人と獣の境界線

蒼衣ユイ/広瀬由衣

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第四章 翼衣專店

第三十二話 美星の怒り(四)

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「明恭の方々はお初にお目にかかる。先代皇宋睿が側室、紅蘭だ!」

(……え? 側室って奥さんだよな。え? じゃあ美星さんて皇女!? あ、でも響玄先生の子供だから違うのか)

「羽を落とせとを命じたのは私だ。これが褒められたことじゃないのは分かってる。だがそれがあったからこそ今がある。失敗大いに結構。成功は成長し掴み取るもんだ!」

 薄珂が少ない情報に混乱している間に紅蘭は叫び、美星も同じく柳を睨みつけた。
 国交の場を私情で乱すことなど許されないが、これに割って入ったのは響玄だった。

「落ち着きなさい、二人とも」
「お父様!」

 響玄はよしよしと美星を撫でると、守るように背の後ろに隠した。

「私は有翼人が自ら歴史を作っていける場所こそが保護区だと思っています。ですが事業の成功なくしてより良い生活作りができないのも事実」

 響玄は柳の前に立ち、手を伸ばした。

「区長を退くことはできません。だが一事業者としてご協力を頂けないだろうか」

 柳は美星と紅蘭の鋭い視線を確認し、ようやく立ち上がり上が間を下げた。
 そして響玄の手を取り、ぐっと強く握手を交わす。

「……すまなかった。ぜひ協力をさせてくれ」
「有難うございます」

 その握手でわだかまりが溶けた――とは言えない。
 紅蘭と美星は認めないと言わんばかりに睨んでいて、天藍もあまり良い顔はしていない。
 護栄と麗亜はやれやれといった風だが、その重い空気の中に明るい声が響いた。

「美星さんも有翼人だったんだね! 僕と同じだね!」

 立珂はぴょんと椅子を飛びおり美星に飛びついた。
 ぎゅうっと抱きしめられた美星は、じわりと涙を浮かべて立珂を抱き返す。

「……はい。同じです」
「ふふふ! 嬉しい! 羽生えたらお揃い着ようねえ」
「ええ。すぐに生えるので待ってて下さい」
「うん! 約束だよ!」

 楽しみだねえ、と立珂ははしゃいだ。
 ぼろぼろと涙を流す美星と立珂を部屋に残し、この日は解散となった。
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