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第五章 多様変遷
第十三話 立珂のお食事会(三)
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一人が前に出ると、わあっと職員が押し寄せた。すかさず美星は食材の追加を料理人に指示し、慶都は自ら列整理を始めた。
薄珂ははしゃぎまくる立珂が椅子から落ちないよう膝に乗せ、注文される食材を立珂の前に並べていく。そして立珂が作り手渡すという、まるで立珂の新店舗のようになっていた。
数分もすれば噂が噂を呼びずらりと長蛇の列になった。さすがに宮廷内を乱しすぎかと思った、面白そうに笑いながらやって来たのは護栄と浩然だ。
「この人心掌握は真似できませんね」
「真似するつもりだったんですか? 寝言はいびきかいてからお願いしますよ」
「黙りなさい」
「ごめん。こんな広がると思わなくて」
「構いませんよ。種族問わず交流できる場があるのは素晴らしいことです」
「立珂は種族っていう概念あんまりないからね」
宮廷職員には全ての種族がいる。それぞれ専用の規定服があるので見るだけで種族がわかるのだが、異なる種族同士でも和気あいあいと盛り上がっている。
それが成されたのは皆が立珂を愛してくれているからだと思うととても嬉しかった。
しかしその時、後方から不満の声が上がった。目をやると、美星と料理人がぺこぺこと頭を下げて回っている。そして料理人の一人が薄珂に駆け寄ってきた。
「どうしたの?」
「実は食材が底をつきまして、後ろまでもたないんですよ」
「え? 全部?」
「はい。残飯の一つも残って無くて」
「ほほう?」
そんなに、と薄珂は驚いたが、きらりと目を光らせたのは浩然だ。浩然はすすすっと立珂ににじり寄りにこりと微笑んだ。
「立珂。またみんなで食事したいかい?」
「したい! またやりたい!」
「そうかそうか。じゃあ明日から続けてくれるかな。ただし使う材料は食堂の余り物に限る」
「いいの!? やったあ! みんなー! あしたもきてね!」
立珂がぴょんと飛び跳ね手を振ると、麺麭を作ってもらえなかった者も安心したようで立珂に挨拶をしながら帰っていった。
料理人は今日は廃棄が無いから片付けが楽だと笑っていて、ここでようやく薄珂は気が付いた。
「残飯処理費用の削減ですね」
「種族間交流もできて一石二鳥。護栄様、修正予算待って下さい」
「では今日の夕方までに」
「明日の昼で」
「夕方です」
「昼」
「夕方」
「昼」
護栄と浩然は何やら火花を散らし始めたが、美星はやれやれといったように眺めている。
そんな争いを邪魔するように、立珂がくんくんと護栄の袖を引っ張った。
「何です?」
「あの人ともおしょくじしたい! 薄珂のことたすけてくれた人!」
「誰でしょう」
「孔雀先生ならなおせるよっておしえてくれた人! 羽根をおくすりにしたとき!」
「あ、閃里様だな」
「せんりさま! おはなししたい! 僕まだありがとう言ってないの!」
護栄と浩然は面食らったようだった。美星は驚くことも戸惑うこともなく、そうですわね、と立珂の頭を撫でている。
皇族がどうのこうのという話を立珂がどこまで理解しているかは分からない。ただ立珂はにこにこと笑っている。皇族という立場で見た時に閃里がどういう相手かなど考えてはいないだろう。護栄はくすりと笑うと立珂の頬を撫でた。
「分かりました。ではお声掛けしておきますね」
「わあい! やったあ!」
立珂はぴょんぴょんと飛び跳ね、早くも食材を検討し始めている。
そしてそんな愛らしい姿を見て護栄はにやりと笑った。
「何か企んでる」
「いつも通りで安心だね」
薄珂ははしゃぎまくる立珂が椅子から落ちないよう膝に乗せ、注文される食材を立珂の前に並べていく。そして立珂が作り手渡すという、まるで立珂の新店舗のようになっていた。
数分もすれば噂が噂を呼びずらりと長蛇の列になった。さすがに宮廷内を乱しすぎかと思った、面白そうに笑いながらやって来たのは護栄と浩然だ。
「この人心掌握は真似できませんね」
「真似するつもりだったんですか? 寝言はいびきかいてからお願いしますよ」
「黙りなさい」
「ごめん。こんな広がると思わなくて」
「構いませんよ。種族問わず交流できる場があるのは素晴らしいことです」
「立珂は種族っていう概念あんまりないからね」
宮廷職員には全ての種族がいる。それぞれ専用の規定服があるので見るだけで種族がわかるのだが、異なる種族同士でも和気あいあいと盛り上がっている。
それが成されたのは皆が立珂を愛してくれているからだと思うととても嬉しかった。
しかしその時、後方から不満の声が上がった。目をやると、美星と料理人がぺこぺこと頭を下げて回っている。そして料理人の一人が薄珂に駆け寄ってきた。
「どうしたの?」
「実は食材が底をつきまして、後ろまでもたないんですよ」
「え? 全部?」
「はい。残飯の一つも残って無くて」
「ほほう?」
そんなに、と薄珂は驚いたが、きらりと目を光らせたのは浩然だ。浩然はすすすっと立珂ににじり寄りにこりと微笑んだ。
「立珂。またみんなで食事したいかい?」
「したい! またやりたい!」
「そうかそうか。じゃあ明日から続けてくれるかな。ただし使う材料は食堂の余り物に限る」
「いいの!? やったあ! みんなー! あしたもきてね!」
立珂がぴょんと飛び跳ね手を振ると、麺麭を作ってもらえなかった者も安心したようで立珂に挨拶をしながら帰っていった。
料理人は今日は廃棄が無いから片付けが楽だと笑っていて、ここでようやく薄珂は気が付いた。
「残飯処理費用の削減ですね」
「種族間交流もできて一石二鳥。護栄様、修正予算待って下さい」
「では今日の夕方までに」
「明日の昼で」
「夕方です」
「昼」
「夕方」
「昼」
護栄と浩然は何やら火花を散らし始めたが、美星はやれやれといったように眺めている。
そんな争いを邪魔するように、立珂がくんくんと護栄の袖を引っ張った。
「何です?」
「あの人ともおしょくじしたい! 薄珂のことたすけてくれた人!」
「誰でしょう」
「孔雀先生ならなおせるよっておしえてくれた人! 羽根をおくすりにしたとき!」
「あ、閃里様だな」
「せんりさま! おはなししたい! 僕まだありがとう言ってないの!」
護栄と浩然は面食らったようだった。美星は驚くことも戸惑うこともなく、そうですわね、と立珂の頭を撫でている。
皇族がどうのこうのという話を立珂がどこまで理解しているかは分からない。ただ立珂はにこにこと笑っている。皇族という立場で見た時に閃里がどういう相手かなど考えてはいないだろう。護栄はくすりと笑うと立珂の頬を撫でた。
「分かりました。ではお声掛けしておきますね」
「わあい! やったあ!」
立珂はぴょんぴょんと飛び跳ね、早くも食材を検討し始めている。
そしてそんな愛らしい姿を見て護栄はにやりと笑った。
「何か企んでる」
「いつも通りで安心だね」
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