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第四章 新たな仲間 

第70話 ジャンヌの誓い

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「終わったのですね」
 セレーナ様がこちらに歩いて来た。

「セレーナ様、腕は大丈夫ですか?」
 腕を見ると死のオーラは消えており、
「大丈夫よ!ほら!この通り」
 腕を上げ手を動かし治っていることが
分かった。
「さすがはセレーナ様、欠損した腕を
治す魔法が使えたんですね。良かった」
 俺は心の底からホッとした。

「でも、もうMP(魔力量)がなく
なったわ!今は早くベットでゆっくりと
眠りたい」
 セレーナ様は清々しい顔で笑っている。
彼女が上がれて嬉しいんだよな!

「蒼字(そうじ)、君は凄いよ!
やっぱり私の目に狂いはなかった!
彼女を助けてくれてありがとう」
 レイチェルは彼女を救えなかった
ことが心残りだったみたいだからな、
もしかしたら今回の目的はこっちが
メインだった可能性すらある。

「それにしてもさっきので階層主まで
消えちゃったね」
 レイチェルが指差す方向を見ると、
リッチさんが居ない。やり過ぎた
ようだな。

「あら?……アランさんも居ないわ」
「えっ!?」セレーナ様に言われて
周りを見るがアランさんがどこにも
居ない。

「…………もしかして、俺……やっちゃった」
「まとめておっさんも行っちゃった
みたいだね!」
 おでこに手を当て見上げるレイチェル

 あ~アランさんすいません!力加減
とか考える暇なかったんです。
ごめんなさい~~

 俺は呆然と天井を見上げていると、
「良いんじゃないかしら、きっと
気持ちよく上がれたと思うわ。出来れば
お別れの挨拶はしたがったけど」
 セレーナ様に怒られるかと思ったけど、
その点は良かった。

 リルがこちらにトボトボと歩いてくる。
何故か元気がない?

「蒼字(そうじ)さん…ごめんなさい。
私…怖くて動けなかったです」
 なんだ、そういう事ね!まったく
リルは気にし過ぎなんだよ。

「リル、もう終わった事だし、
そんな事で落ち込まなくていんだよ!
元気出せよ!」
 俺はリルの頭を撫でるために手を
上げようとしたが、腕に負荷がある。
何故だ?

「蒼字(そうじ)……?
    
    手に……|手がある??」

 セレーナ様の言っている意味が
分からん。取り敢えず手を見ると
俺の手を握る手がある。普通は完全に
ホラー、絶叫が出るレベルだが
俺は一応慣れているから大丈夫、大丈夫。

 手に光の粒子が集まりだんだんと
人形に固まっていく。そして強烈な光を
発し目をつむり、次に目を開けると、

「あれ?失敗してしまいましたか?」
 目の前には仮面の女が戻って来ている。

「すいません……戻ってきちゃいました」
 申し訳無さそうに仮面の女は頭を下げた。

……………………▽

「つまり上がらず戻ってきたみたい
ですけど、何で?」

「それはちょっと言いにくいです」
 何故か顔を押さえてクネクネしている。
ただし片手は繋っぱなし、どうも
この手が俺と彼女の縁となったようで、
今離すと上がってしまうらしいので
仕方がない。

「あの!私を使役して下さい!」

「…………は!?」
 俺は驚き呆然としてしまう。確かに
霊能者である俺なら式神として契約して
風太のようにこちらの世界に呼ぶことが
出来るけど……

「いや~それって良いのかな。恩を感じて
言ってくれてると思うんだけど、そこまで
気にしなくていいよ………え~っと
そう言えば名前聞いてなかったね。
俺は蒼字(そうじ)君は?

「すいません自己紹介をしていません
でした。私の名前はジャンヌ・クルス、
元ですが聖女をしていました」

「あ~やっぱり聖女だったんですか、
セレーナ様あってましたね」
 俺がセレーナ様の方を向くと、
今まで見たことがない程驚いて
ワナワナと震えている。さらに
「ありえません」っと
言っておられる。どういう事?

「お願いです。私を使役して下さい!」
 必死にお願いしているけど、女性を
使役するのはかなり抵抗があるんだよな~

「ん~~~」ジーーっと見つめるられ、
たじろぐ俺

「良いんじゃないか、お前は式を扱えるのに
あまり増やそうとしないからな、昔なら
バンバン式神にして使役していたぞ」
 風太が突然現れ、仲間でも増やしたい
のかな?

「あ、風太先輩宜しくお願いします!」
 犬に向って頭を下げるジャンヌ、
そして予想以上に嬉しそうにニヤニヤ
する風太。

「分かったよ!ジャンヌ、嫌になったら
いつでも言ってくれ契約は解除するから」
 俺は諦めた。

「はい、やったーー」

「それじゃー始める!手を出してくれ!」
「はい!」ジャンヌは手を前に出し
その手を俺は握った。

「俺とジャンヌは手を繋ぐ事が縁になり
強い繋がりを作った。だからここに
契約紋を書く。

 俺がジャンヌの手の甲に筆を当てると
魔法陣が展開され、

「ジャンヌ…お前は俺の式となり、
俺を助けてくれて」
 俺は友達を作るように軽い言葉で
契約を求めたかった。

「…………はい、宜しくお願いします」
 その問にジャンヌは笑顔で答えてくれた。

 その瞬間魔法陣は収縮、ジャンヌの
手の甲に刻まれた。

「アッアッアッアーー」
 セレーナ様が大声で叫び腰を
抜かしている。本当にさっきから
らしくない。何を驚いているんだ?

「大丈夫ですか?セレーナさん」
 ジャンヌがセレーナに手を差し伸べる。
「あの~本物なのでしょうか?」※小声
「それはどのような意味でしょうか」
 ジャンヌは首をかしげる。

 二人は見つめ合う形で固まる。
 そこでレイチェルが「腹が減った」と
言って五月蝿かったので、食事をする
ことにした。

 ジャンヌも俺の式として契約した
おかげで当たり前の如く実体化して
食事のお手伝いをしている。
 しかも意外と手際が良く楽しそうに
調理をしている。

 改めて見るとジャンヌは凛とした
美しさを持った女性、美しい白髪の
ロングストレートの髪、目がパチリとして
鼻筋の通ったはっきりとした顔立ち、
格好はシスター服に似た白と黒を貴重
とした法衣を着ている。少し気になるのが
身体の動かし方が上手い、これは何か
しら武術を学んでいたと思う。

「なんにしても助けられて良かった」
 俺はホッとしながらジャンヌを見て
いると、
「それでお前は大丈夫なのか?人の心配
してばかりだと今度は俺が心配て過労死
してしまうぞ」
「風太か、思っていたよりはなんともないよ。
恐らくこれはただの目印みたいなもんだから」
 
 手の平に赤い丸印が一つ、それ程
目立つ訳では無いがこの印から感じる
気配、間違いない。邪悪アスタローネと
同じ、ジャンヌと繋がった瞬間に
聞こえた。『お前、美味そうだな』だけで
呪印を付けられるとは迂闊だった。

 俺は風太と呪印について話をして
いるさなか、別の場所でも深刻そうに
話をしていた。

…………………▽

◆ジャンヌの視点

「あの~宜しいでしょうか……」
 セレーナは恐る恐るジャンヌに声を
掛ける。

「あ、はいセレーナさん、
どうされました?」
 鍋のスープを混ぜながら笑顔で答える。

「ジャンヌさんは初代様なのですよね」

「初代?……私が亡くなってどれ程経つの
でしょうか?私は分かりません。きっと
セレーナさんも女神様から
使命と聖女の力を頂いたのですよね」

「そうです……そうですか!考えてみれば
ジャンヌ様は自分の事をご存知ないの
ですね。貴方様は世界を救った救世主と
して語り継がれています。私達聖神教会では
神にも等しい存在であり崇めるべき……」

「セレーナさん、やめませんか」
 ジャンヌが途中で止める。
「ジャンヌ様?」

「セレーナさん、今の時代の事を何も
知りませんが、今の私は蒼字(そうじ)様
の式です。聖女ではもうないのです。
ですから様付けは不要ですので」

 セレーナは非常に困った顔をして、
「し、しかしですね私達にとっては……」
「お願いします。私はただのジャンヌに
戻りたいの、死んではいますけど、
今は生前の時より生き生きして
楽しいの不思議……」

「あ~でもでも」
 セレーナは頭を抱える。
「ご、ごめんなさい。私のワガママで」

「いえ、いいんです。気持は良く分かり
ます。聖女という立場はとても窮屈
ですから……しかしお許し下さい。
出来るだけ善処しますけど、
わたし……ファンなんです!」

「ほぇ?」
 私はつい変な声が漏れてしまいました。
セレーナさんが私をギュッと抱き
しめたのです。とても大きな胸で
苦しかったですが、久しぶりの
人との接触に嬉しく思いました。


「食事が出来ました。皆さん集って
下さい」
 私は皆さんに食事を配り、おかわりが
直ぐにできるように鍋の横で待機
していると、

「ん?ジャンヌも一緒に食べようよ!
おかわりは自分で取るから気にしないで
いいぞ!」
 蒼字(そうじ)様は優しく声を
かけてくれた。しかし……

「蒼字(そうじ)様、私の事は気に
せずお食べ下さい」

「いやいや、気を使わなくていいぞ!
ジャンヌ、あと様付けはいらないから、
むず痒くならやめてくれ」
 私はどうすればよいか迷っていると、

「ジャンヌさん、さっき私に言ったこと
覚えてます。様付け禁止です!」
 セレーナさんが笑いながら説得する。

「しかし、私は蒼字(そうじ)様の
式ですが」

「いいんだよ!適当で!蒼字(そうじ)の
式は自由がモットーだ!基本だぞ後輩!」

「おい、先輩(フウタ)、後輩(ジャンヌ)
に変な事教えるなよ!」
 あれ?私の常識は今の時代とは違う?
蒼字(そうじ)様はご主人様です。
普通にお話しても宜しいのでしょうか?

「ほら、ご飯も一緒だこっちに来いよ!」
 蒼字(そうじ)様が私の手を取り席へ
と移動させる。あ~私は死んでいるのに
ドキドキします。私は今は
生きているのかもしれません。
 そんな事を考えているといつの間にか
蒼字(そうじ)様の横に座りスープの
入った器を持っていました。

「食べろよ!美味いぞってジャンヌが
作ったんだけ」
 アハハハ~っと笑う蒼字(そうじ)様、
私は自然とスープを口に入れ飲んでいた。

「美味しい……とても温かい」
 感動で目に涙が浮び、身体と心が
温まっていく。

「ジャンヌは料理上手だな!こっちの
野菜炒めも美味いぞ、今後より食事が
楽しみになったな、レイチェル、それ
俺のだからおかわりしろ!」
 褒められた…凄く嬉しい!
 
 私が舞い上がっていると、
「後輩、本当に美味いぞ!ただし
俺の時はもう少し冷ましてくれ、
俺は犬だが猫舌だ!」
 式神の風太先輩、そうだ!聞きたい
ことがあった!

「風太先輩、あの~何で私達食べられる
んですか?私達は幽霊ですけど」

「ん!これは蒼字(そうじ)の式に
なったからな俺達はこちらの世界に
肉体を実体化出来る。俺はこっちの世界
では当たり前だと思っていたが違うのか?」

「はい、私の知る限りではあまり聞いた
覚えがありません」

「それならラッキーだったな!
蒼字(そうじ)の式になれて」
 私は心底そう思いました。
蒼字(そうじ)様、私は一生着いて
いきます。あ!私は死んでいました。
それでは改めて、死んでも着いていします。
 

  
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