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第四章 新たな仲間 

第69話 仮面の女の秘密

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  突如現れた真っ白なドレス?法衣?の
様な格好をした仮面をつけた女性、
何も喋らず、ただそこに佇む。

 俺はその女性を見て今ままで感じた
ことのない存在感とプレッシャーを感じ
動くことが出来なかった。

 仮面を付けた女性はゆっくりとこちらを
向き笑顔になる。
 不気味だ!あの仮面はただの仮面では
なくその者の表情を作ることが出来る
ようだ。

「蒼字(そうじ)こいつはただの悪霊
とはわけが違う。悪魔もしくは
邪神かもしれん」
 風太はその気配から判断、俺も同意見だ!
こんなやつ見たことがない。

 白い純粋なオーラなのに邪気や殺気を
纏っている。これは調べる必要があり
そうだ。

『ステータス 転記』………「ぐっ」
 そんな!?術が弾かれた。こんなの
初めてだぞ。

 俺が動揺していると仮面の女が動き出し
強力な念動力が放たれた。
 
 リル、レイチェル、セレーナ様が吹き
飛ばされこのままでは壁に叩きつけられる。
 俺は墨帯を使い3人に巻き付け前方に
力をかけて激突を避けた。

「風太!3人を頼む!俺は行く」
 俺は走り出し突撃、『一文字 一閃』
の直書きで威力を上げ斬撃を繰り出す。
しかし、その時、意外な
人物から制止を受けた。

「蒼字(そうじ)ダメだ!
攻撃しないでくれ!」
 レイチェルが叫ぶように声を上げた。
俺は意味が分からず、攻撃を中途半端に
繰り出してしまった。攻撃は仮面の女に
届かず、障壁に弾かれ
俺は吹っ飛んでいった。

「だぁ~ーったった~」
 なんとか壁に激突するところを
両足で踏ん張り耐えた。
 そのまま自重落下して着地。

「どういうつもりだレイチェル、
何で止めた!」
 俺は怒りの目線をレイチェルに向ける。

「ダメなんだ!あの子は助けを
求めている。私達じゃ無理だったけど
蒼字(そうじ)達ならきっと助けられる」
 真剣な眼差しでレイチェルを俺を見る。

 これはただ事じゃないな。レイチェルの
真剣度合いが全然違う。話を聞くべきだな。

「レイチェル、分かってるのか、
相手はかなり強い、まともにやっても
負ける可能性がある相手だ!
迷っていたら全滅するんだぞ!」

「大丈夫だよ!きっと彼女は攻撃さえ
しなければこちらにはこれ以上手を
出してこないと思うから」
 
「………本当だな!」
 レイチェルは真剣な顔を崩さない。
俺は一度仮面の女に目を向けて
動かないことを確認してからレイチェルに
話を聞く。

「何があったんだ!レイチェル」

「分かってる、みんな聞いてくれ
彼女を助けるために」

………………………▽

 あれはクレスとレビィそして私の3人で
38階層に降りた時だった。
 
 イレギュラー……で間違いない。
仮面を付けた女性の霊
 
 私達は警戒レベルを最大にして
攻撃を仕掛ける。クレス、レビィの
攻撃をことごとく防ぐ、私達は
3人の力を合わせた最大出力の攻撃、
なんとか仮面の女にダメージを
与えることが出来たんだ!
でも倒すには至らず。仮面が砕け落ちた。

 仮面の下にあった顔には、邪気や殺気を
放つような恐ろしい顔ではなく、優しく
穏やかな美少女の顔があった。
しかしその顔はすぐに悲しい顔に変わる。
突然彼女から黒いオーラが湧き出てくる。

「あなた達逃げてください。これに触れると
囚われてしまいます」
 彼女は悲痛な声を出し、私達を助け
ようと声をかけてきた。
 
「え、君は、君は誰なんだい?」

「ごめんなさい、話す時間はないみたい。
お願いだからすぐに離れて……お願い……」
 彼女の顔に再び仮面が形成されていく。

 その時僅かに聞こえた。

  『も…う…一人は…い…や…』

 きっと彼女は助けを求めたかったはず、
それを我慢して私達を救おうとしてくれた。
 その後、彼女から大量の死のオーラが溢れ、
その階層を埋め尽くして行き、私達は
逃げるように下層に移動した。


………………………▽
 
「彼女は助けを求めているんだ!私達には
聖魔法を使える者が居なかった。だから
助ける術が無かったけど、
セレーナなら彼女を助けられるんじゃない」

「助けましょ!レイチェル、私は全力で
彼女を救います」

「ありがとう!セレーナ、恩に着るよ!」
 二人が仮面の女を救う決意をしていると、
彼女から黒いモヤが徐々に出て来た。

「いけませんね。あれは死のオーラ、
触れれば命が吸われます。皆さん、
私の後ろに下がって下さい」

「穢れを拒絶する、神の子らに絶対の守りを
聖域召喚……『サンクチュアリフィールド』」

 死のオーラを押し退け光の世界が
広がっていく。

 セレーナは仮面の女に向き歩いていく。
「先程から気になっていたことが
ありました。あなたは……聖女では
ありませんか?」

「……………」

「そうてすか……喋る事が出来ないよう
ですね。大丈夫です!あなたを助けます」
 セレーナは魔力を高め、聖域をさらなる
清浄空間へと変えていき、邪気である死の
オーラを完全に消し去り、
仮面を消し去った。

「これで話が出来るはずです。どうぞ」

「一人は淋しいの、暗くて寒くて怖いの
………助けて欲しい。でも、ダメなの!
私はここに居ないと……罪なき人達に
被害が及んでしまう。だから私はここに
居る」
 
 再び仮面が形成されていく。

「ダメ!諦めないで!きっとあなたを
助けられる。だから自ら希望を捨て
ないで!」
 セレーナは彼女に手を伸ばす。

「良いの……私は我慢するから………」
 その一言を最後に仮面が完全に復元され、
彼女はセレーナの腕を掴むと腕は
黒く変色していく。

「ウグッ……」痛みを必死に耐えるセレーナ

 ボロボロと侵食し朽ちていくを腕を
セレーナは自ら切り落とした。

「セレーナさまー」
 腕を押さえ大量の血を流している
セレーナを抱きかかえ、俺は飛び退き
離れる。

「セレーナ様、今すぐ治療します!」

「待って、まずはこの腕にかかって
いる呪いを解かないと治しても直ぐに
朽ちてしまう」
 痛みに耐えながら回復魔法を
かけるセレーナ

「トン…トン…トン」
 ゆっくりと仮面の女がこちらに
歩いてくる。先程と違い仮面に黒い
模様が入り蠢いている。

「もう、待ってはくれないか」
 俺はセレーナ様の前に立ち、筆を構える。

「さっきより混沌とした気配だけど、
出来ればさっき見たいに顔を見せてくれ
ないかな~俺もお話したな~…………
………ダメっぽいか、それなら力ずくで
引っ剥がす!」

『破魔の筆払い』
 俺の力は当たる手前でそよ風の如く
消えてしまう。

 俺はセレーナ様の姿を思い出し、

「諦めると思うなよ!
MP(魔力量)には自信があるんだよ!」

「はぁーーんぐ!『破魔の筆払い 
無間(むげん)』
 大量の魔力を消費し続け、魔を払い除け、
仮面を剥がさんと手を伸ばす。
 
 ささやくような声が聞こえる
「ダメなの…私はここに居ないと…
邪神を抑える為に……お願い…助けなく
ていい…お願い…来ないで」

 俺はその言葉を聞き、
なんかイラッとした。

「知るかボケ!!黙ってろ!俺はお前の
話なんて聞かん!俺が助けたいから
助ける。それだけだ!」

「オリャオリャオリャー………負けるかーー」
 魔力が尽きるまで彼女に届くまで
そんな思いで書き続けた。そして、彼女の
仮面を砕き……顔に触れた。

 その瞬間、時が止まり

  ……そして…時を超えた。

……………………▽

「邪神 アスタローネ、あなたをこの
世界に解き放つわけには行きません」

「何故あなたは私の邪魔をするの?
私はお腹が空いたの、こちらの世界に
はとても魅力的だ食べ物があるのでしょ
私も食べたいの……あなた…美味しそうね!」


 神殿のような場所に、仮面をつけていた
あの女の人と10メートルくらいの妖艶な
女性が魔法陣から半身を出してこちらの
世界へと出てこようとしている。

「これって…あの女の記憶…」
 俺は触れた時に彼女と繋がったのか?


「アスタローネ、あなたは食欲以外に
悪意もなくきっと純粋な存在なのかも
しれませんね。しかしその強大な
魔力と人、悪魔、天使、生きとし生ける
者をすべて喰らってしまうあなたは
やはり私達にとって脅威でしかありま
せん。どうかお帰り下さい」

「うふふ、嫌よ!私はお腹が空いたの、
美味しい物が好きなの!だからあなたも
頂戴」

「…………はい、私はあげましょう。
だから帰って下さい」
 仮面の女は魔力を極限まで高め、
一歩、一歩と邪神アスタローネがいる
魔法陣に向って歩いていく。

「さー食べて下さい」
 邪神アスタローネの魔力で仮面の女が
空中に浮き上がり、邪神アスタローネ胸が
バックリと開く、まるで口のようで、
中は牙のようなものがうねるように
動いている。

 僅かに仮面の女顔がひきつる。
 そのままゆっくりと口の中へと進み、

「ダメだ行くな!」
 俺は助けようと動こうとするが
足が手がまるで動かない。

「いや~助けて……」
 僅かに女から声が漏れた。

「やめろーー!」
 俺の叫びも虚しく、胸は仮面の女を
吸い込み閉じてしまった。

 邪神アスタローネは口を綻ばせ
歓喜の声を上げた。

………………………▽

「はっ!?」俺の意識は再び元の世界へ
と戻っていた。
 目の前では涙を流して立ち尽くす。

「あんた、偉いよ!尊敬する。
自分の命をかけて世界を救うなんて、
出来ることじゃない。あなたは
俺が絶対に救う。さっきも言われたと
思うけど諦めるな!救いを求めたって
良いんだ!邪神だかなんだか
知らないが、出て来たら俺が倒す。
俺の手を掴め!」

 俺は手を差し伸べる。

「でも、わたし……」
 悲しい顔を向け手を僅かに上げ止める。
「あーー俺は諦めないからな!お前が
諦めても強制で助けるんだ!」
 俺は僅かに上がっていた手を両手で
自ら掴んだ。

「ウグッ」その瞬間死のオーラが俺を包んだ。

 俺の身体が朽ちていく中、思いは何も
変わらず、ただ…彼女を助ける事だけを
考えていた。

 その思いに答えるように持っていた筆が
脈動するように銀色の波動を出す。
その波動は身体を覆っていた死のオーラ
を消し去り、手を伝わって彼女に纏わり
ついている死のオーラさえも消し去った
のだ。

「えっ!?………えっ!?えっ!?」
 彼女は自分の身体を見回し最後に
繋がっている手を見て動きを止めた。

 俺は手に少し力を入れ、
「離さないですからね!離さないで下さい」

 彼女は手を見つめて、しばらくしてから
もう片方の手を動かし俺の手を握った。

「良いんですか?わたし助けて貰っても?」

「もちろん、嫌って言っても助けるんで
覚悟しておいてよ」

「フッ、あなたは見た目と違い強引
なんですね!宜しくお願いします。
私を助けて下さい」

 そう言って彼女は光の粒子になって消えた。


 
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