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第五章 多様変遷
第十五話 閃里の違和感(一)
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約束通り、閃里とその部下数名を連れて有翼人保護区へやって来た。
天藍と護栄、浩然も誘ったのだが物々しくなるので同行しない方が良いだろうと断られたが、立珂は閃里だけいればそれでいいと笑っていた。結局いつも通り美星と、保護区の様子見も兼ねて響玄も参加してくれた。もちろん慶都も連れて、ならば料理を担当しようと母の白那も付いて来てくれた。
仲の良い人がたくさん集まってくれて、立珂はにこにこと満面の笑みだ。
そして有翼人保護区に入ると、立珂はきゃあと叫んではしりだした。
「みんなー!」
「まあまあ。立珂様」
「りっかちゃんだ!」
「あそびにきたよー!」
立珂はぴょんと有翼人の子供と抱き合った。有翼人保護区ができあがり、想像以上に子供が多いことを知った。
全種族平等を謳ってはいるが、もし万が一迫害を受けたら子供は対処ができない。親世代は有翼人狩りを経験している者も多いので外出を控える傾向にあったという。
だが立珂の活躍により有翼人保護区は安全だと伝わり、子供もどんどん外へ出てきたのだ。立珂も同じ歳頃の有翼人と友達になれたことを喜び、よく遊びに来るようになっている。
立珂は閃里の手を握ると、みんなの前にぐいぐいと引っ張り出した。
「このひとがせんりさまだよ! 薄珂をたすけてくれたの!」
「ええ、ええ。聞いていますとも。閃里様、本当に有難う御座いました」
「ん? あなたはこの子らの親族か?」
「いいえ。でも立珂様と薄珂様は我ら有翼人の大切な方ですもの。有難う御座いました」
立珂と閃里の周りにはあっという間に人が集まり、想像以上の人数に閃里も部下数名もおろおろと困り果てている。自分達は何もしていないと真実を告げているが、それも謙虚で思いやりがあると捕らえられている。
気が付けば広場に輪ができ、大勢での野外食事会が始まっていた。立珂が閃里と部下達の前を歩いて回り。麺麭と食材を何にするか相談し立珂が挟むという流れだ。立珂の隣には美星と、美星が食材を詰めてくれた籠を持った慶都がいる。
「おにーさんは肉食獣人なんだよね。じゃあおにくいっぱい!」
「駄目だ。肉食獣人にはお野菜いっぱいがいいぞ」
「でもお肉食べたいよ」
「栄養が偏るんだ。獣人も半分は人間だろ? 人間の部分は肉以外の栄養も必要なんだ。本能のままに食べてちゃ駄目なんだ」
「……う?」
「健康でいるためには何でも食べようってことだ。みんな元気がいいだろ? なら肉以外も入れてあげなきゃいけないんだ」
「けんこう! うん! じゃあ葉っぱも!」
「立珂も食べるんだぞ。立珂が元気じゃないとみんな悲しいからな」
「うん! たべる!」
慶都の教えに従い、立珂は色々な食材を挟み始めた。彩りが綺麗になると栄養が良いらしいぞ、と慶都はやけに詳しい話を始めていた。
立珂は何だか分からないようだったが、薄珂もこういった話は知らなかった。響玄と護栄から学ぶのは政治や商売についてだけなのだ。
「あれおばさんが教えたの?」
「孔雀先生よ。もうずーっと張り付いてたのよ」
「栄養について?」
「肉体作り全般ですって。戦うには腕力が必要で、その為には強靭な肉体が必要――らしいわよ」
「へえ。俺考えたことなかった」
「立珂ちゃんを守れなくて悔しかったのよ。これでちょっとは役に立つんじゃない?」
慶都を見ると、美星を立珂の真横に立たせ自分は立珂の背後にいた。周辺をちらちら見回しながら立珂とお喋りもし、時折周辺警備の学生に目配せで何か指示を出している様子だった。
(立珂の側にいない時間が増えた。でも自力で受勲し有翼人保護区の警備を任された)
さらに周辺を見回すと、慶都が決めた宅配拠点と氷の配布拠点があった。そこには有翼人が大勢集まり、下働きと手を繋いで歩いている者もいる。
(宅配が円滑なのは慶都の決めた営業所拠点が的確だったからだ。下働きを生活に密着させることで有翼人の精神的負担が軽くなった。伴侶契約を結んで家族になった人だっている。それも慶都の発案があったからだ)
有翼人保護区が出来てすぐに区内は活気にあふれた。それは物流が円滑なおかげだった。必要な物はすぐ手に入るので生活には困らないし、一人じゃないから何かに怯えることがあっても心の支えになってくれる。
対外的な評価は明恭の助力のおかげだとなっているが、有翼人保護区内で讃えられるのは明恭ではなく慶都率いる学生警備隊と下働きだ。だから有翼人保護区では慶都も高い支持を受けている。
(それに立珂を一番に助けてくれてる。役になんて、とっくに立ってる)
慶都は立珂が大好きなんだと笑ってべったり傍にいてくれる。里にいた時からそれは変わらなくて、変わったのは慶都が身に着けた知識と技術だ。
薄珂はぐっと拳を握った。自分には持っていない物を幾つも持っている慶都はとても頼もしかった。
天藍と護栄、浩然も誘ったのだが物々しくなるので同行しない方が良いだろうと断られたが、立珂は閃里だけいればそれでいいと笑っていた。結局いつも通り美星と、保護区の様子見も兼ねて響玄も参加してくれた。もちろん慶都も連れて、ならば料理を担当しようと母の白那も付いて来てくれた。
仲の良い人がたくさん集まってくれて、立珂はにこにこと満面の笑みだ。
そして有翼人保護区に入ると、立珂はきゃあと叫んではしりだした。
「みんなー!」
「まあまあ。立珂様」
「りっかちゃんだ!」
「あそびにきたよー!」
立珂はぴょんと有翼人の子供と抱き合った。有翼人保護区ができあがり、想像以上に子供が多いことを知った。
全種族平等を謳ってはいるが、もし万が一迫害を受けたら子供は対処ができない。親世代は有翼人狩りを経験している者も多いので外出を控える傾向にあったという。
だが立珂の活躍により有翼人保護区は安全だと伝わり、子供もどんどん外へ出てきたのだ。立珂も同じ歳頃の有翼人と友達になれたことを喜び、よく遊びに来るようになっている。
立珂は閃里の手を握ると、みんなの前にぐいぐいと引っ張り出した。
「このひとがせんりさまだよ! 薄珂をたすけてくれたの!」
「ええ、ええ。聞いていますとも。閃里様、本当に有難う御座いました」
「ん? あなたはこの子らの親族か?」
「いいえ。でも立珂様と薄珂様は我ら有翼人の大切な方ですもの。有難う御座いました」
立珂と閃里の周りにはあっという間に人が集まり、想像以上の人数に閃里も部下数名もおろおろと困り果てている。自分達は何もしていないと真実を告げているが、それも謙虚で思いやりがあると捕らえられている。
気が付けば広場に輪ができ、大勢での野外食事会が始まっていた。立珂が閃里と部下達の前を歩いて回り。麺麭と食材を何にするか相談し立珂が挟むという流れだ。立珂の隣には美星と、美星が食材を詰めてくれた籠を持った慶都がいる。
「おにーさんは肉食獣人なんだよね。じゃあおにくいっぱい!」
「駄目だ。肉食獣人にはお野菜いっぱいがいいぞ」
「でもお肉食べたいよ」
「栄養が偏るんだ。獣人も半分は人間だろ? 人間の部分は肉以外の栄養も必要なんだ。本能のままに食べてちゃ駄目なんだ」
「……う?」
「健康でいるためには何でも食べようってことだ。みんな元気がいいだろ? なら肉以外も入れてあげなきゃいけないんだ」
「けんこう! うん! じゃあ葉っぱも!」
「立珂も食べるんだぞ。立珂が元気じゃないとみんな悲しいからな」
「うん! たべる!」
慶都の教えに従い、立珂は色々な食材を挟み始めた。彩りが綺麗になると栄養が良いらしいぞ、と慶都はやけに詳しい話を始めていた。
立珂は何だか分からないようだったが、薄珂もこういった話は知らなかった。響玄と護栄から学ぶのは政治や商売についてだけなのだ。
「あれおばさんが教えたの?」
「孔雀先生よ。もうずーっと張り付いてたのよ」
「栄養について?」
「肉体作り全般ですって。戦うには腕力が必要で、その為には強靭な肉体が必要――らしいわよ」
「へえ。俺考えたことなかった」
「立珂ちゃんを守れなくて悔しかったのよ。これでちょっとは役に立つんじゃない?」
慶都を見ると、美星を立珂の真横に立たせ自分は立珂の背後にいた。周辺をちらちら見回しながら立珂とお喋りもし、時折周辺警備の学生に目配せで何か指示を出している様子だった。
(立珂の側にいない時間が増えた。でも自力で受勲し有翼人保護区の警備を任された)
さらに周辺を見回すと、慶都が決めた宅配拠点と氷の配布拠点があった。そこには有翼人が大勢集まり、下働きと手を繋いで歩いている者もいる。
(宅配が円滑なのは慶都の決めた営業所拠点が的確だったからだ。下働きを生活に密着させることで有翼人の精神的負担が軽くなった。伴侶契約を結んで家族になった人だっている。それも慶都の発案があったからだ)
有翼人保護区が出来てすぐに区内は活気にあふれた。それは物流が円滑なおかげだった。必要な物はすぐ手に入るので生活には困らないし、一人じゃないから何かに怯えることがあっても心の支えになってくれる。
対外的な評価は明恭の助力のおかげだとなっているが、有翼人保護区内で讃えられるのは明恭ではなく慶都率いる学生警備隊と下働きだ。だから有翼人保護区では慶都も高い支持を受けている。
(それに立珂を一番に助けてくれてる。役になんて、とっくに立ってる)
慶都は立珂が大好きなんだと笑ってべったり傍にいてくれる。里にいた時からそれは変わらなくて、変わったのは慶都が身に着けた知識と技術だ。
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