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二章、学園
戦闘訓練、1
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「フリート、次戦闘訓練だったよな。早く行こうぜ、遅れちまう」
そんな風に思っていたのだが、意外と何とかなるようだ。
1週間もすれば帝国の皇子という存在に慣れたらしい。
なかなかに強かなクラスメイトで助かった。
彼らは普通の友人に接するように話しかけてくれる。
ミラはそれを目にする度に睨んでいたりする。
何でも、皇族としての面子に関わるらしい。
ミラの言うことも分かるし理解できるのだが、個人的な感情としては助かっているし、それを理解しているミラも睨んでいるだけで何か言うと言うこともない。
クラスメイトからはそれが怖さを増長させているらしいが。
「そうだったな、じゃあ行こうか。ほらミラも急いで」
「……分かった」
ならミラも言葉遣いを直せと言われそうだが、それは私が頼んだことなので問題ない……多分。
そんなことを考えながら無駄に長い廊下を歩き始めた。
「遅い!」
開口一番、そうフリート達に言い放ったのは戦闘訓練の教官である、ナディア=ウンガーだ。
ナディアは茶色い瞳をフリート達に向け、忠告する。
「どのような事情があったにせよ、遅刻は遅刻です。殿下であろうと関係無く私は扱います。今回は大目に見ますが、次からは減点の対象となるぞ」
「すみませんでした。以後気をつけます」
フリートはそう言って頭を下げる。
ミラも不敬だと言わんばかりにナディアを睨んでいたが、文句を押し殺して軽く頭を下げた。
「では、戦闘訓練を始めましょう。ですが、その前に今のあなた達の能力がどのくらいかを知りたいので、まずは模擬戦をしてもらいます。
……あなたとあなた、前に出て来てください。最初はあなた達にしてもらいます」ナディアは吸い込まれそうな黒い瞳を指定した男子生徒と女子生徒に向けた。
「分かりました」
「はっはい!」
2人は言われた通り前に出て、互いに自分の武器を持って行った。男子生徒は剣を、女子生徒はショットガンを持って向かい合って、開始の合図を待った。
「ーーー始め!」
ナディアがよく通る声で鋭く言った。
男子生徒はその声に直ぐに反応し勢いよく前へ飛び出し、剣を振り下ろそうとするが、女子生徒が少し遅れるが、後退が間に合い、女子が持つには不似合いな大型のショットガンの引き金を引いた。
因みに、銃弾はゴム弾が使われており当たっても怪我だけで済むようになっている。
ダァン!
大きな銃声が響く。
「どうやら彼女が使用している銃は『火薬式』のようだね。
今時珍しい。半ばアンティークのような扱いを受けているというのに」
フリートが珍しい物を見たかのように呟く
そう、女子生徒が使用しているショットガンは『火薬式』と呼ばれており、30年ほど前に出た『魔導式』に取って代わられていた。
既に軍は勿論、自衛団や家庭でも殆ど音の出ない『魔導式』が普及している。
フリートが少し驚いているうちに、どうやら勝負が決まりそうだ。
男子生徒は女子生徒の銃弾の前に近付くことさえままならず、女子生徒は慣れた様子で冷静に、かつ慎重に追い詰める。
その姿はまるで狩人の様だった。
そんな風に思っていたのだが、意外と何とかなるようだ。
1週間もすれば帝国の皇子という存在に慣れたらしい。
なかなかに強かなクラスメイトで助かった。
彼らは普通の友人に接するように話しかけてくれる。
ミラはそれを目にする度に睨んでいたりする。
何でも、皇族としての面子に関わるらしい。
ミラの言うことも分かるし理解できるのだが、個人的な感情としては助かっているし、それを理解しているミラも睨んでいるだけで何か言うと言うこともない。
クラスメイトからはそれが怖さを増長させているらしいが。
「そうだったな、じゃあ行こうか。ほらミラも急いで」
「……分かった」
ならミラも言葉遣いを直せと言われそうだが、それは私が頼んだことなので問題ない……多分。
そんなことを考えながら無駄に長い廊下を歩き始めた。
「遅い!」
開口一番、そうフリート達に言い放ったのは戦闘訓練の教官である、ナディア=ウンガーだ。
ナディアは茶色い瞳をフリート達に向け、忠告する。
「どのような事情があったにせよ、遅刻は遅刻です。殿下であろうと関係無く私は扱います。今回は大目に見ますが、次からは減点の対象となるぞ」
「すみませんでした。以後気をつけます」
フリートはそう言って頭を下げる。
ミラも不敬だと言わんばかりにナディアを睨んでいたが、文句を押し殺して軽く頭を下げた。
「では、戦闘訓練を始めましょう。ですが、その前に今のあなた達の能力がどのくらいかを知りたいので、まずは模擬戦をしてもらいます。
……あなたとあなた、前に出て来てください。最初はあなた達にしてもらいます」ナディアは吸い込まれそうな黒い瞳を指定した男子生徒と女子生徒に向けた。
「分かりました」
「はっはい!」
2人は言われた通り前に出て、互いに自分の武器を持って行った。男子生徒は剣を、女子生徒はショットガンを持って向かい合って、開始の合図を待った。
「ーーー始め!」
ナディアがよく通る声で鋭く言った。
男子生徒はその声に直ぐに反応し勢いよく前へ飛び出し、剣を振り下ろそうとするが、女子生徒が少し遅れるが、後退が間に合い、女子が持つには不似合いな大型のショットガンの引き金を引いた。
因みに、銃弾はゴム弾が使われており当たっても怪我だけで済むようになっている。
ダァン!
大きな銃声が響く。
「どうやら彼女が使用している銃は『火薬式』のようだね。
今時珍しい。半ばアンティークのような扱いを受けているというのに」
フリートが珍しい物を見たかのように呟く
そう、女子生徒が使用しているショットガンは『火薬式』と呼ばれており、30年ほど前に出た『魔導式』に取って代わられていた。
既に軍は勿論、自衛団や家庭でも殆ど音の出ない『魔導式』が普及している。
フリートが少し驚いているうちに、どうやら勝負が決まりそうだ。
男子生徒は女子生徒の銃弾の前に近付くことさえままならず、女子生徒は慣れた様子で冷静に、かつ慎重に追い詰める。
その姿はまるで狩人の様だった。
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