異世界、皇子です

三章、帝国内乱

驚愕

「俄かには信じられないな……」

フリートは動揺を隠すことが出来ずにいた。
あまりに自分の中の常識と乖離した事に聞こえたのだ。

それを聴いたのがフリートで無くとも、少なくとも動揺の反応をするだろう。

「まぁ……気持ちはなんと無くだから、察することが出来る。
私も最初、自分の出自を聴いた時は驚いたものだ」

少女はその可憐な顔を僅かに歪め、苦笑した。

「やはり、出自が特殊なのか？」

思わず、といった形で抱いた疑問を口に出してしまった。

それに気分を害した様子も無く口を開く。

「……そうだな、確かに余り言いふらしていいようなものでも無いだろう」

エレメンヒルデは一呼吸置いて、再度その美しい唇から言葉を発する。

「私は、帝国貴族と神国の姫との間に産まれた」







フリートは息を止めた。

その時まるで、世界が活動を停止したように感じたのだ。

時が停まり、ありとあらゆるものの生命活動が停止したような錯覚さえ起こした。

それ程までに、驚愕に値するあり得ないものだったのだ。

フリートとて、予想はしていた。
それでも、その予想が当たっているとは思ってもみなかった。

しかし一方で、納得もしていた。

「……………………成る程、だから神国の姫君である君があそこまで帝国貴族と皇族を憎んでいたのか。
疑問が晴れたよ…………全く嬉しくなど無いのだけれどね」

そう、フリートが確かに抱いていた疑問解けた。
しかしながら、問題が増えた。

今にも頭を抱えて蹲りそうになった。

「ああ、帝国の皇子である貴方ならそうだろうな」

さもありなん。自分が原因ではあるが、それでも同情を禁じ得なかった。

まるで悲劇のヒロインのように見え、エレメンヒルデはクスリ、と笑った。

それに追い打ちをかけるように、更にエレメンヒルデはフリートが聞きたく無いと考えているであろう事実を口にする。







「私は血縁上で父親と呼ばれるものに命を狙われた。
匿われていた村を焼かれて、な」








今度こそ、フリートの時が停まった。

そして、フリートの心中にナニカが産まれた音がした。