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第五章 黒尽くめの正体、そしてアルヴィア姫の判断

第92話 さくらの追求を回避せよ。

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「お母さん、いつの間にブラックさんと
仲良くなったの?会ってまだ間もないけど、
親しくなる時間なんてなかったよね?」

「え、あ、ん、そうね……実はブラックとは
モン◯ンの話で盛り上がって仲良く
なったのよ!」

「モン◯ン?確かにお母さん好きで
良く蒼字(そうじ)くんの
家に遊びに行ってたもんね」

 再び一花(いちか)は固まる。

「えっとえっと後は笑笑バラエティーの
話で盛り上がって」

「あーーお母さん、あのお笑い番組
過きだもんね!蒼字(そうじ)くんが
毎度勧められて耳タコだよって
嘆いたし」

 再び一花(いちか)は固まる。

「えっとえっと……」

………「タ~イム」
 俺は横から入り一花(いちか)さんを
連れて少し離れる。


「一花(いちか)さん、わざと
……ではないですね!
テンパらなくて良いです」
 一花(いちか)さんがウルウルしている。
一応必死に誤魔化そうとしてくれた
ようだが、日頃から嘘をつかない
一花(いちか)は上手く嘘をつけない。
これ以上は一花(いちか)さんが可哀想
なので、俺が何とかしよう。

「オホン、さくらさん、実はですね……」

「ブラックさんもお母さんが
見えるんですね」

 喋っている途中に衝撃の発言を受けた。

 しまった!?考えてみれば、一花
(いちか)さんは幽霊だった普通の人
には見えない!
 
 
 術者であるさくらは、今は実体化させて
いないから霊能者とか神父、シスターとか
素養が無いと見えない。
その違和感に気が付かれたか
……仕方ないカードを切るか。

「は~仕方ありませんね!さくらさん
今からのことは他言無用でお願いします」
 急に話し方が変わりさくらは困惑する。
すると、ブラックの姿は一瞬で真っ白に
変わり服装が整い始めた。

「こういう事です!私はブラックであり
ホワイトフフッ、安直な名前ですいません」

「えーー」
 さくらは飛び退くように驚いた!

「ブラックさんが……ホワイトさんで
……つまり使徒様!!」

「あ、あ~使徒様ね、ま~そうね
……ゴホン……さくらさん、私は聖魔法が
使える霊能者でもあります。
つまり一花(いちか)さんが見えても
何の不思議もない!」

 ビシッと言ってやったぜ~完璧だ!

「なるほど、そう言うことだったんですね。
納得出来ました。それにしても驚きました。
ホワイトさんだったなんて、それでしたら
もっと大々的に世の中に伝えたほうが
みんなが安心出来ると思うのですけど」

「あ~そう考えますよね。でも考えて
みて下さい。私は異世界人です。つまり
本物の使徒様ではありません」

「えーー」
 再び飛び退くように驚く。

「えっえっつまり、嘘だったんですか?」

「そうです。セレーナ様に頼まれて仕方なく
やりましたけど、本当はあんな事やりたく
なかったのですが」

「………それではさっきのお母さんが
見える話はどうなるのでしょうか?」

「………」墓穴を掘った。
 
「ん、そこは私の固有スキルが影響して
います。私の固有スキルは聖魔法と
近い能力なんで」
 咄嗟についた嘘だから何とか次に
言われそうなことを考えておかないと、
俺は内心ダラダラと心の中で
汗をかきさくらの次の返答を待つ。

「ちなみにそのスキルを教えて
もらうことは?」

「出来ませんね、これを教えることが
命取りになるかも知れませんから」

「そうてすか……いえ、大変失礼な
質問をしてしまいました。
スキルを簡単には教えられませんよね」

「そうです。すいません」
 俺は軽く頭を下げた。

「頭を上げて下さい、
ブラッ……ホワイトさん?
どっちがいいのでしょ?」
 さくらはやや混乱しているので、
今はホワイトでお願いした。

「分かりましたホワイトさん、それで
お母さんの件は分かりました。それで
一つお願いがあるんですが
聞いて頂けますか?」

「お願いですか、私に何を?何にしても
内容を聞いてみないとなんとも……」

「私に修行をつけて下さい!」

「………え!?それはどうして何でしょうか、
まったく理由が分からないのですが?」

「それ程難しい話ではないです。単純に
今回の魔王軍との戦いをして、私達が
余りにも弱かった。このままでは
守りたいものが守れない!ホワイトさんは
それを可能にするだけの力を私達に
示してくれました。
だから私に修行をつけてください」
 さくらは頭を下げお願いした。

「ん~そう言われましても……」
 正体を隠しながら教えるなんて
面倒くさくってしょうがない。そもそも
俺が教えなくても王都の魔法使いとか
兵士とかの方が確実に上手く指導が
出来る。正直俺は本職とはいえん!断ろう。

「さくらさん悪いんだが……」

「ちょっと待った~………とっとっと!」
 一花(いちか)さんが空中で滑り込む
ように、俺の顔の前に通過し何とか止まる。

「何で断るのよ!」
 一花(いちか)さんが眉間にシワを
寄せて抗議、これは怒ってますな。

「仕方ないでしょ、正体を隠しながら
修行なんて難しいんです。それに俺が
やらなくてももっと良い適任者が
いると思うんですよ」

「ノー、アホですかあなたは!良いですか!
さくらが知らない男の人に手取り足取り
指導される姿を想像してみなさいよ!
最悪よ最悪!蒼字(そうじ)くんに
耐えられるの?」

 一花(いちか)さんが興奮してガミガミと
言っているが、正直確いい気分はしない。
もちろんそれは俺が気にする事ではないの
だが、嫌な気分になったのは事実。
やっぱり受けようかな……どうしようかな~。

「迷う必要性なんてないでしょー早く
受けなさい。早く受けろ~受けろってばー」

 一花(いちか)が俺の周りをグルグル
回りながら呪いの如く唱えるから考えが
まとまらん。
 そんな姿を見ていたさくらが再びあの
疑問に行き着くのはそう難しい事では
なかった。

「お母さんとホワイトさんって本当に
仲が良いですね?」

「「え!?」」
 俺と一花(いちか)は同時にさくらを
見る。
 また、なんて答えたら良いか
難しい質問を……

「一花(いちか)さんとは実は
祝福儀式の時にお話する機会
がありまして、その時から頻繁に話す
ことがあったのでそれなりに仲良くさせて
頂いています」

「そ、そうなのよ!偶然お風呂に行ったら
バッタリ会ってその時からちょくちょく
会ってるのよ」

 さくらの目が据わっている、
これは……怒っている
しかもかなり!

「お風呂……ホワイトさんはお母さんと
お風呂に入ったんですか!」

「え!?」俺の声がやや裏返る。

「もしかしてお母さんに変な事
してませんよね!」
 
 いかん!さくらから怒気が出まくっている。
日頃は冷静なさくらだけど一花(いちか)
さんの事になると何をするか分からない。
 一花(いちか)さんのアホ、余計なことを!

「ん?大丈夫よさくら、一緒にお風呂に
入っただけだから大体そんな度胸があれば
とっくにさくらに……「バシッ」

 俺は一花(いちか)さんの口を押さえ、
静かに耳打ちした。
「これ以上余計なことは言わないで」

 その後、鋭い目で睨まれるのを回避する
ため仕方なく修行を引き受けた。

  
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