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第四章 翼衣專店
第三十二話 美星の怒り(二)
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「護栄は愛情が分からないんだよ」
「そ、そんなことはないでしょう」
「いえ、そうです。感情を優先したことがないんですよね。薄珂と立珂殿に学ぼうと思ったんですが無理でした」
護栄はあれからも時間を縫って『天一』で働いているが、美星に怒鳴られてばかりらしい。
愛情がない思いやりがない、やる気も見えない、お客様が不安になるから帰れと追い出されることもあるという。
残念ながら実を結ばなかったようだ。
「しかし有翼人という側面に限れば私と同じ側の者が多いと思います。この世界に有翼人の幸せを望む者がどれだけいると思いますか」
再び全員が黙った。護栄が私情で誹謗中傷したからではなく真実だからだ。
全種族平等を謳いはするが、有翼人に興味のない者は『国がやるだろう』と無関心なのだ。
否定も迫害もしないが協力的な関係性は築けていない。
「これは有翼人に限ったことではありません。どんな市場でも賛否はある。けれどどんな市場でも必ず成功する人もいます。それが柳殿です」
護栄の紹介を受け、柳はにっと笑った。
麗亜はその補足をするように語り始める。
「私の政治手腕が認められるのは柳の力も大きいんです。服飾や芸能、家具、飲食、不動産、製造業……あらゆる事業で多大な実績を誇ります。特に娯楽産業は明恭でも随一」
「へー」
「もうちょい感動しろよ」
「だってよく分からないし。護栄様の方が凄いよ」
「こんな怪物と比較しないでくれ。大体土俵が違う」
薄珂の軽い返事に柳は不満を見せたが、立珂に至っては何も分からないようできょとーんとしている。
これほどやりがいの無い相手もそういないだろう。
「有翼人への愛情は薄珂が立珂殿の服で可視化した。そこに柳殿の治験があれば有翼人保護区は絶対に成功します」
「俺の利益になるなら何でもお手伝いしますよ。ただし条件を付けさせてほしい」
「条件? そんな話は聞いていませんが」
「気が変わったんですよ」
柳はにやりと笑い、薄珂をぴっと指差した。
「薄珂を俺にくれ。そうすれば有翼人保護区の成功は確実だ」
「断る」
麗亜含め全員が驚いたが、間髪入れず拒否したのは天藍だ。
不愉快さを顕わに柳を睨みつけている。
「国民を取引材料にする気はない。却下だ」
「先代皇を蹂躙した方が随分甘いことを言う。成功を逃しますよ」
「問題無い。響玄統括のもと成功へ向かっている」
「それは遠からず墜落します。現場の頭と組織の頭はやることが違う。商人じゃ役不足だ」
柳は自信満々に笑み、臆することなく天藍を睨み返した。
「区長に俺を据え補佐に薄珂をよこせ。そうすれば」
「ふざけないで!!」
一同があっけに取られているところに女性の怒号が響いた。
振り向くと、そこには遅れてやって来た紅蘭と随伴の美星がいた。
怒りをぶつけたのは紅蘭ではなく、美星だった。
「そ、そんなことはないでしょう」
「いえ、そうです。感情を優先したことがないんですよね。薄珂と立珂殿に学ぼうと思ったんですが無理でした」
護栄はあれからも時間を縫って『天一』で働いているが、美星に怒鳴られてばかりらしい。
愛情がない思いやりがない、やる気も見えない、お客様が不安になるから帰れと追い出されることもあるという。
残念ながら実を結ばなかったようだ。
「しかし有翼人という側面に限れば私と同じ側の者が多いと思います。この世界に有翼人の幸せを望む者がどれだけいると思いますか」
再び全員が黙った。護栄が私情で誹謗中傷したからではなく真実だからだ。
全種族平等を謳いはするが、有翼人に興味のない者は『国がやるだろう』と無関心なのだ。
否定も迫害もしないが協力的な関係性は築けていない。
「これは有翼人に限ったことではありません。どんな市場でも賛否はある。けれどどんな市場でも必ず成功する人もいます。それが柳殿です」
護栄の紹介を受け、柳はにっと笑った。
麗亜はその補足をするように語り始める。
「私の政治手腕が認められるのは柳の力も大きいんです。服飾や芸能、家具、飲食、不動産、製造業……あらゆる事業で多大な実績を誇ります。特に娯楽産業は明恭でも随一」
「へー」
「もうちょい感動しろよ」
「だってよく分からないし。護栄様の方が凄いよ」
「こんな怪物と比較しないでくれ。大体土俵が違う」
薄珂の軽い返事に柳は不満を見せたが、立珂に至っては何も分からないようできょとーんとしている。
これほどやりがいの無い相手もそういないだろう。
「有翼人への愛情は薄珂が立珂殿の服で可視化した。そこに柳殿の治験があれば有翼人保護区は絶対に成功します」
「俺の利益になるなら何でもお手伝いしますよ。ただし条件を付けさせてほしい」
「条件? そんな話は聞いていませんが」
「気が変わったんですよ」
柳はにやりと笑い、薄珂をぴっと指差した。
「薄珂を俺にくれ。そうすれば有翼人保護区の成功は確実だ」
「断る」
麗亜含め全員が驚いたが、間髪入れず拒否したのは天藍だ。
不愉快さを顕わに柳を睨みつけている。
「国民を取引材料にする気はない。却下だ」
「先代皇を蹂躙した方が随分甘いことを言う。成功を逃しますよ」
「問題無い。響玄統括のもと成功へ向かっている」
「それは遠からず墜落します。現場の頭と組織の頭はやることが違う。商人じゃ役不足だ」
柳は自信満々に笑み、臆することなく天藍を睨み返した。
「区長に俺を据え補佐に薄珂をよこせ。そうすれば」
「ふざけないで!!」
一同があっけに取られているところに女性の怒号が響いた。
振り向くと、そこには遅れてやって来た紅蘭と随伴の美星がいた。
怒りをぶつけたのは紅蘭ではなく、美星だった。
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