希望のマリス

希塔司

文字の大きさ
上 下
6 / 15

chapter5:overlap

しおりを挟む
「まずは『マリス』の現在の状況について把握してもらいたい。

ホープはミーティングは初めてだからまずはしっかりと今回の話を聞いてどのように話し合いをしているか勉強してほしい。

何かわからないことがあればアラタくんをはじめ、周りの人に聞いてくれ。」


「承知いたしました船長様」


 私もミーティングに参加することになり、船長様による説明が始まった。


「それでは改めて、まずは『マリス』についてだ。つい先日、先行で派遣されていた別働隊の開拓者からの連絡が途絶えた。


別働隊の人数は約50名。
さすがに全員からの通信が途絶える状況はおかしいと判断した会社側から到着次第、行方不明になった開拓者の捜索も追加で指令が下った。」


 どうやら私たちの前に『マリス』に開拓をしに行った人たちがいるらしい。そして全員が行方不明になるのはまた不思議なことだ。


「だけどよセンチョー、そんな緊急事態ならそれこそ軍隊を派遣するのが1番だろ?

下手したらその開拓者が何者かの襲撃だったりトラブルに巻き込まれたり、下手したら未知の生物に殺されたりしてるかもしんねぇじゃねぇか。」


 ツトム様はイライラを隠せずに話した。あんなことがあった後だから無理もない。


「残念だが我々は現在まだ多くの戦線に駆り出されているものでね。いまだに機械兵どもとの戦争で多くの軍人が戦っている。

行方不明者の捜索に遠征できるほど時間も人材もないんだよ。」


 マコト様がそのように弁明した。調べたところ、現在も地球では多くの戦場で機械兵と人間が戦争を続けている。多くの軍人が犠牲になり、より戦禍が広がる中では言っていることも間違ってはない。


「確かにその通りだな。アスカさん、会社はどのようにこれから動いていくつもりなんだい?」


「はい、会社は独自のAIにより今後の我々の行動を指示しています。現在のところはやはり我々のみでの捜索という形になるでしょう。

いずれは会社からさらに調査隊を派遣していくとは思うのですが...」


 アスカ様は会社の人に随時連絡を取り合っているから状況を把握できたはず。だがアスカ様は少し顔を俯いているから周りからすれば怪しい行動に見える。おそらく何かを知っている。


「まぁまぁ、皆さん。まずは行方不明者の捜索を先行して考えましょう。全員無事なら引き続き僕たちの本来の開拓を進めていけますし!

センチョー、その行方不明者の身元が判別できるものやなにか手がかりになるものなどはありますか?」


 アラタ様は周りをなだめていきながら今後の対策を練ろうとしている。さすが私を開発した方だ、やはり素晴らしい人間だと知る。


「そうだね、まずは全員が無事に見つかることが最重要だ。


『マリス』に到着次第、二手に分かれて行動しよう。私、アラタくん、マコトさん、カスミさん、ツトムくんの5人で上陸してエリアAから捜索をする。

残りは船に残り、救出された人々の治療や保護にあたってくれ。」


「センチョー!私も同行したいです!」


 ミスズ様が声を荒げたように言った。


「私の父が先行の開拓者として向かってるので何か危険なことに巻き込まれてないか心配で...」


 泣きそうな顔で船長様に訴えかけていた。



「確か君のお父さんはそうだったね。でも君を連れていくことはできない、万が一の場合に取り乱したりされたら私たちまで危険な状況になりかねない。

ミスズちゃん、まずは一旦落ち着こう。
大丈夫、お父さんはきっと無事だから...」


 さすがはこの船の船長様。人のメンタル管理もしっかりとできている。



「分かりました...」


「それだったら代わりにホープを連れていくのはどうかな?」


 カスミ様は船長様にそのような提案を述べた。


「ふざけるな、なぜこんなガキロボットといっしょに捜索にあたらなければならないんだ。

それこそ私たちにトラブルを持ってくるのがオチだろう。」


「何言ってるんだか。自分が機械嫌いだからって効率考えろっての。」


 マコト様とまた言い合いになってしまっている。つかさず船長様が間に入る。


「マコトさん、お気持ちは分かりますが今は個人の考えだけで動くわけにはいきません。
ホープがいればある程度捜索も捗ります。

ホープ、あとでマリスのエリアAの見取り図を見せるからそれを記憶しておいて欲しい。」


「承知いたしました。」


 さっそく私は大役を任されることとなった。


「やったじゃねぇかホープ!いきなり船長がお前を頼るなんて!」


「ほんとだよ!ツトムなんてこんな態度だから頼まれることなんてそうそうないんだから!」


「おい一言余計なんだよ!」


ツトム様、ミナミ様が私に向けて激励を飛ばしてくれた。ケント様も私の肩に手をおいて頷いている。


「よし、ミーティングは終わりだ。準備が出来次第、『マリス』への最終ワープに入る。
各自持ち場にてワープの最終確認をしておいてくれ。では準備にかかってくれ。」


 そうしてミーティングは終わった。船長は自室へと一旦戻って行った。


「さて、まずはエアロックを確認してこよう。宇宙服と備蓄、あとは通信デバイスの調整もあるね。」


「アラタくん、僕も手伝うよ。」


 アラタ様、ケント様はそう言い部屋を出る準備をする。マコト様は何も言わずに部屋を出て行った。


「さてと、操縦席を確認してくるとしますか。」


「ツトムさん、私も手伝います!」


 ツトム様、ミスズ様はこの船の操縦席のあるエリアへ向かっていった。


「私とアスカさんは医務室の準備にいきましょう。きっとたくさんの薬や包帯とか設備が必要になるので」


「わかったわ。」


 ミナミ様、アスカ様は医務室へと向かっていった。


「ホープは僕たちと一緒に来るかい?」

 アラタ様は私にそう提案してきた。すると横からカスミ様が来て。


「アラタくん、一旦ホープと一緒にいてもいいかい?少し見せたい物があってね。」


「わかりました!カスミさんが一緒なら安心です!じゃ何かあったら3Fのエアロックにいるからね!」


 そう言ってアラタ様たちは部屋を出て行った。


「さてと、そしたらホープに見せたいものがあるから私たちも行こう。」


「見せたいものとは?」


「それは着いてからのお楽しみさ、さぁ行くよ!」


 私たちは部屋を出てエレベーターで3Fへと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

What a Wonderful World

一兎風タウ
SF
紀元後3518年。 荒廃したこの地には、戦闘用アンドロイド軍『オリュンポス軍』のみが存在していた⋯。 ー⋯はずだった。 十数年前に壊滅させた戦闘用アンドロイド軍『高天原軍』が再侵攻を始めた。 膠着状態となり、オリュンポス軍最高司令官のゼウスは惑星からの離脱、および爆破を決定した。 それに反発したポー、ハデス、ヘスティアの3人は脱走し、この惑星上を放浪する旅に出る。 これは、彼らが何かを見つけるための物語。 SF(すこしふしぎ)漫画の小説版。

我ら新興文明保護艦隊

ビーデシオン
SF
もしも道行く野良猫が、百戦錬磨の獣戦士だったら? もしも冴えないサラリーマンが、戦争上がりのアンドロイドだったら? これは、実際にそんな空想めいた素性をもって、陰ながら地球を守っているエージェントたちのお話。 ※表紙絵はひのたけきょー(@HinotakeDaYo)様より頂きました!

火星

ニタマゴ
SF
2074年、人類は初めて火星という星に立つ。 全人類が喜ぶ中、火星人は現れた。 そして、やつはやってくる!地球へと・・・ 全人類VS一人の火星人の戦いが始まったのであった・・・

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

体内内蔵スマホ

廣瀬純一
SF
体に内蔵されたスマホのチップのバグで男女の体が入れ替わる話

宇宙人へのレポート

廣瀬純一
SF
宇宙人に体を入れ替えられた大学生の男女の話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...