氷結セシ我ガ世界

晴れのち曇り

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一章

第三十八話

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「ォォォォォォォ…………」

 ずしんと重い音を立てて『パワーベア』は地面に倒れ伏した。
 圭とイルヴァに見つかった途端に魔法を撃ち込まれたのだ。
 それはもう見事としか言いようがないほど綺麗に、素早く決まった。
 威嚇する間さえ与えずに文字通り瞬殺してしまった圭達は、『パワーベア』が死んだ事をステータスカードで確認するや否やギルドに報告しに戻って行った。








「いやぁ、今回の依頼はすぐに終わったな。これからもああいう依頼をうけることにするかな」

「そうだな、そもそも我と圭が組んでいる時点でこの世界の生命のほとんどが抵抗すら叶わんと思うぞ」

「そうなのか?やっぱりイルヴァは桁外れに強いんだな」

「確かに我はあらゆる生命の頂点に存在していると自負しているが、圭よお前も上から数えた方がよほど早いぞ」

 などど話しながらスノウリーフへの道を圭達は歩いていた。
 その間に身の程を知らない愚かな盗賊や狼の群れが襲いかかって来たが返り討ちにされ、その後彼らの姿を見たものはいない。

「…………」

 そんな安全?な道中で圭は黙り込み、ふと周りを見渡した。

「ふむ……どうした?圭」

 そんな圭の姿をイルヴァは疑問に思ったのか顔を覗きながら聞いた。

「いや…………随分と遠いところに来てしまったな、と思ってな」

 そう言いながら遠くの何かを想うようにポツリと呟いた。
 異世界に迷い込んでからの激動の1日が過ぎ、2日目に入ってようやく圭はちゃんと故郷の日本の事を考えることが出来るようになった。

 家族のこと、友人のこと、あいにくと恋人はいなかったが、親しい女友達もいた。
 両親とはとても仲が良く、友人にもよくそう驚かれたものだ。
 さらにこれもまた仲の良い妹がいる。
 少し天然で抜けているところがあるが、天真爛漫でいつも笑っているような明るい子だった。
 特別に成績が良いわけでは無かったが、充実していたと言える学校。
 クラスメイトや教師ともそれなりにやれていたのではないかと思う。

 圭は幸せだった。
 あの生活が好きだった。
 いきなりそれが無くなるなんてことは想像も望んでもいなかった。
 何故自分だったのか。
 あまりの理不尽に圭はそう叫び散らしたくなった。
 限界だった。
 これ以上自分の感情に蓋をすることは出来なかった。
 誰かを恨みたかった。
 誰かを憎みたかった。
 誰かが手を引いていたと信じたかった。
 そう思うことでこの自分の中に燻る黒い感情を吐き出したかった。











「この世に神はいるのか、いるのなら……」

 神を恨み、憎しみたかった。
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