氷結セシ我ガ世界

晴れのち曇り

文字の大きさ
上 下
37 / 42
一章

第三十六話

しおりを挟む
 ーーーーーい!圭!おい!起きろ!圭!」

 イルヴァが叫んでいる、どうしたのだろうか。
 ………………ああ、そういえば倒れたんだった。
 痛くて、苦しくて、泣きそうになるほど辛かった。
 情けない限りだが、それほどまでに魔力の嵐は自分の身体を蝕み、した。
 まるであの杖を振るうための身体に変えられたようなそんな感覚が身体の中を駆け巡っている。

「イルヴァ、か……」

 むくりと起き上がった圭の眼の前にイルヴァの顔が映される。

「無事だったか……まったく、死んだかと思ったぞ」

 そう言うイルヴァに呆れたように反論する。

「いやいや、お前が大丈夫だって言ったんじゃ無いか」

「確かにそう言ったが、あの苦しみようではそう思うのも仕方ないだろう……」

 仔犬のようにしゅんとしながら呟くイルヴァにギャップを感じたが、頭を振っていらない考えを消し去った。

「まあ、なんにせよ俺はこの龍杖を扱えるようになったんだ。結果オーライだよ」

「…………はぁ、もう終わった事だ。気にしない事にしよう」

 そのイルヴァの言葉にくつくつと笑いながら圭は同意を示した。

「そうしておけ………………店主さん、これの値段っていくらだった?多分かなり高額なんだろう、くらいしか分からないんだ」

 そう言って顔を曇らせながら更に続ける。

「多分これ龍杖の代金は払えないと思う。申し訳ないが、分割払いは出来ないか?」

 そう言うと、店主は首を横に振った。

「いいや、そいつはタダでくれてやる。
どうせ坊主しか使えないようになったんだ、お前が使うといい」

 そう言って、店の奥へと消えていった。

「…………らしい。ま、お言葉に甘えるとするか」

 店主を見送った圭はそう肩をすくめた。
 そんな姿にイルヴァは呆れながらも頷いた。

「そうだな。では、行くとするか」

 少し笑いながら出口の方に脚を向けた。



















 図らずも強力な武器を手に入れてしまった圭達は昨日受注した『パワーベア』討伐の依頼をこなす事にした。

「さて、スノウリーフの外に出たのはいいものの『パワーベア』は何処にいるんだ?」

「お前……ギルドに聞いておくなり何なり出来ただろう」

 肝心な事を忘れていた圭にイルヴァは思わずため息が出てしまう。




 強力な武器を得てもやはり、二人の前途は多難である。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

貴様とは婚約破棄だ!え、出来ない?(仮)

胸の轟
ファンタジー
顔だけ王子が婚約破棄しようとして失敗する話 注)シリアス

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のルナリス伯爵家にミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

処理中です...