人と獣の境界線

蒼衣ユイ/広瀬由衣

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第四章 翼衣專店

第二十七話 世界へ広がる立珂の服(一)

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 今日は愛憐が『りっかのおみせ』に来る日だ。
 皇女がどんな仕事をしてるか薄珂と立珂は知らないが、思っていた以上に忙しいらしく、自由に会えないことを立珂はがっかりしていた。
 けれど今日は昼過ぎたら自由時間らしく、ゆっくり遊ぶ約束をしている。
 出迎える準備のために、今日は午前で閉店することにした。美星も侍女も帰宅し、営業終了の札を掛けようとしたところに一人の青年が店に入って来た。

「あれ? 今日はもう閉店?」
「はい。でも少しならいいですよ」
「じゃあお言葉に甘えて。赤ん坊服を買って来てくれと頼まれてるんだけどある?」
「ありますよ。羽は生えきってます?」
「そりゃまあ、有翼人だし」
「じゃあ二、三歳ですね。こっちの棚です」
「ん? 何で年齢分かるの?」
「羽が生えきるのは二歳から三歳の間なんですよ。そうすると背骨の形が変わるから服も変わります。羽が生えてるならこの棚です」
「へえ。じゃあこの不思議な形はそのため?」
「そうですよ。背が人間とは違うから」

 青年は不思議そうに服を広げると、背中を不思議そうに見つめた。

「……驚いた。人間の服に穴開けるのとは全然違うね」
「はい。皮膚が傷付かないし着心地良いですよ。部屋着はこっち。外出着ならこっち」
「人気なのはどれ?」
「普段着は染色無し装飾無しの完全天然素材服。外出着は立珂とお揃いになる黄色です」
「なるほど」

 『りっかのおみせ』はいわゆる既製品店とは少し違う。
 同じ商品は宮廷から貰う生地で作れる少量しか生産されず、立珂もそのうち何点かを私服で着るが、それと同じ物は発売から数日で売り切れる。
 青年は興味深そうに幾つかを見ていると、きい、と扉の開く音がした。愛憐が来てしまったようだ。

「薄珂」
「愛憐ごめん。まだ――……あ?」
「よお」
「天藍!?」

 入って来たのは愛憐だったが、その後ろにいたのは遠征中だったはずの天藍だ。
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