人と獣の境界線

蒼衣ユイ/広瀬由衣

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第四章 翼衣專店

第十一話 敵と味方【前編】

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 瑠璃宮内は飲食できる場所が限られているため、持って来た弁当を食べに移動しようと店を出た。
 しかしその時、品出しをしてくれていた劇団員がばたばたと駆け寄って来た。

「薄珂くん。護栄様が購入なさった服と、女性物は全部完売なんだけどどうする?」
「え!? もう!? 嘘でしょ? 三日分は持って来てるのに」
「でも、ほら」

 劇団員が薄珂を連れて控室へ入ると、確かに在庫が積んである場所はがらんとしている。

「帳簿見せてくれる?」
「はい」
「……うーん……」

 帳簿には販売した数量が書き込まれている。
 それを一つずつ目で追っていくが、薄珂は眉間にしわを寄せた。

(売上と在庫が合わない。まる二日分は残ってていいはずだ)

 今日は絶対に数が出ると踏んでいた薄珂は多めに在庫を持ち込んでいる。
 それを午前中で売り切るのなら、客が一人で最低五着は買わないと完売になることはない。
 けれど帳簿に記載されているのは今日の販売予定分が完売になる程度の数量だった。

(万引きにしては多すぎる。誰かが持ち出した?)

 ちらっと見ると劇団員はきょとんとして首を傾げている。
 今ここで管理不行き届きを詰めることはできるが、営業中に余計な騒ぎは起こしたくない。

(それに劇団が裏切ったとは思いたくない。犯人捜しは後にしよう)

 薄珂はぐっと唇を噛み、劇団員に笑顔を向けた。

「完売の札立てよう。明日はまた在庫持ってくるからそれも伝えて」
「了解!」

 完売の札が立つと客からは不満の声が聴こえてきたが、明日はもっと早く来ようと言ってくれていた。
 その声に一安心したが、それからも客が絶えることは無かった。再販分の予約や天藍たちが買わなかった商品にも手を伸ばしてくれるようになった。
 慌ただしく一日が過ぎ閉店すると、薄珂と立珂はううんと唸っていた。
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