人と獣の境界線

蒼衣ユイ/広瀬由衣

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第四章 翼衣專店

第二十話 『りっかのおみせ』の新戦力【前編】

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 その後、一連を護栄に報告し判断を仰いだが、立珂の懇願もあり子供の喧嘩ということで幕を閉じてもらった。
 これを伝えに『蒼玉』へ行くと、美月と美月の父・暁明(ぎょうめい)は親子で土下座をした。

「誠に申し訳ございませんでした!」
「申し訳ありません……」

 薄珂と立珂はその勢いに驚き、美星は当然ですと言わんばかりに大きく頷いている。

「もういいよ。仲直りできたし」
「しかし護栄様がお咎め無しなんて、そんなことが本当に……?」
「本当だよ! 薄珂がお願いしたらいいよって言ってくれた!」
「……薄珂様は護栄様と対等にお話なさると聞いたことはありましたが、本当に?」
「それは護栄様が俺に合わせてくれてるだけだよ」
「あの方は人に合わせたりしませんよ。それだけで凄いことです」

 立珂は自慢げに笑み、美月はへえと感心している。しかし暁明は呆然自失といったふうだ。
 どんな場面でも護栄の名の威力は強い。

「その代わり一つ頼みを聞いてくれないかな。それで全部終わりにしよう」
「もちろんです! 何でもお申し付けください!」
「私にできることならなんでもするわ! 何をすればいい!?」

 親子は勢いよく立ち上がった。
 真剣な眼差しを受け、薄珂はにっこりと微笑み告げた。

「美月をください」
「「「「え?」」」」

 立珂を含め、全員が目を丸くして薄珂を見つめている。
 疑問符が飛び交う中、暁明が薄珂の顔色をうかがうように苦笑いを浮かべた。

「……あの、薄珂様の嫁にするには少々年が離れているかと」
「し、失礼ね! そこまで違わないわよ!」
「だめ! 薄珂はあげない!」
「くれとも貰ってくれとも言ってないわよ!」
「嫁にはいらないかなー」
「は!?」

 美月は告白してないのにふられたような状態になり、父と薄珂を睨みつけた。
 薄珂はその気迫に押されながら、ごほん、と咳払いして仕切り直す。

「美月に『りっかのおみせ』の店員になってほしいんだ」
「へ?」
「今は侍女が交代でやってくれてるんだけど、上品すぎて緊張するお客さんが多いんだ。接客力に差もあるし。もっと親しみやすくて腰を据えてやってくれる店員が欲しいと思っててさ」
「そういうことですか。もちろん構いません。ですがその、立珂様はお嫌では……」
「賛成! 僕も賛成! 女の子が好きなお洒落教えてほしい!」

 立珂はぴょんぴょんと飛び跳ねる。
 満面の笑みで歓迎する姿を見て、美月はぎゅっと強く拳を握りしめて薄珂を見つめ返した。

「私は瑠璃宮の美しき月。接客と集客なら任せてちょうだい!」
「わあい!」
「有難う。そしたら明日からお願いできる?」
「ええ! けどその前にやらなきゃいけないことがあるわ!」
「う?」
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