8 / 13
ORDER01. 殺意の生クリーム
piece 7. 棗累の生クリーム
しおりを挟む
翌日、呼ばれていたわけでは無いけれど再びLizetteを訪れた。
すると店内には淹れ方を間違って濁った紅茶色をしたジャージ姿のリゼと、三角巾に割烹着というコーヒーなどという洋風な飲み物には縁が無さそうなリンが雑巾で床を拭いていた。
思わず後ずさりそうになると、ベリッと靴の裏が床に張り付いていたような音がした。
何度か踏み鳴らしてみると、どうやら床がべとべとになってしまったようだった。
「まさかまた生クリームが出たんですか?」
「そ。昨日来たお客さんが大変だったのよ。店中べたべた」
「実態化してると物理的な掃除が必要になるから困る」
「ホントよ。もう業者を呼んだ方が良いわねこれ」
業者とはまたお姫様に似つかわしくない言葉だ。何となくガッカリするので言わないでほしかった。
リゼはジャージを脱ぎ捨てて、後よろしくとリンに雑巾を押し付けた。
「行きましょう。庭は無事なのよ」
「でもリンさんを手伝っ」
「いいのいいの。あの子はあれが仕事なんだから」
ぐいぐいと手を引かれ、オーダーケーキの柱を通り過ぎた向こう側にある大きなガラス扉から外へ出た。
庭というから一般的な庭か、お店ならばカフェテラスのような事かと思いわくわくしていると、そこはわくわくどころではなかった。
景色はイングリッシュガーデンのようだったが、庭という言葉は適切ではない。もはやどこぞの城の庭園のようで、右手には薔薇園があり左手には湖かと思うほどの大きな池。
こんな場所が今まで話題にならなかったのが不思議だ。
「こ、これ、どんな広さですか……?」
「東京ドーム三つ分かしら」
「え!?」
「冗談よ。よく聞く例えだけど、分かりにくいと思わない?東京ドームで換算するの」
「は、はあ」
結局どのくらいの広さかははぐらかされてしまった。
そしてリゼに手を引かれ星屑のような輝きを纏う木立を通り抜けると、小さな宮殿のようなテラスが見えてきた。
お姫様姿のリゼにぴったりの場所で、リンと並んで立てば物語の表紙になる写真が取れそうだ。ジャージ姿なのが惜しい。
まるで夢の様な空間に見惚れていると置いてあるソファに押し込まれた。
「ここもお店の席なんですか?」
「違うわ。ここは避難場所よ」
「避難?」
「そ。ほら、生クリームに襲われると大変な事になるから」
「……そういう現実的な理由あんまり聞きたくないんですけど……」
「ふふ。世界を楽しむ心の余裕が出来たのは良い事ね」
にこりとリゼは微笑んだ。
リゼはよくこの微笑みを見せる。愛らしい微笑みはお姫様のようで、ドレスを着ていればお姫様そのものだ。
そしてあのオーダーケーキを作る魔法のようなひと時は心奪われずにはいられない。例え殺意を向けられていても、リゼとの時間はそれを上回る輝きがある。引きこもっていた事をもったいなく思うほど、リゼは魅力的だった。
(元気づけようとしてくれてるのかな)
リゼの言う事とやる事はよく分からない。
けれどまっすぐ受け止め手を差し伸べてくれる事は嬉しかった。これが店のサービスならば、きっとあっという間に人気店になるだろう。
知って欲しいような独り占めしたいような。悩ましいところだ。
「ここってお客さんていっぱい来るんですか?」
「もちろんよ。全人類がお客様だもの。だから品数豊富なの」
「でも売るわけじゃないんですよね」
「他人にはね。でも本人が必要としてた場合は売るわ。例えば……」
リゼはガラス棚からオーダーケーキを取り出した。
ホールではなく瓶ケーキで、生クリームと苺が層になっている。
「これは浮気した旦那さんを殺したい奥さんのオーダーケーキ。記憶が残ったら殺意は何度も生まれるから私達が廃棄するわ。でも旦那さんがテイクアウトして食べてくれれば、奥さんの殺意は受け止められ和解した――ような気持ちになり平穏に生きていける」
「……えっと、記憶が消えるんじゃないんでしたっけ」
「私達が廃棄したらね。ラッピングしてあるうちは受け取り可」
「ああ、そっか。それで保管期限があるんですね。その廃棄ってどうするんですか?ゴミ箱にポイでいいんですか?」
「それは――」
その時、瓶ケーキがバリンと音を立てて割れた。
中身が外へと飛び出してぐるぐるとうねりながら体積を増やしていく。それは何かを形作り始め、次第に葵よりも大きくなっていく。
みるみるうちに人の形になり、それは目をぎらつかせた女性へと転変した。
「人になった!?」
「これが賞味期限切れよ。旦那さんを殺しに行くの」
「そんな!どうするんですか!?」
「廃棄するのよ。リン!」
リゼは振り向く事もせず呼ぶと、トントンと樹々を蹴りながらリンが現れた。
お姫様のピンチに駆けつけるのは物語の騎士さながらだ。
しかしこれを一体どうしたら良いのかと葵が戸惑っていると、リンはたじろぐ事もなく剣を抜いて切りかかった。そしてその刃は女性の首を一刀両断し、頭は地面に転がりどろりと溶けた。
目の前で繰り広げられたのは殺人にも等しい光景だったけれど、毅然と見据えるリゼと芸術のようなリンの身のこなしの方が葵の心を魅了していた。
「廃棄完了」
リンは剣を収めようとしたけれど、ぴくりと何かに気付いて葵達の後ろをを睨みつけた。
「リゼ、客だ」
「立て続けに珍しいわね。今度は誰かしら」
言われてふり向くと、そこには一人の男が立っていた。
目を吊り上げて歯ぎしりをして、今にも襲い掛かって来そうなほど憎しみに顔を歪めている。
その顔を見て驚いたのはリゼでもリンでも無く葵だった。何故ならその顔は、今一番会いたくて会えない人間だったからだ。
「……累先輩……!」
「これが?ふうん。随分と急なお出ましね」
「二人共下がれ」
「ま、待って下さい!切らないで!」
「実態化しきってないから切れない。追い返すだけだ」
リンは再び剣を構えて切りかかった。
けれどその刃に切り裂かれる前に、生クリームは液体に姿を変えてさあっと何処かへ消えて行ってしまった。
「え?帰った?」
「帰ったわね」
「帰る事があるんですか?」
「迷ってるのかもしれないわね。殺したいほど憎んでても実際に殺すかどうかは別問題だもの」
「……でも累先輩でした。殺したいと、思ってるんですね」
「そうだけど、でも気にする必要無いと思うわ。弟さんが亡くなったのはあなたのせいじゃないんだし」
「でも私が連れ出さなきゃ亡くなる時に会う事はできた……」
「だからと言って殺していいわけじゃない。しかも裁かれない生クリームでなんて卑怯極まりないわ」
「でも……」
迷ってるというのは嬉しかった。多少なりとも何かしらの愛情が無ければ迷いはしないだろう。
まだ謝るチャンスはあるのかもしれない。許されるかどうかは分からないが、せめて一言話ができれば何か伝える事ができるかもしれない。
そう思うと力が抜け、床にへたり込んだ。妙に心がざわついてるような不安なような、色んな感情が渦巻いていた。そのせいか身体がひどく重く感じる。
「今日はもう帰って休んだ方が良いわ。もし家で襲われたらこれを掛けてここに逃げていらっしゃい」
リゼは棚からアンティーク風のガラス瓶を取り出した。
二百五十ミリリットルのペットボトルほどあるが片手で握れる程度だ。しかしその形は香水瓶のようで、ガラス瓶自体は雫型だが底と蓋は黄金の装飾が施されていて直立するようになっている。水晶のような石がはめ込まれていて、抜けば開く簡単な物だ。
瓶自体が宝石のようで、リゼの私室に並んでいる景色が目に浮かぶ。
瓶の中では柔らかそうなミルクティが揺らめいていて、水面にはきらきらと星屑が舞っている。
「これを掛るんですか?」
「ええ。生クリームは紅茶で溶けるのよ」
枕元に置いて寝るのよ、と瓶を受け取る手を両手で握りしめてくれた。
たった数分の出来事だったけれど、激しい疲労感に襲われ言われるがままに帰宅した。
すると店内には淹れ方を間違って濁った紅茶色をしたジャージ姿のリゼと、三角巾に割烹着というコーヒーなどという洋風な飲み物には縁が無さそうなリンが雑巾で床を拭いていた。
思わず後ずさりそうになると、ベリッと靴の裏が床に張り付いていたような音がした。
何度か踏み鳴らしてみると、どうやら床がべとべとになってしまったようだった。
「まさかまた生クリームが出たんですか?」
「そ。昨日来たお客さんが大変だったのよ。店中べたべた」
「実態化してると物理的な掃除が必要になるから困る」
「ホントよ。もう業者を呼んだ方が良いわねこれ」
業者とはまたお姫様に似つかわしくない言葉だ。何となくガッカリするので言わないでほしかった。
リゼはジャージを脱ぎ捨てて、後よろしくとリンに雑巾を押し付けた。
「行きましょう。庭は無事なのよ」
「でもリンさんを手伝っ」
「いいのいいの。あの子はあれが仕事なんだから」
ぐいぐいと手を引かれ、オーダーケーキの柱を通り過ぎた向こう側にある大きなガラス扉から外へ出た。
庭というから一般的な庭か、お店ならばカフェテラスのような事かと思いわくわくしていると、そこはわくわくどころではなかった。
景色はイングリッシュガーデンのようだったが、庭という言葉は適切ではない。もはやどこぞの城の庭園のようで、右手には薔薇園があり左手には湖かと思うほどの大きな池。
こんな場所が今まで話題にならなかったのが不思議だ。
「こ、これ、どんな広さですか……?」
「東京ドーム三つ分かしら」
「え!?」
「冗談よ。よく聞く例えだけど、分かりにくいと思わない?東京ドームで換算するの」
「は、はあ」
結局どのくらいの広さかははぐらかされてしまった。
そしてリゼに手を引かれ星屑のような輝きを纏う木立を通り抜けると、小さな宮殿のようなテラスが見えてきた。
お姫様姿のリゼにぴったりの場所で、リンと並んで立てば物語の表紙になる写真が取れそうだ。ジャージ姿なのが惜しい。
まるで夢の様な空間に見惚れていると置いてあるソファに押し込まれた。
「ここもお店の席なんですか?」
「違うわ。ここは避難場所よ」
「避難?」
「そ。ほら、生クリームに襲われると大変な事になるから」
「……そういう現実的な理由あんまり聞きたくないんですけど……」
「ふふ。世界を楽しむ心の余裕が出来たのは良い事ね」
にこりとリゼは微笑んだ。
リゼはよくこの微笑みを見せる。愛らしい微笑みはお姫様のようで、ドレスを着ていればお姫様そのものだ。
そしてあのオーダーケーキを作る魔法のようなひと時は心奪われずにはいられない。例え殺意を向けられていても、リゼとの時間はそれを上回る輝きがある。引きこもっていた事をもったいなく思うほど、リゼは魅力的だった。
(元気づけようとしてくれてるのかな)
リゼの言う事とやる事はよく分からない。
けれどまっすぐ受け止め手を差し伸べてくれる事は嬉しかった。これが店のサービスならば、きっとあっという間に人気店になるだろう。
知って欲しいような独り占めしたいような。悩ましいところだ。
「ここってお客さんていっぱい来るんですか?」
「もちろんよ。全人類がお客様だもの。だから品数豊富なの」
「でも売るわけじゃないんですよね」
「他人にはね。でも本人が必要としてた場合は売るわ。例えば……」
リゼはガラス棚からオーダーケーキを取り出した。
ホールではなく瓶ケーキで、生クリームと苺が層になっている。
「これは浮気した旦那さんを殺したい奥さんのオーダーケーキ。記憶が残ったら殺意は何度も生まれるから私達が廃棄するわ。でも旦那さんがテイクアウトして食べてくれれば、奥さんの殺意は受け止められ和解した――ような気持ちになり平穏に生きていける」
「……えっと、記憶が消えるんじゃないんでしたっけ」
「私達が廃棄したらね。ラッピングしてあるうちは受け取り可」
「ああ、そっか。それで保管期限があるんですね。その廃棄ってどうするんですか?ゴミ箱にポイでいいんですか?」
「それは――」
その時、瓶ケーキがバリンと音を立てて割れた。
中身が外へと飛び出してぐるぐるとうねりながら体積を増やしていく。それは何かを形作り始め、次第に葵よりも大きくなっていく。
みるみるうちに人の形になり、それは目をぎらつかせた女性へと転変した。
「人になった!?」
「これが賞味期限切れよ。旦那さんを殺しに行くの」
「そんな!どうするんですか!?」
「廃棄するのよ。リン!」
リゼは振り向く事もせず呼ぶと、トントンと樹々を蹴りながらリンが現れた。
お姫様のピンチに駆けつけるのは物語の騎士さながらだ。
しかしこれを一体どうしたら良いのかと葵が戸惑っていると、リンはたじろぐ事もなく剣を抜いて切りかかった。そしてその刃は女性の首を一刀両断し、頭は地面に転がりどろりと溶けた。
目の前で繰り広げられたのは殺人にも等しい光景だったけれど、毅然と見据えるリゼと芸術のようなリンの身のこなしの方が葵の心を魅了していた。
「廃棄完了」
リンは剣を収めようとしたけれど、ぴくりと何かに気付いて葵達の後ろをを睨みつけた。
「リゼ、客だ」
「立て続けに珍しいわね。今度は誰かしら」
言われてふり向くと、そこには一人の男が立っていた。
目を吊り上げて歯ぎしりをして、今にも襲い掛かって来そうなほど憎しみに顔を歪めている。
その顔を見て驚いたのはリゼでもリンでも無く葵だった。何故ならその顔は、今一番会いたくて会えない人間だったからだ。
「……累先輩……!」
「これが?ふうん。随分と急なお出ましね」
「二人共下がれ」
「ま、待って下さい!切らないで!」
「実態化しきってないから切れない。追い返すだけだ」
リンは再び剣を構えて切りかかった。
けれどその刃に切り裂かれる前に、生クリームは液体に姿を変えてさあっと何処かへ消えて行ってしまった。
「え?帰った?」
「帰ったわね」
「帰る事があるんですか?」
「迷ってるのかもしれないわね。殺したいほど憎んでても実際に殺すかどうかは別問題だもの」
「……でも累先輩でした。殺したいと、思ってるんですね」
「そうだけど、でも気にする必要無いと思うわ。弟さんが亡くなったのはあなたのせいじゃないんだし」
「でも私が連れ出さなきゃ亡くなる時に会う事はできた……」
「だからと言って殺していいわけじゃない。しかも裁かれない生クリームでなんて卑怯極まりないわ」
「でも……」
迷ってるというのは嬉しかった。多少なりとも何かしらの愛情が無ければ迷いはしないだろう。
まだ謝るチャンスはあるのかもしれない。許されるかどうかは分からないが、せめて一言話ができれば何か伝える事ができるかもしれない。
そう思うと力が抜け、床にへたり込んだ。妙に心がざわついてるような不安なような、色んな感情が渦巻いていた。そのせいか身体がひどく重く感じる。
「今日はもう帰って休んだ方が良いわ。もし家で襲われたらこれを掛けてここに逃げていらっしゃい」
リゼは棚からアンティーク風のガラス瓶を取り出した。
二百五十ミリリットルのペットボトルほどあるが片手で握れる程度だ。しかしその形は香水瓶のようで、ガラス瓶自体は雫型だが底と蓋は黄金の装飾が施されていて直立するようになっている。水晶のような石がはめ込まれていて、抜けば開く簡単な物だ。
瓶自体が宝石のようで、リゼの私室に並んでいる景色が目に浮かぶ。
瓶の中では柔らかそうなミルクティが揺らめいていて、水面にはきらきらと星屑が舞っている。
「これを掛るんですか?」
「ええ。生クリームは紅茶で溶けるのよ」
枕元に置いて寝るのよ、と瓶を受け取る手を両手で握りしめてくれた。
たった数分の出来事だったけれど、激しい疲労感に襲われ言われるがままに帰宅した。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。
梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。
ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。
え?イザックの婚約者って私でした。よね…?
二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。
ええ、バッキバキに。
もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる