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第八章 リルとの別れ……魔王ガルドとの戦い

第235話 揺動部隊 地の大精霊ドルン

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◆チーちゃんの視点

 う~ん…ドキドキしてきました。
私達は揺動部隊王都ドライグの城壁の傍に
まで来たのですが、予定した時間まで
まだ少しあり、その待ち時間がより
緊張感を増してくるのです。

「よ~嬢ちゃん、そんなに肩に力を
入れてたら最後まで持たないぜ!
安心しろ俺達がついてる。何の問題も
ありゃしないさ。いくら竜人族が
相手でもな!ガッハハハ」

 ドルンさんが私の姿を見て励ましに
来てくれた。そうだよね。私には
ほとんど見えないけどここには
精霊が百人近くいるんだから、
そう簡単に負けない。

 私はほんの少しだけ落ち着いた。

「チーちゃん、何かあったか?」
「あ!ルビーさんいえ何でもありません。
大丈夫です」

 ルビーさんも私を心配して来て
くれたみたい。最初ルビーさんと
会った時は無表情で無愛想、この人と
やっていけるのかなって不安だったけど、
今では私の先生、料理に洗濯、家事全般が
完璧なスーパーメイドさんで色々と
教えてもらった。それに付き合いが
長くなって気がついたけど、よ~く見ると
微秒に表情にも変化がある。
特に蒼字(そうじ)さんにイタズラを
仕掛けている時が顕著に出ている。
本当に面白い
ちょっとお茶目なルビーさん。

「チーちゃん、あのクソ親父が変な言い
がかりをしたらぶっ飛ばすから言って!」
「アハハ、大丈夫ですよ。変なことは
言われていません。
ルビーさん頑張りましょね!」
「うん!ほどほどに頑張ろう!」
 ルビーさんらしい答えに私はクスッと
笑った。
 どうやら緊張はほぐれたみたい。

◆地の大精霊ドルンの視点
 
 とうとう来たわい、アストロンに
頼まれて来たがここまで手伝うつもりは
なかったんだかな~あいつの話を聞いて
おったら引くに引けんくなったわい。
まったく人と関わると面倒だが楽しくもある。
さていっちょ派手に行こうか!

「それでは行くか!火の精霊、
風の精霊力を合わせ
城壁に巨大な火球をぶつけろ~」

「ヒュー」
「ボッ」
「ボッボッボッボッ……」
 精霊達は十メートルを超える
巨大な火球を発現
それを城壁に向けて放つ。

……「ドカーン」大きな爆発音と
大量の煙を上げ城壁が崩れる。

「騒げ騒げ、こっちにおるわい兵士共」
 
 騒ぎに気がついた衛兵が数百人
こちらに向かってくる。

「良し。時間を稼ぐわい!水の精霊よ奴らの
足を止めさせろ」

 水の精霊は大量の水を生成、
突然水のないところに
津波が発生し兵士達を飲み込む。

「ほれほれ、そんなもんかい、
続け~地の精霊よ!」
 
 地面から石が射出、数百個の石が
雨のように兵士達を襲い大混乱。

「よ~しこのままの大勢を維持せよ……ん?」
 戦況は予定通りと思った矢先、精霊達の
攻撃を躱し、こちらに向かってくる猛者が
十数人こっちに向かってくる。

「そこまでは簡単にはいかんわな、
それ吹っ飛べや」
 ドルンはハンマーを振り上げ、
目の前の敵にぶつける。
「ドカーン」……まるで車に跳ねられた
ような衝突音で吹っ飛んでいた。

「ガッハハハ、いくら竜装でガード
してもわいの攻撃は防げんわ!カッハハハ」
 
 余裕余裕、たかが数十年しか
生きていないヒヨッコに遅れなどとらんわ。
十分やれると思った瞬間、またしても
状況が変化した。

「はぁー!?」
 あれは想定外にも程がある。
……ドラゴン、しかも
十体の地竜がこちらに向かって来る。

「どういう事だアストロン話に聞いて
おらんぞ」
 ついぼやいてしまった。
だがこれは不味い、地竜は動きは
それ程速くはないが力があり何より頑丈、
ダメージを与えるとなればワシでも一苦労。

「これは面倒になったわい!しかし
それでもやるしかない」

「うおぉぉーー」雄叫びをあげ
突っ込みハンマーを
振り下ろす。「ガキーン」……硬い

「ガアアアーー」地竜は痛みで叫ぶ。

 ダメージが与えられんわけでは無い。
そのままボコボコにしてやるわい!

 ハンマーを再び振り上げた瞬間、
凄まじい衝撃が襲う。……「サンドブレス」、
地竜は砂と石の礫を吐き出しワシに
ぶつけおった。……痛い、しかしワシは
地の大精霊、そのくらいは耐えれるが、
そうだったこいつらには遠距離からでも
攻撃する手段があった。

「これ以上は油断はせん!」
 吹き出しながらも体勢を立て直し、
即座に近くの地竜に突撃ハンマーを
横っ腹に叩き込む。地竜は
衝撃でひっくり返った。

 ん!?突然上空から敵が二人飛んで来る。
 ワシは反応出来ず腕を抑えつけられ倒れる。

「チッ、やってくれるわい!まさか
空が飛べる者が居たとは、しかし力不足では
ないか!」
 ふーんっと力任せに腕の拘束を解く。
抑えつけていた二人はそのまま飛び上がり
離れていく。

「お!?いかん!」
 いつの間にか地竜の足が真上に見え、
ドシーン……踏み潰される。

「お~……重い……踏み潰されてたまるか~」
 ワシは徐々に地竜の足を押し返す。
 しかし気がついた。それでは遅いことに、
なぜなら耐えるワシの横で大口を開けた
地竜が接近していた。

 いかんこのままではこいつに喰われる。
そう感じた瞬間だった。上空から
凄まじい勢いで落下、そいつは
地竜を上から殴り、一撃で倒したのだ!

「ドルンさん待ってて下さい。
直ぐに助けます!」

 声がした方を見ると銀色の軽装を
着たさっきの嬢ちゃんが地竜の上から飛び、
俺を踏みつけていた地竜に衝突、地竜は
ぶっ飛び縦に3回転して止まった。

「……………はぁーー?」
 ワシの口が閉まらなくなった。

 
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