上 下
97 / 256
第五章 黒尽くめの正体、そしてアルヴィア姫の判断

第90話 告白

しおりを挟む

「あの~………」
 さくらが恐る恐る声をかけてきた。

「助けて頂き有難うございました」
 さくらがお礼を言うなか、後ろにいる
陽菜乃(ひなの)は不機嫌な顔をしている。

「は~助けてくれて有難う!それで
あなたの目的は何なの、それに顔とか
見せてくれると嬉しいんだけど!」

 陽菜乃(ひなの)は攻撃こそしない
けど敵対心は消せてない。ムスッと
した顔をしている。


「さっきも言ったが顔は見せれん!」
 事前に準備していた認識阻害効果の
ある変声器を使い話をする。

「何で顔を見せられないのよ!
やましい事でもあるって言うの!」

「ちょっと陽菜乃(ひなの)」
 今の発言はまずいと思ったさくらが
止めに入り、その後ろにいるジャンヌが
剣を抜こうとしてキャンベルに
止められていた。

「そうだな……アルヴィア姫を攫った件に
関しては話をしてやる!」

 蒼字(そうじ)はキャリーちゃんに
ついて話をしながら、一切の自分の情報を
言わなかった。

「緊急事態なのは分かったけど、随分と
大胆な行動するじゃない。国のお姫様を
攫うなんて……アルヴィア姫の
ことを考えるとダメだけど嫌いじゃなわ」
 陽菜乃(ひなの)は何故か楽しそうな
顔をしている。確かに前からちょっと
危険そうな事とか好きそうだったな。

「お名前も教えて頂けないのですか?」

 ん!名前か~……どうでも良いか!

「ブラックと呼んでくれ!」

「は、は~」
 さくらは意表を突かれたような
顔をしていた。いかん!テキトウに
答えすぎた。

「な~んだ偽名しか教えてくれ
ないんだ!残念」
 陽菜乃(ひなの)はさっきまでよりかは
トゲトゲしさがなくなっていた。

「………なんか黒い格好をしてるから
ブラックなんだよね
ホワイトさんもそれが理由なのかも」

「…………」そこに行き着いてしまったか、
安易すぎた。

「何でもいいだろ!俺達は目的を果たした。
これで俺達も帰らせてもらう。それじゃーな」
 立ち上がりそそくさと帰ろうとしたが、

「お待ちになって頂けますか」

「うっ」……アルヴィア姫

「な、何でしょうか?」

「ま~そんなに嫌そうな声を出さないで
下さい。傷つきます」
 アルヴィア姫は不敵な笑顔で
微笑みかけてくる。もう面倒事は
ゴメンだ!これは……逃げるか!


「お待ち下さい勇者様!」

「え!?」
 さくらと陽菜乃(ひなの)が
驚きの声を上げる。

「アルヴィア姫、約束をお忘れですか!」

「分かっております。申し訳ありません!
これ以上は決してお話はしません。しかし
アインを含めた兵士達を納得させるには
最低限それを知る必要があるかと……」

 そばには数人の兵士とアインが
控えていた。

「は~確かにそうかもしれません!
それじゃ~勇者らしい事でもしま
しょうか!」

 倒れ動けなくなっている兵士達を
そばに行き、

『治癒の朱墨(しゅずみ)』をかけ
兵士達を治していった。

 ここで気をつけたのはさくら達に
見られない事術によっては見られると
疑われる恐れがある。


「本当にすごい力です。ここまで完璧に
治せるなんてそれにMPがどれだけ
あれはこんな人数……」
 アルヴィア姫とその横に居る
アインは呆然と見ていた。

「は~疲れた!アルヴィア姫、
取り敢えずイメージアップは
出来たと思うので、俺達は帰るが
もう良いかな!」

「いえ、最後に一つお願いがあります」
 
「ん?なんですか難しくなければ
良いですけど」

「私と結婚して頂けないでしょうか」

「………………はぁーーーなに言って
るんですか!!」
 蒼字(そうじ)は飛び退くように驚く!

「もちろん、形だけでも構いません!
私には強い繋がりが必要なのです!」
 アルヴィア姫は真剣だ!冗談の
雰囲気など一切無い。それはそれで問題だ!
なんて言って断る。大体何で
俺と結婚したいんだ!まずはそこからだな。

「オホン、アルヴィア姫、落ち着いて下さい。
いきなり過ぎて分からないです。何故結婚
しなければいけないのですか?」
 実際は落ち着けとか言って自分が
あたふたとして落ち着いてない事を
本人は分かっていない。

「私は国を代表する立場としては
余りにも無力です。どうすれば国の為、
国民の為になるかを考えての判断です。
勇者である貴方との結婚、そして
キャリーちゃん様の力この二つの力を
持って国の武力に大きく貢献することが
出来るのです」

 俺としてはこの話を聞いてかなり萎えた。
そりゃーそうだ会って間もない相手に
惚れる訳が無い。美人に言われて
やや舞い上がっている自分に気がつき
恥ずかしくなった。

「アルヴィア姫……あなたは真面目過ぎ
です!自分をもっと大切にしなさい!
それと先程も言いましたけど魔王軍が
襲ってきた時はご協力する事は
お約束するので良いでしょ」

「それだけではダメなのです!
周りが納得しません」


「はぁーじゃ~言い方変えるわ、
あんた俺を道具にするつもりか?、
言い方がきついかもしれないが、
そんなのはゴメンだ!俺はちゃんと
好きになった人と結婚したい」

 アルヴィア姫は苦々しい顔をしてから、
フッと顔が変わった。

「分かりました!惚れられるように
努力します!」

 ちがーう真面目か!いや真面目だ、
真面目過ぎる。アルヴィア姫は相当な
努力家の人な気がする。諦めることを
知らなさそうだ、これはめんどくせ~

「アルヴィア姫、微妙に伝わって
いなさそうですが、今日は疲れたんで
帰って良いですか?」

「分かりました。お止めして申し訳
ありませんでした。
それではサマリンに戻りましょう」

 この時俺は疲れて考えを放棄していたが、
波乱の幕開けとなる事を想像することは
そう難しくなかった。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

元英雄 これからは命大事にでいきます

銀塊 メウ
ファンタジー
異世界グリーンプラネットでの 魔王との激しい死闘を 終え元の世界に帰還した英雄 八雲  多くの死闘で疲弊したことで、 これからは『命大事に』を心に決め、 落ち着いた生活をしようと思う。  こちらの世界にも妖魔と言う 化物が現れなんだかんだで 戦う羽目に………寿命を削り闘う八雲、 とうとう寿命が一桁にどうするのよ〜  八雲は寿命を伸ばすために再び 異世界へ戻る。そして、そこでは 新たな闘いが始まっていた。 八雲は運命の時の流れに翻弄され 苦悩しながらも魔王を超えた 存在と対峙する。 この話は心優しき青年が、神からのギフト 『ライフ』を使ってお助けする話です。

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。 小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。 本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。 お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。 その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。 次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。 本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...