープでローターを貼り付けている。

 そしてそのあられもない尻を、見せつけるように写真を撮った。

 その両脇には笑顔でピースする緒奈仁先輩と越出先生、少し離れて奈瑠先輩と天江名先生も。

(……そうだよね、私。ここでみんなに会えたから良かったんじゃん……)

 そう、今の私はまさにこの部で。あの頃のことが思い起こされるーー




 ーー「いいこと、小郁。御万家の血筋たるもの、常に優雅に、上品に」

「小郁も大人なんだ。気品ある生活を心がけなさい」

「はい。お父様、お母様」

 父の御万おまん胡月こづき、母の御万おまん小宵こよい
 二人とも大手企業の代表取締役を務める、超エリート。

 そんな二人の間にできた私は、幼い頃からひたすらに英才教育を受けてきた。
 最上の教育を受け、幼稚園も小学校も中学校も、エリートの卵が通う優良校。
 一般人が享受する娯楽という娯楽を封じられ。
 小さい頃からお稽古や勉学にかなり力を注いでいた。

 周りの環境柄、お淑やかに振る舞うことにおいてはかなり上達したと思う。

「御万さん、ごきげんよう」

 清楚な笑顔で挨拶する同級生。

「ごきげんよう」

 応える私。


(……はぁ、タヒね。何よ、作ったお面で薄っぺらい人付き合いしちゃって)

 そんな生活が、私にはたまらなくつまらなかった。


 元々両親の職業柄、家での触れ合いが少なく、勉強を頑張っても褒められず、些細な行き違いが積もっていた。

 その上、同級生のいじめを陰から見てしまったこともある。
 こんな煌びやかに見える世界だって、上品な学校だって、全てが美しく素晴らしい環境なわけでもないのだ。

 結果、私はグレるようになった。

 親への反抗の気持ちもあったけど、何より、ナメられたら終わりだと思った。
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