銀塊メウのちょっと不思議で怖い話 短編集

銀塊 メウ

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通りすがりのお役人さん

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「聞いたかよ。隣のクラスの山田が
 昨日交通事故にあって重傷だってよ!」

「マジかよ!これで何件目だ~」

「4件目じゃなかったか?」
 
「確か交通事故は初めてだったよな?」

 ここ最近この学校の生徒が
 大怪我を負う事故が続出している。
 今までそんな事故が起きたことは
無かったから呪いや殺人鬼でも出たん
じゃないかって騒ぐやつもいる。
 そもそも死人は出てないけどな!

「そういや~もう一人居たじゃん
 確か………あれ?名前思い出せないや!
 赤(あか)なんとかだったと思うんだけど」

「いやーあれは違うんじゃね!半年も
前だし、今の事件と違って行方不明だ。
どうせ家出だろ」

 くだらない。なんでこんなことで
 盛り上がれるんだか?他にもやることは
あるだろ!

「悟(さとる)はどう思う」

「……そうだな~ほとんど原因は分かって
るんだし誰かが意図的にやってる感じも
ないらしいから偶然が続いた事故じゃ
ないかな~」

「ま~そうなんだけどさ!悟(さとる)は
 相変わらず現実主義だな~」

「うん?そうかな~」

 その後も同じような話を永遠と話している
 同級生を見て高校生になって、

…………くだらない。


「鐘の音」
 今日も終わった。どうしようか。

 僕はいつものように寄り道をして帰る。

 公園に行くか、それとも河原の方に行くか、

「そろそろ公園に行くのも良いかも
しれない」

 そんなことを考えていると、

「なんだあれ!」

 道のど真ん中、交差点のど真ん中に
 机と椅子、それに座ってる役所で働いて
いそうなスーツを着た男が居た。

 いくら人通りが少なくて車も殆ど通らない
 からって、そこにどっしりと机と椅子を
 用意して座ってるヤツなんているわけ無い。

 とにかくイカれてる奴かもしれないから
 目を合わさずさっさと横切るか、

「あ!? ちょっといいですか~」

 何故かそいつは僕に声をかけてきた。

 なんだよ!黙って座ってろよな。
 無視だ無視!

 聞こえない振りをしてそのまま通り過ぎる。

 男は頬をポリポリと2回掻き、

「待ってくださいよ。
田辺(たなべ)悟(さとる)さん」

「な!?  なんで僕の名前知ってるんですか!」

「うん? ま~良いじゃないですか
そんなこと」

「いや! 良いわけないですよ。どこで
知ったんですか、もしかしてストーカー
じゃないですよね」

「はい!はい! 大丈夫ですよ。私は貴方に興味
 ありませんから」

「は~(怒) 何だよ貴方、僕に用でも
あるのかよ!」

 僕はこいつのふざけだ雰囲気が気に入らず、
 らしくもなく怒鳴ってしまった。

「はい!そうです。だから呼んでます。」

 このおやじーー!!!

「何ですか」
  僕はむすっとした顔で取り敢えず話を
 聞くことにした。

  話を聞いて出来ればどこから情報が
洩れたか聞き出す! ただ一番の目的は僕に
興味を無くしてもらうことだ!

 僕はおじさんが座っている机の前で立つ

「あ~どうもどうもありがとうございます」
 軽くお辞儀する。

「えっとですね!まずは本人確認ですね!
 田辺(たなべ)悟(さとる)さん 17歳
 住所は日本、◆◆県、●●市▼▼町
▲▲番地……」

「おい待て、家まで調べたのか?」
 まさかそこまで調べていると思わず
 大声を出して聞いてしまった。

「うるさいですね。今仕事してるん
ですから邪魔しないで頂けます~」

「あんたふざけんなよ!こんなことして
 何が面白いんだよ!」

「いえ、面白くないですけど!仕事ですし!」
 おじさんは不思議そうな顔で首を傾げる。

イカれてる。
やっぱイカれてるはこのおやじ
 
 最初は話を聞こうかと思ったが、
 これ以上関わりたくないと思い。
 僕は帰ることにした。

「あれ~?どこに行かれるんですか?
田辺(たなべ)さん」

「…………………」僕は黙って帰り道の方に
歩いていく。

 無視していくとあのおやじは特になにも
言わずに見送るだけだった。

「なんか意外だったな色々言って止めに
来ると思ってたんだけど、ま~面倒くさく
なくて良かったわ。気分が萎えたから
今日はそのまま家に帰るか」

 さっさと家に帰るため少し早歩きで
歩いていると

「お帰りなさい!」

「え!?……………」僕は驚き放心状態に
なっていた。

 だって可笑しいだろう。僕は真っ直ぐと
 あいつの背中側の道を歩いて行ったのに
 なんであいつが真正面から現れるんだよ!
 瞬間移動でもしたって言うのか?

「田辺(たなべ)さんまだ終わってないんで
 こちらに来て頂けます」

「あんた今どうやってここに来た」

「…………普通に歩いて来ましたけど」
 キョトンとした顔(・_・)

「ふざけんなよ!そんなに早く移動
できるか!~」
 僕は詰め寄るようにおやじに怒鳴る。

「そう言われましても、そうなんですから
 仕方無いじゃないですか~」

 このおやじとぼけやがって!

  僕は再びおやじを無視して、おやじの
背後にある道を走っていった。


「うっそだろ…………」
 道の先にはまたおやじが座って手を
振っていた。

  少し気を落ち着かせるため目を瞑り
 落ち着いてから、あのおやじに声
をかけた。

「あんた、またいるんだな!」

「はい、仕事終わっていませんので!」

「どうしたら終るんだ!」

「まずは私の話を聞いて頂けます?」

「わかった!話せよ。聞いてやる」
取り敢えず聞かないと進むことが
出来ない。僕は腕を組み聞く態勢を取る。

「あ! 良かった~聞いて頂けます」
 いそいそと書類を出し準備する。

「ちょっと待って下さいね~…………
 よしよしと!お待たせしました。
 名前とか住所は先程言ったんで省略して、
 田辺くんは友達少ないと!」

「は~(怒) あんた喧嘩売ってるんですか!」

「え~だってそう書いてあるんですもん!」
このおやじ~ちょいちょいからかってる
のか、発言がいちいち鼻につく。

「すいません。気にしないで下さい。友達は
 人数じゃないですもんね。どれだけ親し人を
 作るかが重要ですもんね!」

 ニコニコしながら変なフォローをしてくる。

「そんなことはどうでも良い。
 あなたは僕に何の用ですか?」
 怒りを抑え出来るだけ冷静に声をかける。

「まだ田辺さんか確認している途中
 なんですけど………よっぽど合ってますし
 それでは本題の方に行きます!」

 書類のページを開く

「田辺さんは動物がお好きなんですか?」

 少しだけ眉をあげ、
「動物、特に好きでも嫌いでもない」

「そうなんですか?毎日のように公園とか
 河原で猫とか犬、あとカラスとか見に
 行ってるのに?」

 こいつなんでそんなこと知ってるんだよ。
 本当に僕のことを毎日ずっとつけてたのか?、
 もしそうだとしたらヤバいなこいつ、
 あのことを知っているんじゃ………

「確かに公園とかに行ってるけど、
 ただの気分転換に行ってるだけだよ。
 学校で勉強ばかりでしていると休みたく
なるんだ」

「う~ん、でも家にもたくさん猫とかい
ますよね。こんなに家にいるのに猫嫌い
なんですね~不思議です」

「ギリッ」と歯ぎしりの音がなる。
 さっきと違い冷たく鋭い目をする。

「田辺(たなべ)さん…なんか顔怖いですよ!」

 ここじゃダメだ! 勢いだけで動くな!
 まだ何の準備も出来ていない。
 せっかくなんだ楽しまなくっちゃ!

「あ~すいません。やっぱり猫好き
なんです。家でもたくさん飼ってます」

「そうですよね!そう書いてありますから
 あ~間違いじゃなくって良かった~」

 書いてある?あの書類に僕のことが、
 このおやじが知ってる訳じゃなくて
 他のやつが調べてるのか、だとすると
面倒たぞ

「あ! 田辺(たなべ)さん猫ちゃんですよ~
可愛いですね~」

 いつの間にか僕の足元に黒ぶちの
白猫がいた。

「ほんとですね。可愛い猫だ」
 猫を撫でようと手を出すと
「いっつあ~」手をおもいっきり引っ掛かれ
 血が出る、
「何しやがるんだ~」突然のことで
 感情を制御できず猫を蹴り飛ばして
しまった。

「ニャン」猫の口から血が垂れる。

「あ~! 可愛そうですよ!田辺(たなべ)さん
 そんな強く蹴っ飛ばしてー」

「し、仕方ないだろ!こっちは引っ掛かれ
たんだ。痛ってな~」

「あ、本当だ! 痛そうですね!」
 
 なんだよ。その興味無さそうな感じは、

「田辺(たなべ)さん、やっぱり猫嫌い
なんですか?」
 ぐいっと下から顔を覗き込んでくる。

「も、もう良いだろ! あんたはそんなことが
 聞きたかったのか?」

「い~え、続きですね。
 田辺(たなべ)さんはあの世とか信じてます?」

「あの世?死んだ後に行くって言う
 世界のことだよな~」
 急に訳のわからないことを聞かれ、
 僕はキョトンとした顔になる。

「そうですそうです!田辺(たなべ)さんは
 あの世とか信じてます?」

「いや、そんなのないですよ!
 非現実的過ぎて、
 そもそも誰も見たこともないし
 証明されていませんから」

「ふ~んそうですか、田辺(たなべ)さんは
信じないタイプ ですね!一応準備して
おいて良かったです。田辺(たなべ)さん
一応『地獄行き』予定なんで!」

「………………は! 『地獄』……」
 
 何度目だ!こいつに驚かされるのは、
 言ってる意味がわからん。
『あの世』『地獄』下らない。
 そんなあるかも分からないものなんて
 信じるだけ無駄で馬鹿馬鹿しい。

「あ! そろそろ戻って来る頃だと思ってま
したけどちょうど良かったです」

「えっ………」僕は開いた口が塞がらなく
なった。
 
  目の前に人の形をしたぼろ雑巾と勘違い
 するほどボロボロの人が犬二匹に引っ張られ
 道路に血の痕をつけながらこっちにやって
来る。
  なんだよ!この非現実的な光景は!

「彼なんですけど、日頃から犬を虐待
していたんですよ。それでね。このまま
だと『地獄行き』ですよって教えたら、
嫌だって言うんでね。じゃ~仕方ないんで、
現世で罰を受ければ地獄行きじゃなく
なりますよって教えてあげたら、彼は現世で
罰を受けたいと言ったので『罰』を受けて
頂いてます。

「………………………………」
  まだ現実を受け入れられない。
 これは夢か?そんなことあるはずない!
 でももしそうなら早く早く目が覚めろ。

「田辺(たなべ)さんはどうします?
 さっきも言いましたが、田辺(たなべ)さんは
『地獄行き』を予定されています。
『罰』を受けられますか?」

  淡々と僕に話しかけるがこいつ一体
何なんだ!


「田辺さん、あちらに準備は出来て
いますよ!」
 ちょいちょいと指を指し、その先に目を
向け僕は戦慄した。
 
 そこには猫、犬、その他にも鳩やカラス、
 虫までいる。

 僕はだらだらと汗が出て顔色も
 かなり悪くなっていく。

「うわ~多いですね~…………あ~なるほど」
 書類を確認してぶつぶつと言っている、
「田辺(たなべ)さんは小動物、虫を虐待
していたんですね!
 ダメじゃないですかそんなことしたら、
そんなこと小さな子供だって分かること
ですよ!」

 澄ました顔で当たり前のことを言う。
 そんなことは僕だって知っている。でも
 我慢が出来なかったんだよ。この探求心を!
 
「田辺(たなべ)さん『罰』を受け入れ
ますか?」

 僕は走った。そう逃げたんだ!
 僕は受け入れない逃げきってやる。
 
 走れ走れ走れ……………!?
 
「お帰りなさい。田辺さん」
 
 そうだここは出られない交差点だった。
 僕はそれでも、もう一度逆走する。

「田辺(たなべ)さん、『罪』には『罰』
なんです。逃げられません。現世であろうと
あの世であろうと、さ~どうされますか
田辺(たなべ)さん?ちなみに後でも良い
ですよ」
 
「へっ!?…………逃げても良いのか?」

「いえ、そうではありません!
『罰』からは逃げられません。
 ただし受けるのを後にすることは出来ます。
 あの世に行ってから『地獄』でですけど」

「ゴクッ」緊張から喉を鳴らす。
 
「後でも良いんだな?」
 
「構いませんよ!特に問題はありませんから
 ただ、『地獄』は大変ですよ。
 普通は生まれ変われるんですけど、
 最悪『地獄』だと生まれ変われませんから、
 後で後悔される方が多いんですよ~」

「僕にもその可能性があると!」

「さっきも言いましたが『地獄』行きは
確定です。その後に地獄の中でも罪によって
落ちる場所が違いましてね!田辺(たなべ)
さんは………………あちゃ~結構やばそうですよ。
 詳しくは言えないんですけどやっばぁ~い
です」

  書類を見ながら口に手を当て慌てたような
 仕草をする。

  僕はどうするべきだ!もちろん『地獄』
なんて行きたくはない。しかし………………
 
  先ほど罪を受けている男を見る。
ズタボロだ、血だらけで生きているだけ
じゃないか。たった犬2匹を虐待しただけ
だぞ。そんなことでこいつみたいになんか
なりたくはない。

「1つ質問させてくれ!『地獄』に行かない
 方法はあるのか?」

「う~んそうですね。無くはないんですけど、
 確実ではないのでなんとも答えづらい
 ですけど」

「それでも良い、教えてくれ!」

「分かりました。簡単に言いますと
 良い行いをすることです!」

「定番と言えばそうか、罪を良いことをして
 相殺するわけか!」

「はい、そんな感じです。ただし罪に対して
倍以上は良い行いをしないと相殺は出来ま
せんのでそこにはお気をつけ下さい」

「倍以上だと!………俺の場合どれくらい
なんだ?なんとかなるレベルか?」

「一言で言いますとかなり難しいですよ!
詳しくは言えないのですが、田辺(たなべ)
さん 結構殺ってますからね~きびしいー」

 アチャーみたいなオーバーリアクションを
取る。こいつまたからかっていやがる。

「くそ~なんか良い方法はないのか!
 とてもじゃないが返済できる気がしない」

「あ! ありますよ良い方法!」

「え!?そんなのあるのか……教えてくれ!」

「はい!もちろんですよ!田辺(たなべ)さんは
ついていますね!普通はそんなことしないん
ですよ」

「分かったから、早く教えてくれ!」

 「慌てない慌てない!えっとですね!
 分割払いですよ!」

「分割払い?………罪を分けて返済、
出来るのか?」

「そう言うことです。今なら現世で罰を
分割で一部受けてさらに世の中の為に
働けば、すべての罪が返済することが
出来るかもしれません。これは超お得なん
ですよ!」

 「確かにそうか!それなら罪を減らすのは
 不可能じゃない!これならいけるぞ!」

 俺はその時、希望の光が見えた気がした。
『地獄』から脱出する蜘蛛の糸を見つけた
気分だ!本当はこのおやじは神かも
知れないな。ま~それは良い。とにかく
これで俺は助かる訳だ。

「それで、どうします?田辺さん
 罰を分割で受けますか?」

「あ~もちろん受ける」

「分かりました。それでどのくらい受けます?
 半分
 三分の一
 四分の一

 どうしましょう?」

「う~ん…………」
 どうするかだ、もちろん半分やっておけば、
あとは楽だ。でもそれだけ厳しい罰が
待っている。俺の場合はそれなりに多い
だろう。それなら三分の一か、これなら
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なんとか………四分の一…………はないかこれ
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知れないし
 
「良し、三分の一にするか!」

「三分の一にされますか?分かりました。
 それでは………」

「ちょっと待ってくれ!」
 僕は答えてから一瞬先程引きずられた男が
 視界に入り恐怖する。

「確認したいんだが、あの人は
 分割しなかったのか?」

「いいえ、あの人にもお伝えして分割を
 使われましたよ!」

「一体どのくらい返済しようとしたんだ?」

「半分です!」

「!?…………」
 俺は恐怖した。あれで半分だと!
 犬2匹を虐待しただけじゃないか、
 俺がこのまま三分の一の罪を受けたら
 下手したらあいつ以上にボロボロの重傷に
 なるんじゃないか?…………確実にまずい!!

「な~おじさんまずは四分の一に変更
したいのとあとでもう一度、四分の一の罰を
受けることは出来ないのか?」

「うん?出来ますよ。事前に言って
頂ければ、 こちらで調整してまた
お伺いしますよ!」

「良し!!それで頼む」
 聞いてみるもんだ大事な選択だからな
 慎重に行かないと、こいつも欲張らずに
 もっと減らしておけば良かったんだよ!」

「それでは田辺(たなべ)さん四分の一の
『罰』を受けて頂きます。それでは
お待ちの皆さん来てください」

 おやじは手を振って呼び掛ける。
 犬、猫、鳩、カラス、その他色々な虫が
 ゆっくりとやってくる。
 これだけの数だとすごい迫力だ。
 しかし俺は四分の一の『罪』大丈夫だ!
 きっと耐えることが出来る。
 
「ぐぁ~」両足に犬が噛みついていた。
 一瞬手を出しそうになったが、ぐっと
我慢した。手を出したら罪が増えると
思ったからだ。あまりの痛みに立って
いられなかった。片膝を付いた時、猫が
飛びかかってきた。顔を引っかかれる。
それも一匹ではない。複数の猫が群がる。
僕の顔は血だらけになり真っ赤に染まって
いた。

 痛い痛過ぎる。痛みが次々と増えていく。
 これを耐えないといけないのか?
 くそ~振り払いたいが、
 こいつらすごい力で動けない。

「ズル…ズル…ズルズル」

「!?」これはもしかしてあいつと同じように
「ばぁ~よめりょ」
周りから「わんわん」「ニャニャ~」
騒ぎ出す。

「ズルズルズルズルズルズルズルズル」
 すごい力で引っ張られる。
背中が燃えるように熱い。地面との摩擦で
恐ろしいことになっている。さらに
こいつらは途中で引っ張り合い色々な
方向に引っ張るから全身がズタボロに
なる。

「………………………」
 一体どれくらい経ったのだろうか?
 意識が何度か飛んで時間の感覚がない。
 ただ一つだけ分かる。今は止まっている。
 やっと終わったのか?

「カサカサカサ「クチャクチャ」
「ぐぁ~いてぇ~」傷口に何かがいる?

 何とか首を持ち上げ身体を見ると
「!?」蟻、蜘蛛、蠅等様々な虫が
 俺の身体に群がってやがる。
「あ~ヤメロ~」今度は蜂が俺の目の前に
「いてぇ~…………目が目が~」刺し
やがった。
 
 くそ~いてぇ~いてぇ~よ~
 助けてくれ~~~(心のなかで強く叫んだ)

「田辺(たなべ)さん、
 ボロボロの雑巾みたいですね!」

 俺の身体はまさに満身創痍、
 腕や足はあり得ない方向に曲がり
 至る所が腫れ痛々しく膨れ上がっている。
 目も片方が恐らく失明している。

 さっきの人以上にボロボロで
 生きているのがやっとだ!

「こ…れの…どこが……四分の一なん…だ!」

「田辺(たなべ)はさっきの人より『罪』が
だいぶ多かったみたいですね!その場合
必然的に『罰』も重くなります。仕方ない
ですよ。田辺(たなべ)さんが受けるって
いったんですから頑張って下さい」

「身体の至る所が痛すぎる。
 もう叫ぶ気力もない!しばらくは入院生活に
 なるだろうが、俺は地獄に行かずに
済むんだ。

「おぉればだえぎった…………」
 ニヤリと笑う。


「あれ~あなたは良いんですか?」
 あのおやじがなんか言ってやがる。

  声のする方を見るとおやじに重なる
ように誰か人が居た。そいつはこちらに
歩いて来る。

 そいつは腹が抉れていた。
中には何も入っていない。生きてる人間
じゃない。
そして俺はそいつを知っていた。

「お前は!?」

「悟(さとる)くん、来ちゃった!
 まさか忘れてないよね? この罪をさ~」
 その男は最初に笑ったかと思ったら
 すぐに醜悪な顔に変貌

「や、やべろ、すばながった。
助べてぐれ~」

「い~や」
  男は田辺(たなべ)に跨がりボコボコに
殴る。しばらくするとポケットを
ごそごそとまさぐるナイフを出した。

「大丈夫だよ!僕は悟(さとる)くん
みたいな趣味ないから一回で終わら
せるね!」

「う~う~う~う~~~」首を振る
「グサ」喉に深々と刺さるナイフ
血が止めどなく流れ、田辺(たなべ)の
目から生気が失われた。

「お疲れさまでした。貴方も田辺(たなべ)
さんも残念ながら『罪』を返済せず死んで
しまいましたので、田辺(たなべ)さんには
地獄に行ってもらうしかありませんね!
あとで連絡しておかないと」

「貴方も人を殺しちゃったので地獄には
行ってもらいますけど、頑張れば転生は
出来ると思いますので頑張って下さい
赤木(あかぎ)さん」

 赤城(あかぎ)はお辞儀をしてスーっと
消えた。


「あーーーまたこんな所で仕事してる。
また部長が呼んでますので早く来て
くださいよ」

 …………………………『閻魔(えんま)係長』


「またですか?ノルマはこなしてますよ!」

「だからって勝手に現世で仕事しないで
下さい。私がいちいち課長に怒られるん
ですからね~!」

「分かりましたよ。行きますから
落ち着いて!」

 2人はス~と消えた。
 その後、田辺(たなべ)悟(さとる)の悲惨な
死亡事件がしばらく話題となった。


………………………………………………………………………

皆様の町にも気まぐれで閻魔(えんま)さんが
来てるかもしれませんね!

『罪』には『罰』現世だけではなく、
未来永劫の地獄の罰があなたを
待っている………かも!

悪いことをした覚えがある人は
どんどん良いことして『罪』を減らさないと
田辺(たなべ)さんみたいになっちゃ
いますよ!( ̄0 ̄)/
 
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