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プロローグ
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「星が綺麗だよ、實くん」
「…はい、先生」
空を見上げる黎明の瞳に、實は釘付けになる。
深い青色に、星の光がキラキラと反射する。本物の星空よりも余程美しい。
「そう言っても、君、私ばっかり見ているじゃないか」
黎明は振り返り、呆れたように肩をすくめる。
夏の生ぬるい風が吹き、星空のような瞳が揺れる。星明かりが色白の肌を照らし、儚く、消えてしまいそうなほど、美しい。思わず實は黎明の頬に手をのばしていた。少し熱っぽい体温が掌に伝わる。
「なんだい?」
黎明は、實の手に自分の右手を重ね、柔らかな笑みを浮かべる。妙に色っぽく、ハッとして實は目を逸らした。そんな様子に黎明は笑い声をこぼしながら、重ねた手を握り、そのまま指を絡ませる。
「来年は星が降るそうだよ、楽しみだね」
手を繋いだまま、黎明はその手を床に置き、空を仰いだ。
「そうだ、来年は星の物語をしよう。それまで1年間、君のために物語を考えてみるんだ」
「珍しいですね、先生がそう言った題材を小説にするのは」
「ああ、考えがいがあるよ」
僕のために物語を考えてくれるのか。そして、来年も、一緒に過ごしてくれるのか。そう考えて惚けていると、ぐ、と腕を後ろに引かれ、實は背中から床に倒れる。鈍い痛みに思わず目を瞑ると、すぐ近くでふわりと甘い匂いがした。恐る恐る瞳を開くと、實の目の前には星空が広がっていた。なんて美しい光景なのだろう。實が見惚れていると、その星空は不意に細まり、不敵に笑って見せた。
「今日は、このまま寝てしまおうか」
「…体を痛めますよ」
「たまにはいいんだよ、こういうのも」
黎明はそう言って、ゆっくりと瞳を閉じる。視界を閉ざすと、さわさわと庭の木々の葉が風に揺られる音、池で鳴く虫の音、ちりんと遠く鳴るで心地よい風鈴の音がよく聞こえる。執筆続きで寝不足だった黎明を眠りに誘うにはそれで十分だった。
「そうですね、先生」
黎明の小さな寝息を聞きながら、實もゆっくりと瞼を閉じる。
来年も、星明かりに照らされながらこの縁側でゆっくりと話を紡ぐ黎明の姿を思い浮かべながら、實も眠りに落ちた。
「…はい、先生」
空を見上げる黎明の瞳に、實は釘付けになる。
深い青色に、星の光がキラキラと反射する。本物の星空よりも余程美しい。
「そう言っても、君、私ばっかり見ているじゃないか」
黎明は振り返り、呆れたように肩をすくめる。
夏の生ぬるい風が吹き、星空のような瞳が揺れる。星明かりが色白の肌を照らし、儚く、消えてしまいそうなほど、美しい。思わず實は黎明の頬に手をのばしていた。少し熱っぽい体温が掌に伝わる。
「なんだい?」
黎明は、實の手に自分の右手を重ね、柔らかな笑みを浮かべる。妙に色っぽく、ハッとして實は目を逸らした。そんな様子に黎明は笑い声をこぼしながら、重ねた手を握り、そのまま指を絡ませる。
「来年は星が降るそうだよ、楽しみだね」
手を繋いだまま、黎明はその手を床に置き、空を仰いだ。
「そうだ、来年は星の物語をしよう。それまで1年間、君のために物語を考えてみるんだ」
「珍しいですね、先生がそう言った題材を小説にするのは」
「ああ、考えがいがあるよ」
僕のために物語を考えてくれるのか。そして、来年も、一緒に過ごしてくれるのか。そう考えて惚けていると、ぐ、と腕を後ろに引かれ、實は背中から床に倒れる。鈍い痛みに思わず目を瞑ると、すぐ近くでふわりと甘い匂いがした。恐る恐る瞳を開くと、實の目の前には星空が広がっていた。なんて美しい光景なのだろう。實が見惚れていると、その星空は不意に細まり、不敵に笑って見せた。
「今日は、このまま寝てしまおうか」
「…体を痛めますよ」
「たまにはいいんだよ、こういうのも」
黎明はそう言って、ゆっくりと瞳を閉じる。視界を閉ざすと、さわさわと庭の木々の葉が風に揺られる音、池で鳴く虫の音、ちりんと遠く鳴るで心地よい風鈴の音がよく聞こえる。執筆続きで寝不足だった黎明を眠りに誘うにはそれで十分だった。
「そうですね、先生」
黎明の小さな寝息を聞きながら、實もゆっくりと瞼を閉じる。
来年も、星明かりに照らされながらこの縁側でゆっくりと話を紡ぐ黎明の姿を思い浮かべながら、實も眠りに落ちた。
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