こうゆうっ♪

た〜こいず

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第2章 交わる過去

悩みを打ち明けて 〜Story of 氣持緒奈仁〜

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「柳沢くん……柳沢くん……柳沢くん柳沢くん柳沢くん柳沢くん……!!」

 私は腰を上下に何度も動かして陰部に刺激を与え続ける。

 みっともない姿だろう。
 しかし、私には当時これが一番幸せな時間だった。

 中学生の頃、偶然机の端に股が当たってしまったことが原因で開花した、この性癖が。

 好みの男子の机を使って自慰をする。

 柳沢くんは授業中、机の端を触る癖があるから、まさに間接手マン。
 それが私の劣情を余計に刺激した。

「ああ、あぁ……はふぅ」

(最高……おつゆ、溢れちゃう……)

 昂る感情が抑えられず、何度も何度も擦り付ける。
 その時。

「誰かいるの?」

 ガラッと扉が開かれる。

 咄嗟のことすぎて、私は動くこともできなかった。

「……ナニ、してるのかな……?」

 恐る恐る後ろを振り向く。

 そこに立っていたのは、保健室の養護教諭、天江名先生だった。


「ぐずっ、うっ、うえぇぇぇ~」

「ほらほら、もう泣かないで。誰にも言わないわ?」

 保健室の椅子に座る私。

 恥ずかしい姿を見られたことで抑えが効かなくなり、ただただ泣きじゃくる。
 そんな私の涙を、天江名先生は優しく拭ってくれた。

「うっ、うっ……ひっく、うぅ……」

 ようやく少し落ち着いてくる。
 とはいえ心中穏やかではない。

 彼女がもし他の生徒や先生に密告すれば、私は間違いなく終わりだ。

「ずずっ……先生……お願いです……私のあんな姿……絶対に誰にも……言わないで……」

 鼻水も流して懇願する私を見て、はぁとため息をつく先生。

「だ~か~ら~……大丈夫。生徒の秘密は守ります。私を、信じて?」

 先生は私の手をそっと握り、じっと目を見つめてくれた。
 その目に宿る優しい光。

 私は、静かに頷いた。

 先生はにっこり笑ってくれた。

「ふふ、良かった。……ほんと、気にしなくていいのよ?あなたみたいな子は、沢山いるもの」

「そう……なんですか……?」

「そうよ~。男の子はもちろん、女の子だって、性欲を強く感じる子はいるもの。何も恥ずかしがることじゃないの」

 そこまで言うとしかし、先生は頬を掻きながら困った顔でこう繋げた。

「……けど、流石に好きだからって男の子の机に本当にアソコ擦るのは……やめたほうがいいかも、ね?」

 私は俯いた。

 そんなことは分かっている。
 出来ることなら、彼に告白して、付き合いたい。

 沢山、エッチして欲しい。

 でも……

 横目に戸棚のガラス扉に映った自分の顔を確認する。

 ボサボサの髪。
 猫背の背中。
 ニキビのある顔。
 ダサい眼鏡……


 こんな私がモテる要素など、微粒子レベルもなかった。
 かと言って今更変われるのかと考えれば、不安が押し寄せる。

 そんな負の感情に抑圧され、結局何もできないまま、ただ股を弄って終わる日々を送っていた。

 すると天江名先生はすぐに察し、優しく声を掛けてくれた。

「自信がない、て顔ね……。ねぇ、誰しも、夢と勇気を持って一歩ずつ前に進んでいくものよ。変わることは怖いこと。でもね、」

 一呼吸置いて続ける。


「『始めることに遅すぎるということはない』。私の座右の銘なの。どんな事でも、始めようと思った時が、一番ベストなタイミングよ」


 更に先生は、優しく抱きしめてくれた。

 暖かい。
 先生の優しさが全身で感じられる。

 自然と、涙が溢れてしまった。

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