16 / 356
第一章 獣人隠里
第十二話 欲の飢え
しおりを挟む
「長老様~! 来たよ~!」
「おお、立珂。よく来たね。待っていたよ。伽耶。立珂が来てくれたぞ」
「用意してあるよ! こっちおいで!」
薄珂は立珂と慶都を連れて長老の家に来ていた。文字の読み書きを習うためだ。頼んだら快く引き受けてくれて、聞きつけた孫娘の伽耶が古着を立珂にくれるというので三人で来た。
うきうきしている立珂を抱いて伽耶の元へ行くと、床に壁にもずらりと服が並んでいた。壁に掛けられているのは薄く透き通る桜色の生地で、窓から差し込む陽の光できらきらと光の粒子が輝いた。服のようではあるがどう装着するのか分からない。けれどわずかな風でひらひらと揺れる軽やかさは、薄珂ですら思わず息を呑む美しさだ。そして当然立珂にも。
「すすすすすすすてきぃぃぃ! 薄珂薄珂! あれ見たい! 壁の! 桜色のきらきら!」
立珂は動かない羽で飛び出しそうなほどに興奮した。伽耶は服を床に広げてくれて、立珂は顔がくっつきそうなくらいまじまじと見ている。
「南の生地よ。小さい頃に着てたんだけど里は小さい女の子いないから誰も着ないのよ」
「え~! もったいないよ! こんな素敵なのに!」
「でしょ? でも立珂ちゃんの分解して着る服、あれなら使えるでしょ?」
「う!? これ切っていいの!? 使っていいの!?」
「いいよ。はい、鋏」
伽耶は裁縫道具を取り出し立珂の傍に置いてくれた。宝の山を前にして、立珂はさっそく鋏を入れ始める。
「桜色のきらきらは前に使いたいね! とっても綺麗だからお出かけ用の服だね。襟と背中を濃い赤にして、縁取りも濃い赤で金糸の刺繍する豪華になるよ」
「お祭りの衣装にするのは? 舞台作って踊ったりさ」
「素敵! これならお姫様になれるよ!」
立珂は伽耶と意気投合したようで、お洒落談議は深まって行った。絶え間ない笑顔に薄珂も知らず知らずのうちに笑顔になる。
(よかった。お洒落って分からないんだよな俺)
薄珂はお洒落に全く興味が無かった。目を輝かせる立珂は可愛いがそれだけで、対等にお洒落の議論はできなかった。できることと言えば立珂を褒めることくらいだ。だから立珂と同じ目線で遊んでくれる相手がいるのはとても有難かった。
長老も嬉しそうな笑いをこぼしていたが、ぽんっと薄珂の背を叩いた。
「薄珂は文字の読み書きだったな」
「うん。名前くらいは書けるけど難しいのは全然分からなくて」
「なら本を読みながら勉強しよう。ついでに色々な知識も得られる」
長老は本棚から幾つか本を取り出し立珂達が見える位置に座った。
最初に広げてくれたのは両手で持つほど大きな本で、文字よりも絵が多い。枚数も少ないので厚みもあまりなかった。
「絵本だ。この辺りの伝承を書いたもので、天女が人間の男と恋に落ち仙力で国を作る話」
「……へー。恋なんかしなくても国は作れると思うけど」
「ははは。これは持って帰って立珂と読みなさい。服が可愛いから立珂も楽しいだろう」
「ああ、うん。有難う」
「男の子は武勇伝のような話がよいだろう」
長老はもう一冊の本を薄珂の前に置いた。重厚感ある赤い表紙には金の文字で『極北明恭公吠伝』と書かれているが、とても分厚くて絵は一つも入っていない。
「これは『きょくほくめいきょうきはいでん』と読む。明恭は知ってるか?」
「ちょっとだけ聞いた。軍事国家で、凍死する人がいるって」
「そう。三千人以上が凍死していたが今は無くなった。どうしてだと思う?」
「夏になったから?」
「いいや。明恭は年中極寒。寒さが納まる日などない。ある物を使うようになったんだ」
「……分かんない」
「はは。正解はあれだ」
長老は視線を本から居間へ移した。そこでは立珂がたくさんの服を広げている。端切れや紐類が所せましと広がっていて片付けが大変そうだ。
「あ、服を変えたんだ」
「そうだ。それもある特殊な材料を用いた特別な服だ。何を使ったと思う?」
「すごく分厚い生地?」
「いいや。身体の中から温まる最高級の素材だ」
長老はほんの少しだけ眉を下げて苦笑いをすると、再び立珂に視線を移した。
相変わらず立珂は服ではしゃいでるが、その横で慶都が団扇で仰いでくれている。何をするにも汗をかく立珂のために自ら持ち歩くようになったのだ。
そしてその姿を見てふと天藍の言葉を思い出した。
(そういや明恭は有翼人に詳しいんだっけ。もしかして)
なんとなく想像がついて、薄珂は恐る恐る答えた。
「……有翼人の羽根?」
「正解だ。有翼人の羽根は綿や動物の毛よりはるかに暖かいそうだ。羽根家財と防寒具のおかげで平均寿命が五十歳前後から八十歳にまで伸びた」
「そんなに!?」
「これを成したのが現明恭皇の公吠様だ。軍事国家でありながら政治力のみで解決した。それでも武力が衰える事はなく世界の重鎮であり続けている。これはその武勇伝だ」
「へえ。じゃあ公吠様は軍事国家を止めたいんだ」
「うん? そうだが、何故そう思う? 武力は衰えていないんだぞ」
「だって政治力で乗り切るって軍事国家であることを否定したようなものだよ。けど公吠様はそれを本にした。武力一本でいくべきじゃないと考えたんだよ」
「だが止めたいとは限らんぞ。改善して続けるかもしれん」
「続けないよ。というか続けてない。だってこの本続きあるもん」
薄珂は長老が本を取り出ってきた本棚を見た。そこには『新極北明恭公吠伝』という続編の三巻まで並んでいるが、表紙の色は白で文字は銀色に変わっている。
「全然違う本みたいだよね。きっと武勇伝から政治の話に変わったんだよ」
薄珂は思ったことをぺらぺらと話したが、長老は目を見開いて驚愕を顕わにしている。
「あれ? 違う?」
「……正解だ。それをこの一瞬で考えたのか?」
「考えたっていうか蛍宮がそうだし。悪政を終わらせ平和にしたって」
「なるほど」
長老はゆっくりと口角を吊り上げ、本棚から『新極北明恭公吠伝』の三巻全てを取り出し積み上げた。合計四冊、全て読むにはとても一日では足りない。
「明日から昼過ぎにおいで。文字と歴史を教えよう。立珂も一日じゃ遊びつくせないだろう」
「有難う! じゃあ明日から来るね!」
ようやく師を得て薄珂はぱあっと笑顔になった。しかしそれと同時に居間から悲鳴とも思える立珂の大きな声が上がった。
何かあったのかと、薄珂は本を放り捨てて居間へと駆け込んだ。すると立珂は満面の笑みを浮かべ、両手で紫色の何かを抱きしめていた。それは服ではなく植物のようだった。
「びっくりした。それ何だ?」
「いいかおりなの! ふわ~んって!」
立珂が持っているのは細長い植物で、紫色の小さな花がたくさん付いている。立珂は紫の束にぼふっと顔を突っ込んでその香りを嗅いだ。
くんくんと嗅ぐ姿は愛らしくて、伽耶は愛でながら立珂を撫でている。
「気に入ったみたいだね。これは薫衣草よ。湖のあたりに咲いてるの。一束あげるから家に飾りなよ」
「有難う。立珂、もらったぞ」
「わあい! 有難う! くんくん!」
それからしばらく立珂は薫衣草を抱きしめていたが、心地良い香りのおかげか少ししたら昼寝を始めた。
起こすのは忍びないので立珂の目が覚めるまで長老に本を読んでもらった。夕方になるとようやく立珂は目を覚まし、明日もまた来ると約束して帰宅した。
家に帰り夜も更け寝台に入ると、立珂は薫衣草の束を抱きしめたままだった。
「立珂。それあっちに置いておこう」
「やだ。持って寝る。くんくんしながら寝る」
「よっぽど気に入ったんだな。じゃあ何かに包むか。布団汚れちゃうからな」
薄珂は端切れを引っ張り出し薫衣草を包んだ。立珂は嬉しそうにそれを抱きしめるとようやく横になったが、それでもずっとくんくん嗅いでいる。
「首から下げる袋作るか? 匂い袋にすればいつも持ってられるだろ」
「作る! 作る作る! 服に合う色がいいな。共布もいいかも!」
「共布ってなんだ? 一緒に使う布か?」
「同じ生地! 服と同じ生地で作ればおそろいになるでしょ!」
「ああ、なるほど。立珂はどんどん頭良くなるな。凄い」
「んふふふ。薄珂のも作るね」
「お揃いだな」
「お揃いだよ!」
立珂はぐりぐりと薄珂に頬ずりをした。二人の身体の間から薫衣草の香りが溢れている。
大好きな服と薫衣草、新たなお洒落に思いを馳せて立珂は幸せそうに眠った。
(咲いてるとこ見に行ってみるか)
立珂はぷうぷうと穏やかな寝息を立てている。それは今までと変わらないけれど、立珂の未来への選択肢はどんどん増えているようだった。
「おお、立珂。よく来たね。待っていたよ。伽耶。立珂が来てくれたぞ」
「用意してあるよ! こっちおいで!」
薄珂は立珂と慶都を連れて長老の家に来ていた。文字の読み書きを習うためだ。頼んだら快く引き受けてくれて、聞きつけた孫娘の伽耶が古着を立珂にくれるというので三人で来た。
うきうきしている立珂を抱いて伽耶の元へ行くと、床に壁にもずらりと服が並んでいた。壁に掛けられているのは薄く透き通る桜色の生地で、窓から差し込む陽の光できらきらと光の粒子が輝いた。服のようではあるがどう装着するのか分からない。けれどわずかな風でひらひらと揺れる軽やかさは、薄珂ですら思わず息を呑む美しさだ。そして当然立珂にも。
「すすすすすすすてきぃぃぃ! 薄珂薄珂! あれ見たい! 壁の! 桜色のきらきら!」
立珂は動かない羽で飛び出しそうなほどに興奮した。伽耶は服を床に広げてくれて、立珂は顔がくっつきそうなくらいまじまじと見ている。
「南の生地よ。小さい頃に着てたんだけど里は小さい女の子いないから誰も着ないのよ」
「え~! もったいないよ! こんな素敵なのに!」
「でしょ? でも立珂ちゃんの分解して着る服、あれなら使えるでしょ?」
「う!? これ切っていいの!? 使っていいの!?」
「いいよ。はい、鋏」
伽耶は裁縫道具を取り出し立珂の傍に置いてくれた。宝の山を前にして、立珂はさっそく鋏を入れ始める。
「桜色のきらきらは前に使いたいね! とっても綺麗だからお出かけ用の服だね。襟と背中を濃い赤にして、縁取りも濃い赤で金糸の刺繍する豪華になるよ」
「お祭りの衣装にするのは? 舞台作って踊ったりさ」
「素敵! これならお姫様になれるよ!」
立珂は伽耶と意気投合したようで、お洒落談議は深まって行った。絶え間ない笑顔に薄珂も知らず知らずのうちに笑顔になる。
(よかった。お洒落って分からないんだよな俺)
薄珂はお洒落に全く興味が無かった。目を輝かせる立珂は可愛いがそれだけで、対等にお洒落の議論はできなかった。できることと言えば立珂を褒めることくらいだ。だから立珂と同じ目線で遊んでくれる相手がいるのはとても有難かった。
長老も嬉しそうな笑いをこぼしていたが、ぽんっと薄珂の背を叩いた。
「薄珂は文字の読み書きだったな」
「うん。名前くらいは書けるけど難しいのは全然分からなくて」
「なら本を読みながら勉強しよう。ついでに色々な知識も得られる」
長老は本棚から幾つか本を取り出し立珂達が見える位置に座った。
最初に広げてくれたのは両手で持つほど大きな本で、文字よりも絵が多い。枚数も少ないので厚みもあまりなかった。
「絵本だ。この辺りの伝承を書いたもので、天女が人間の男と恋に落ち仙力で国を作る話」
「……へー。恋なんかしなくても国は作れると思うけど」
「ははは。これは持って帰って立珂と読みなさい。服が可愛いから立珂も楽しいだろう」
「ああ、うん。有難う」
「男の子は武勇伝のような話がよいだろう」
長老はもう一冊の本を薄珂の前に置いた。重厚感ある赤い表紙には金の文字で『極北明恭公吠伝』と書かれているが、とても分厚くて絵は一つも入っていない。
「これは『きょくほくめいきょうきはいでん』と読む。明恭は知ってるか?」
「ちょっとだけ聞いた。軍事国家で、凍死する人がいるって」
「そう。三千人以上が凍死していたが今は無くなった。どうしてだと思う?」
「夏になったから?」
「いいや。明恭は年中極寒。寒さが納まる日などない。ある物を使うようになったんだ」
「……分かんない」
「はは。正解はあれだ」
長老は視線を本から居間へ移した。そこでは立珂がたくさんの服を広げている。端切れや紐類が所せましと広がっていて片付けが大変そうだ。
「あ、服を変えたんだ」
「そうだ。それもある特殊な材料を用いた特別な服だ。何を使ったと思う?」
「すごく分厚い生地?」
「いいや。身体の中から温まる最高級の素材だ」
長老はほんの少しだけ眉を下げて苦笑いをすると、再び立珂に視線を移した。
相変わらず立珂は服ではしゃいでるが、その横で慶都が団扇で仰いでくれている。何をするにも汗をかく立珂のために自ら持ち歩くようになったのだ。
そしてその姿を見てふと天藍の言葉を思い出した。
(そういや明恭は有翼人に詳しいんだっけ。もしかして)
なんとなく想像がついて、薄珂は恐る恐る答えた。
「……有翼人の羽根?」
「正解だ。有翼人の羽根は綿や動物の毛よりはるかに暖かいそうだ。羽根家財と防寒具のおかげで平均寿命が五十歳前後から八十歳にまで伸びた」
「そんなに!?」
「これを成したのが現明恭皇の公吠様だ。軍事国家でありながら政治力のみで解決した。それでも武力が衰える事はなく世界の重鎮であり続けている。これはその武勇伝だ」
「へえ。じゃあ公吠様は軍事国家を止めたいんだ」
「うん? そうだが、何故そう思う? 武力は衰えていないんだぞ」
「だって政治力で乗り切るって軍事国家であることを否定したようなものだよ。けど公吠様はそれを本にした。武力一本でいくべきじゃないと考えたんだよ」
「だが止めたいとは限らんぞ。改善して続けるかもしれん」
「続けないよ。というか続けてない。だってこの本続きあるもん」
薄珂は長老が本を取り出ってきた本棚を見た。そこには『新極北明恭公吠伝』という続編の三巻まで並んでいるが、表紙の色は白で文字は銀色に変わっている。
「全然違う本みたいだよね。きっと武勇伝から政治の話に変わったんだよ」
薄珂は思ったことをぺらぺらと話したが、長老は目を見開いて驚愕を顕わにしている。
「あれ? 違う?」
「……正解だ。それをこの一瞬で考えたのか?」
「考えたっていうか蛍宮がそうだし。悪政を終わらせ平和にしたって」
「なるほど」
長老はゆっくりと口角を吊り上げ、本棚から『新極北明恭公吠伝』の三巻全てを取り出し積み上げた。合計四冊、全て読むにはとても一日では足りない。
「明日から昼過ぎにおいで。文字と歴史を教えよう。立珂も一日じゃ遊びつくせないだろう」
「有難う! じゃあ明日から来るね!」
ようやく師を得て薄珂はぱあっと笑顔になった。しかしそれと同時に居間から悲鳴とも思える立珂の大きな声が上がった。
何かあったのかと、薄珂は本を放り捨てて居間へと駆け込んだ。すると立珂は満面の笑みを浮かべ、両手で紫色の何かを抱きしめていた。それは服ではなく植物のようだった。
「びっくりした。それ何だ?」
「いいかおりなの! ふわ~んって!」
立珂が持っているのは細長い植物で、紫色の小さな花がたくさん付いている。立珂は紫の束にぼふっと顔を突っ込んでその香りを嗅いだ。
くんくんと嗅ぐ姿は愛らしくて、伽耶は愛でながら立珂を撫でている。
「気に入ったみたいだね。これは薫衣草よ。湖のあたりに咲いてるの。一束あげるから家に飾りなよ」
「有難う。立珂、もらったぞ」
「わあい! 有難う! くんくん!」
それからしばらく立珂は薫衣草を抱きしめていたが、心地良い香りのおかげか少ししたら昼寝を始めた。
起こすのは忍びないので立珂の目が覚めるまで長老に本を読んでもらった。夕方になるとようやく立珂は目を覚まし、明日もまた来ると約束して帰宅した。
家に帰り夜も更け寝台に入ると、立珂は薫衣草の束を抱きしめたままだった。
「立珂。それあっちに置いておこう」
「やだ。持って寝る。くんくんしながら寝る」
「よっぽど気に入ったんだな。じゃあ何かに包むか。布団汚れちゃうからな」
薄珂は端切れを引っ張り出し薫衣草を包んだ。立珂は嬉しそうにそれを抱きしめるとようやく横になったが、それでもずっとくんくん嗅いでいる。
「首から下げる袋作るか? 匂い袋にすればいつも持ってられるだろ」
「作る! 作る作る! 服に合う色がいいな。共布もいいかも!」
「共布ってなんだ? 一緒に使う布か?」
「同じ生地! 服と同じ生地で作ればおそろいになるでしょ!」
「ああ、なるほど。立珂はどんどん頭良くなるな。凄い」
「んふふふ。薄珂のも作るね」
「お揃いだな」
「お揃いだよ!」
立珂はぐりぐりと薄珂に頬ずりをした。二人の身体の間から薫衣草の香りが溢れている。
大好きな服と薫衣草、新たなお洒落に思いを馳せて立珂は幸せそうに眠った。
(咲いてるとこ見に行ってみるか)
立珂はぷうぷうと穏やかな寝息を立てている。それは今までと変わらないけれど、立珂の未来への選択肢はどんどん増えているようだった。
0
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

【運命】に捨てられ捨てたΩ
雨宮一楼
BL
「拓海さん、ごめんなさい」
秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。
「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」
秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。
【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。
なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。
右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。
前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。
※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。
縦読みを推奨します。

ニケの宿
水無月
BL
危険地帯の山の中。数少ない安全エリアで宿を営む赤犬族の犬耳幼子は、吹雪の中で白い青年を拾う。それは滅んだはずの種族「人族」で。
しっかり者のわんことあまり役に立たない青年。それでも青年は幼子の孤独をゆるやかに埋めてくれた。
異なる種族同士の、共同生活。
※過激な描写は控えていますがバトルシーンがあるので、怪我をする箇所はあります。
キャラクター紹介のページに挿絵を入れてあります。
苦手な方はご注意ください。

好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない
豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。
とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ!
神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。
そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。
□チャラ王子攻め
□天然おとぼけ受け
□ほのぼのスクールBL
タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。
◆…葛西視点
◇…てっちゃん視点
pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。
所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。

僕の王子様
くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。
無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。
そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。
見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。
元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。
※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。

あの日の記憶の隅で、君は笑う。
15
BL
アキラは恋人である公彦の部屋でとある写真を見つけた。
その写真に写っていたのはーーー……俺とそっくりな人。
唐突に始まります。
身代わりの恋大好きか〜と思われるかもしれませんが、大好物です!すみません!
幸せになってくれな!

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?
ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。
ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。
そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる