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第四章 新たな仲間 

第72話 美しき化け物

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「あら、もう来てくれたの?」
 セレーナ様が二人に声をかける。

「ねえさん、いくら何でも不用心過ぎるよ。
あんな事があったんだからじっとしててよ」
 細身で長身の男がセレーナ様と話を
しているけど知り合い…だよな。

「セレーナ様、この方達はどなたですか?」

「あ、ごめんね、久しぶりだったから、
話し込んじゃって、この二人は私の弟よ!」
 
「えっ!?」俺は驚き改めて二人を見る。
二人共40代後半くらいのイカしたおじさん
に見えるけど。

「ん?そういえば」
 セレーナ様って見た目は30歳くらい
だけど、実際は50歳オーバーだった。

「蒼字(そうじ)なんか変な事考えて
ないかしら?」
 ついついじーっと見てしまい変な目で
見てしまった。

「ま~いっか!みんなに二人を紹介
するはね。こっちのガタイの良いのが
レットン、そっちの長身はハーストン、
二人には私の護衛のために急遽来て
もらっての」
 
 俺は二人を見て成る程と思った。
見ただけで分かる。かなりの実力者だと、
この二人ならそう簡単には遅れは取ら
ない。確かに安心してセレーナ様を
任せられそうだ。

「ねえさん!なんだこのガキは、まさか
こいつらとダンジョンに潜っていたとか
言わないだろうな!」
 レットンが俺達を凄い目つきで
威圧するように見る。

「え~、そうよ!それが何か問題でも?」

 ハーストンがその言葉に反応して前に出る。
「ちょっと待ってくれ。ねえさんは
なに考えているんだ!前から言ってるけど
もう少し自分の身を心配してくれ
こんな子供とダンジョンに潜るなんて、
どれ程危険な事か分かっているよね!」

 レイチェルはムカッとした顔をして、
リルは威圧され顔をしかめる。そして
俺はごもっともと納得する。

「何を言ってるの?私は大丈夫だし、
ここにいる人達はそんなにヤワじゃな
いわ。ハーストン、個人の考えだけで
決めつけるのは良くないわよ」

「話をすり替えないでくれ、
こんな子供にねえさんを……」

「ハーストン!」
 セレーナはハーストンが話している
途中で止める。

「それ以上言うと怒るはよ!二人共、
ここにいる人は私の命の友人であり、
パーティにも入れてくれた大切な方達
です。侮辱するようなことを言うのは
許しません!」

「ハーストン」
「分かってるよ!にいさん」

 レットンがハーストンに声をかけ、
ハーストンが話をする。

「悪かった。確かに強いのか弱いのか
見た目で判断するのは良くなかった。
謝罪する。すまなかった。これで良いかい
ねえさん」

「はい、良く出来ました。それじゃ一度
城に戻った方が良さそうね」

「そうしてくれると助かるよ」

 セレーナ様は俺達の方に向き直し、
挨拶をしてまた後でね~と言って
二人と共に行ってしまった。


 さて俺達は……「帰るか!」


………………………▽
 
「ねえさん、本当に心配したんだからね。
やっぱり他のやつには任せられないよ!」

「ごめん、ハーストン」

「しかし、今回の事は裏で手を回され
とったみたいだ俺達を遠ざけねえさんを
狙う計画だった。他にも
邪教徒が混じっておったわ」

「そう、ありがとうレットン、今回の事
を踏まえて何かしらの対策打つ必要性が
あるわね」

「ねえさんはいつも無茶し過ぎだよ!
上級悪魔を多数相手にして疲労してた
のに、勇者の祝福なんて他の暇そうな
聖女に任せとけば良いんだよ」

「確かに、デーモンロードを相手に
したそうだが、ねえさんが万全な状態
ならともかく、かなり部の悪い戦いに
なったはずだ。良く無事に戻って
これたな!」

「ま~ね、使徒様が現れたから」

「そうだ!それだ!それは事実か!?」
 
「落ち着いてよにいさん」

「お、おう、悪いついな!」

「フフッ、レットンは相変わらずの
使徒様ファンね」

「仕方ないだろ。子供の時からの憧れは
案外大人になっても変わんなかったん
だよ!テンション上がっちゃって」

「どうせねえさんのハッタリだろ」

「なんだよ、そんなのか」
 レットンはガッカリとする。

「そうね、確かにあの時はハッタリの
つもりだったけど、今は本当に彼が
使徒様かもしれないと思ってるけど」
 セレーナは小声で言って笑顔で
歩いて行った。
 
 
……………………▽

 それから数日後、ハワイラン草を
ラン丸薬に生成してくれる薬師を探し
生産しまくりである。ラン丸薬は一個
作るのに意外と時間がかかるので、
商業ギルドにお願いして薬師を片っ端から
紹介して貰った。おかげでかなりの量が
すでに完成、あとはどうやって聖神教会に
送るかだかあれからセレーナ様からの
連絡はなく、こちらから連絡をいれると
変に怪しまれないか不安でしていない。

 どうしたものかと考えていると、

「号外、号外だよ~」
 ん?なんだろう、俺は騒ぎの中心地に
向かうと、「えっ!?」号外を配っている人
に紙を貰い。見るとそこには聖女セレーナ様
が明日帰国する情報が載っていた。
 これは唐突だな。急ぎの用でも出来たか?
ま~それは良いけど、ラン丸薬の件は
今日中に話しておかないと、どうするかな……


……………………▽

 これが一番騒ぎになりにくいはず、
 俺は白ずくめの男もとい使徒様として
城に入る。門番の人にかなり怪しまれたが
事前に通行許可を判断する特別なメダルを
貰っていたので難なく通して貰った。
 そのまま、セレーナ様が会ってくれると
いうことで、兵士の方に案内され着いたのは
豪華な一室。

「ごめんなさい、わざわざ来てくれたのね」
 豪華なソファに座り書類に目を通している
セレーナ様、そしてその両脇にセレーナ様の
弟さんが居る。

「なんだこの怪しさしかない奴は」
 レットンさんからものすごく睨まれる。

「にいさん、またねえさんに怒られるから
やめなよ。変な事したら殺せば良いん
だから」
 ハーストンさんは笑顔でえらく物騒な事を
言いやがる。こえ~……

「二人共席を外してくれない」
 
「出来るわけ無いだろねえさん。話は
ここでするんだ」

「もうちょっとくらい良いでしょ」

「ダメだ!悪いがこの人が敵でないと
判断出来ない」

「は~ハーストンは頭固いわね!」
 ため息をついてセレーナ様は立ち上がる。

「例の件よね!ごめんなさい。見たら分かる
と思うけど自由が利かなくてね。今は
ゆっくり話をするのも難しいから
悪いんだけど………ここに届けてもらえる
かしら」
 セレーナ様は紙を取り、さらさらっと
書くとそれを渡してくれた。そこには
ラン丸薬を運搬して欲しい
住所が書かれている。

 俺は無言で頷きそのまま一礼して部屋を
出ようとドアに手をかけると、「バン」っと
レットンさんにドアを押さえられた。
 
 俺は何でこんな事するの?と思いつつ
レットンさんを見る。
 
「な~そんなに焦って帰らなくて良いん
じゃないか!使徒様よ!」
 これは、俺……絡まれてる?

 俺はセレーナ様の方を向き、なんとか
して下さいと目線を送る。

「レットン、どういうつもり」

「どうしても許せなくてな!
使徒様が穢れる」
 何このおっさん何言ってるの?

「ごめん、レットンは使徒様のファン
なのよ!あなたが使徒様の偽物だと
思ってら居ても立っても
居られなくなったみたい」

「ねえさん余計なこと言うなよ!
恥ずいだろが」
 レットンさんは少し顔を赤くしている。
意外と可愛い人だ。

「……レットンさんすいません、色々と
事情がありましてこれからは自粛しますね」

「つまり偽物だと認めるのか?」

「ま~好きでやってたわけじゃないんで、
たぶんこれが最後になると思いますよ」

「は~良いだろう。何にしてもお前は
ねえさんの命の恩人らしいからな、
今回は見逃そう」
 ふ~良かった!許してくれないかと
思ったぞ。

「じゃ~それでは失礼しま~す」
 改めてドアに手をかけ開けると、
「ガン」っとハーストンさんに足で
ドアを止められた。

 今度は何なのよ~
 俺はジトッとハーストンさんを見る。

「少し聞きたい、あなたが使者様とは
思っていませんが、話によると
エクスキャリバーを扱ったそうですね。
あなたは何者です!」

「………さ~ただの一般人でいたい人です
けど!」

「……………」俺意外の3人は無言になり、
「クッ……アハハハ、も~うどこにこんな
一般人がいるのよそれは無理な願望よ!」

「えーー俺は静かに暮らそうと
思ってたんですよ!」

「うふふ、ムリよ!私がそうさせないと
思うから」

「そっとしておいて下さいよ」
 俺がガックリしている傍で笑うセレーナ様

「分かりました。あなたについては
後々教えて頂こうと思います。
今はねえさんを守る事に専念しましょう」
 ハーストンは顔に手を当てながら今回は諦めて
くれたようだけどそのまま諦めて欲しい」


……………………▽
 
 は~終わった。
 あの二人プレッシャーかけ過ぎだよ。
疲れた……

 俺は通路を歩いていると、目の前から
一人の女性が護衛を連れてこちらに
歩いてくる。豪華な服、きっと位の高い人
なんだろうと思いつつ見た瞬間に
わかる程の絶世の美女……そして

……………………………………………………………………………
 なんだ!この化け物、これが人なのか?
……………………………………………………………………………


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