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第1章 「悪魔」
第12話「出航」
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次の日、私たちは港で直接待ち合わせをすることになった。ワンピースを着て麦わら帽子を被り、必要なものをバッグに入れて自宅を後にした私は街中を歩いてる最中に昨日話していた内容を思い出していた。
『これ以上は話せない。話してしまえばきっと周やここにいるみんなは殺されてしまうからね。』
こんなことを話すということは帝国内部も一枚岩ではないということ。注目するのは一体誰が私たちを殺しに来ると?十将に登り詰めた周や実験によって怪物にされた私やすみれを殺せる人間なんてそうはいない。
おそらくはその人間も何かしら体をいじっているに違いない。帝国の打倒を目標にしている私にとってはそいつが最大の障害になりえる。だが今はそんなことを言っている場合じゃない。目の前に大量に稼げる案件がある、それに集中していくのが最優先。
「あ、せんぱーい!」
港に向かって歩いている途中、すみれが私を見つけて走ってこっちに来た。まさかこけで会うとは思わなかったが、こうして走ってくるのを見るとやっぱり昔のことを思い出してしまう。小さい時によく私の元へ駆け寄った姿を...
切り替えて私はすみれと合流する。後ろには何人か外国人がいる。すみれと同じ部隊に所属しているのだろう。
「まさかここで合流できるなんてね、後ろにいるのはあなたの部隊の人かしら?」
「そうです!私が隊長の暗殺部隊ですよー!」
すみれはそう言いながら自信満々にメンバーを紹介していった。諜報メインのダニエル、罠を仕掛けて撹乱するアレックス、接近戦や中距離射撃が得意なエイミー、遠距離射撃をするスナイパーのジョン。この5人でさまざまな任務をこなしてきたと言う。
歩きながらタバコに火をつけて一服しながら聞いているとすみれは飲み物を買いに売店へと走って行った。メンバーの4人は私に疑問視を向ける者ばかりだった。まずはダニエルが質問をいくつかぶつけてきた。
「あんたが鬼切あやめかい?」
「そうよ、それでなに?」
「いや、隊長が尊敬する殺し屋と聞いてどんな人が来るんだろうなと思ってたが...。
なんだ、意外と綺麗な身なりをしているんだなと。てっきり血で染まりすぎて髪が赤かったり殺しすぎて目が死んでるのかと思ってたぜ。」
「一般人に紛れるのは殺し屋として基本じゃないかしら?すみれがどんな教育をしているのか知らないけど、今あんたたちからは殺気しか感じないわよ。」
「そりゃそうさ。なんたって戦地に派遣されるんだ、これくらい気合い入れなきゃやられるのはおれたちなんでな。にしてもあんたからは殺し屋の風格とかまるで感じないな、まるで兵士たちとの遊び相手として同行するような服装じゃないか。いや体格的に一方的にやられるのがオチか?w」
全く失礼なことを言う男だこと。一回搾り取ってやろうかと思うくらいだ。
「そう、なら試してみる?」
悪い大人になったんだなと自分でも思う、鏡で見てみたいくらいの悪い笑みを相手に向けながらそう言ってみる。実は一度やってみたかったことではある。
「ダニエル、隊長後ろに...!?」
エイミーがダニエルに声をかけて後ろを振り返るとそこにみんなの飲み物を抱えたすみれがいた。一瞬でダニエルから笑顔が消えた。
「それ以上おねぇちゃんをバカにするなら、殺すぞ?」
周りが一瞬で凍りつくとはこのことなんだなと感じた。そしてすぐに笑顔に戻り私に飲み物を差し出してきた。
「先輩どうぞー!」
「あ、ありがと...」
困惑しながら私たちは引き続き港に向かって歩き出した。すみれの威圧で他のメンバーもダニエルに続いて黙り込んでしまったからなんか気まずい。すみれは周りの雰囲気を感じたのか、私に関する思い出を話していった。
「私が小さい時唯一優しくしてくれたのが先輩で、よくイタズラした私に優しく叱ってくれたなって。看守の目を引いてよく脱走したり、一回だけだけど花畑にも連れてってくれたことも!」
「あんたよく覚えてるね、確かあの花畑の花ってヒガンバナよね?」
「そうですよ!先輩が花言葉を教えてくれたじゃないですか。花の色によって違う意味になるって。今でも持ってるんですよ、かんざしにしてますけどほら!」
確認してみると、確かにかんざしには白いヒガンバナが乾燥されつつもしっかりと形を残したまま保存されている。最近帝都でも話題のドライフラワーというやつだ。すみれ、まだ持ってたんだ。
「この花言葉を胸に、私は先輩と再会できたのが純粋に嬉しいです。改めてよろしくお願いします。」
笑顔を向けながらそういうすみれに何か引っかかるものがあったけれどその場はそれで抑えた。
ーーーーーーー
「お、やっと着いたか。」
港に着くと周と藤宮が2人で話していた。後ろには帝国兵たちがずらりといる。私の中にしまっている憎しみが湧き上がる感覚があるが今回はあくまで仕事としてきたので堪えてみせた。
「待たせたわね、すみれとも合流したから私たちが最後になるかしら?」
「そうだね、これで部隊は全員かな。よし、全員整列!」
藤宮が各部隊に整列の旨を伝え全員に今回の任務内容を説明していく。
「今回我々は連合側として再び阿国との戦争に望むことになった!戦地では現在熾烈な戦いが繰り広げられている。麦国から部隊も召集された共同任務だ。阿国で起こっている反乱を増長させ内部から革命を引き起こして無駄な血が流れないようにする。革命派は連合の意思と同調路線となっているため、それを援護する形となる。
我々は革命が成功するまでの時間稼ぎをすることになる。中には死を迎えるものもいるだろう。だが恐れるな!偉大なる帝国の繁栄のため、偉大なる帝のため、我々はこの国際社会にて栄誉を手に入れる戦をしようではないか!お前たちはいずれ、この帝国のさらなる繁栄をもたらした英雄として一人一人が歴史に跡を残すことになる!本日こそ我が帝国の船出の時だ!帝国万歳!!」
「「帝国万歳!!」」
いかにもヤバい集団だなと感じる。集団だからこそこの声明のヤバさにも気づかず、この国の国民性は同調だから否定するものを排除したがるものだからそうならないようになのかもしれないがこれが後々自分たちの首を締めていくのだろうと感じた。
「相変わらず外から見るとつくづくイカれてやがる。おれはこんなものにすがってたのかと思うとな。」
「そう言うな周、僕も同じように思うがこうでもしないと一般兵ですらクーデターを引き起こそうとする国民性だ。あまり刺激をしないようにかつ奮起するような言い方をしなくちゃならないんだ。」
藤宮が帝国のやり方に否定的な意見を述べるのは意外だったけどもしかしたらいつか分かり合えるのかもしれないと一抹の希望も沸いた。
帝国兵たちは戦艦に乗り込み、出港に向けて準備を始めていく。私たちも乗り込み外を眺めている。この海の向こうに、私が住んでいた集落があると思うと懐かしい。あの頃はまさかこんな人生を送るとは思っていなかった。もしあの時帝国が攻め込んでいなければきっと今も私は集落で平凡に暮らしていただろう。今思い出しても仕方ないことだとは思うけれど。
「浮かない顔だなあやめ。」
周が隣にやってきた。私を慰めにでも来たのか、心配の眼差しを向けてきた。
「何よ、海を見てたら人は感傷的になるものでしょ?」
「いやそうはならんやろ...って言いたいがおれも少し思い出が甦ってきたから人のこと言えねぇな。」
それから少しの間隣で黙っていた。一体何がしたいのか私にはさっぱりだ。少し間が空いたあとこんなことを聞いてくる。
「そういや、あれから飾ってるのか?」
「この間渡してきた黄色のヒガンバナ?」
「ああ、すごくあやめってぽいなって思って贈ったんだ。」
「私らしい?」
「今はいいんだ、しばらくしたら意味は調べてくれ。」
そう言いながら周は中へと入っていった。それから再び海を見ながら過去を振り返っているとついに出航するとのことで中に入り、部屋へと入った。部屋の中は少し豪華でベッドやソファなどはもちろん近代的な客船の高級客間のような広さだ。こんなものに金をかけるならもっと庶民に対してできる政策がたくさんあるのにといつも思ってしまう。
私はベッドに横たわり少しずつ動き出していく感覚を肌で感じていた。この感覚いつ以来だろう。確か帝都に向かう時以来かな、あの研究施設に向かう時に感じたゆっくりと揺れる感覚。
「師匠、私は今どんなふうに見えてますか...?」
そう呟きながら天井を見ていた。
『これ以上は話せない。話してしまえばきっと周やここにいるみんなは殺されてしまうからね。』
こんなことを話すということは帝国内部も一枚岩ではないということ。注目するのは一体誰が私たちを殺しに来ると?十将に登り詰めた周や実験によって怪物にされた私やすみれを殺せる人間なんてそうはいない。
おそらくはその人間も何かしら体をいじっているに違いない。帝国の打倒を目標にしている私にとってはそいつが最大の障害になりえる。だが今はそんなことを言っている場合じゃない。目の前に大量に稼げる案件がある、それに集中していくのが最優先。
「あ、せんぱーい!」
港に向かって歩いている途中、すみれが私を見つけて走ってこっちに来た。まさかこけで会うとは思わなかったが、こうして走ってくるのを見るとやっぱり昔のことを思い出してしまう。小さい時によく私の元へ駆け寄った姿を...
切り替えて私はすみれと合流する。後ろには何人か外国人がいる。すみれと同じ部隊に所属しているのだろう。
「まさかここで合流できるなんてね、後ろにいるのはあなたの部隊の人かしら?」
「そうです!私が隊長の暗殺部隊ですよー!」
すみれはそう言いながら自信満々にメンバーを紹介していった。諜報メインのダニエル、罠を仕掛けて撹乱するアレックス、接近戦や中距離射撃が得意なエイミー、遠距離射撃をするスナイパーのジョン。この5人でさまざまな任務をこなしてきたと言う。
歩きながらタバコに火をつけて一服しながら聞いているとすみれは飲み物を買いに売店へと走って行った。メンバーの4人は私に疑問視を向ける者ばかりだった。まずはダニエルが質問をいくつかぶつけてきた。
「あんたが鬼切あやめかい?」
「そうよ、それでなに?」
「いや、隊長が尊敬する殺し屋と聞いてどんな人が来るんだろうなと思ってたが...。
なんだ、意外と綺麗な身なりをしているんだなと。てっきり血で染まりすぎて髪が赤かったり殺しすぎて目が死んでるのかと思ってたぜ。」
「一般人に紛れるのは殺し屋として基本じゃないかしら?すみれがどんな教育をしているのか知らないけど、今あんたたちからは殺気しか感じないわよ。」
「そりゃそうさ。なんたって戦地に派遣されるんだ、これくらい気合い入れなきゃやられるのはおれたちなんでな。にしてもあんたからは殺し屋の風格とかまるで感じないな、まるで兵士たちとの遊び相手として同行するような服装じゃないか。いや体格的に一方的にやられるのがオチか?w」
全く失礼なことを言う男だこと。一回搾り取ってやろうかと思うくらいだ。
「そう、なら試してみる?」
悪い大人になったんだなと自分でも思う、鏡で見てみたいくらいの悪い笑みを相手に向けながらそう言ってみる。実は一度やってみたかったことではある。
「ダニエル、隊長後ろに...!?」
エイミーがダニエルに声をかけて後ろを振り返るとそこにみんなの飲み物を抱えたすみれがいた。一瞬でダニエルから笑顔が消えた。
「それ以上おねぇちゃんをバカにするなら、殺すぞ?」
周りが一瞬で凍りつくとはこのことなんだなと感じた。そしてすぐに笑顔に戻り私に飲み物を差し出してきた。
「先輩どうぞー!」
「あ、ありがと...」
困惑しながら私たちは引き続き港に向かって歩き出した。すみれの威圧で他のメンバーもダニエルに続いて黙り込んでしまったからなんか気まずい。すみれは周りの雰囲気を感じたのか、私に関する思い出を話していった。
「私が小さい時唯一優しくしてくれたのが先輩で、よくイタズラした私に優しく叱ってくれたなって。看守の目を引いてよく脱走したり、一回だけだけど花畑にも連れてってくれたことも!」
「あんたよく覚えてるね、確かあの花畑の花ってヒガンバナよね?」
「そうですよ!先輩が花言葉を教えてくれたじゃないですか。花の色によって違う意味になるって。今でも持ってるんですよ、かんざしにしてますけどほら!」
確認してみると、確かにかんざしには白いヒガンバナが乾燥されつつもしっかりと形を残したまま保存されている。最近帝都でも話題のドライフラワーというやつだ。すみれ、まだ持ってたんだ。
「この花言葉を胸に、私は先輩と再会できたのが純粋に嬉しいです。改めてよろしくお願いします。」
笑顔を向けながらそういうすみれに何か引っかかるものがあったけれどその場はそれで抑えた。
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「お、やっと着いたか。」
港に着くと周と藤宮が2人で話していた。後ろには帝国兵たちがずらりといる。私の中にしまっている憎しみが湧き上がる感覚があるが今回はあくまで仕事としてきたので堪えてみせた。
「待たせたわね、すみれとも合流したから私たちが最後になるかしら?」
「そうだね、これで部隊は全員かな。よし、全員整列!」
藤宮が各部隊に整列の旨を伝え全員に今回の任務内容を説明していく。
「今回我々は連合側として再び阿国との戦争に望むことになった!戦地では現在熾烈な戦いが繰り広げられている。麦国から部隊も召集された共同任務だ。阿国で起こっている反乱を増長させ内部から革命を引き起こして無駄な血が流れないようにする。革命派は連合の意思と同調路線となっているため、それを援護する形となる。
我々は革命が成功するまでの時間稼ぎをすることになる。中には死を迎えるものもいるだろう。だが恐れるな!偉大なる帝国の繁栄のため、偉大なる帝のため、我々はこの国際社会にて栄誉を手に入れる戦をしようではないか!お前たちはいずれ、この帝国のさらなる繁栄をもたらした英雄として一人一人が歴史に跡を残すことになる!本日こそ我が帝国の船出の時だ!帝国万歳!!」
「「帝国万歳!!」」
いかにもヤバい集団だなと感じる。集団だからこそこの声明のヤバさにも気づかず、この国の国民性は同調だから否定するものを排除したがるものだからそうならないようになのかもしれないがこれが後々自分たちの首を締めていくのだろうと感じた。
「相変わらず外から見るとつくづくイカれてやがる。おれはこんなものにすがってたのかと思うとな。」
「そう言うな周、僕も同じように思うがこうでもしないと一般兵ですらクーデターを引き起こそうとする国民性だ。あまり刺激をしないようにかつ奮起するような言い方をしなくちゃならないんだ。」
藤宮が帝国のやり方に否定的な意見を述べるのは意外だったけどもしかしたらいつか分かり合えるのかもしれないと一抹の希望も沸いた。
帝国兵たちは戦艦に乗り込み、出港に向けて準備を始めていく。私たちも乗り込み外を眺めている。この海の向こうに、私が住んでいた集落があると思うと懐かしい。あの頃はまさかこんな人生を送るとは思っていなかった。もしあの時帝国が攻め込んでいなければきっと今も私は集落で平凡に暮らしていただろう。今思い出しても仕方ないことだとは思うけれど。
「浮かない顔だなあやめ。」
周が隣にやってきた。私を慰めにでも来たのか、心配の眼差しを向けてきた。
「何よ、海を見てたら人は感傷的になるものでしょ?」
「いやそうはならんやろ...って言いたいがおれも少し思い出が甦ってきたから人のこと言えねぇな。」
それから少しの間隣で黙っていた。一体何がしたいのか私にはさっぱりだ。少し間が空いたあとこんなことを聞いてくる。
「そういや、あれから飾ってるのか?」
「この間渡してきた黄色のヒガンバナ?」
「ああ、すごくあやめってぽいなって思って贈ったんだ。」
「私らしい?」
「今はいいんだ、しばらくしたら意味は調べてくれ。」
そう言いながら周は中へと入っていった。それから再び海を見ながら過去を振り返っているとついに出航するとのことで中に入り、部屋へと入った。部屋の中は少し豪華でベッドやソファなどはもちろん近代的な客船の高級客間のような広さだ。こんなものに金をかけるならもっと庶民に対してできる政策がたくさんあるのにといつも思ってしまう。
私はベッドに横たわり少しずつ動き出していく感覚を肌で感じていた。この感覚いつ以来だろう。確か帝都に向かう時以来かな、あの研究施設に向かう時に感じたゆっくりと揺れる感覚。
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