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一章
第三十一話
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「まずはこいつだ」
そう言って店主は一振りの細身の長剣を持って来た。
「嬢ちゃんは剣と槍なら使えるだろう?だからまず剣からだ」
その言葉に圭は疑問を呈した。
「ちょっと待ってくれ、どうしてイルヴァの使う武器が分かるんだ?」
「んあ?そりゃあ、俺は目が良いからな。誰がどの武器を使うかくらいわかる。ちなみに坊主は武器使ったことないだろ」
そう言う店主はさも当然の事であるかのように軽く言ってのけた。
しかし、普通の人にはそんなことは出来ない。
それだけ腕が良いということなのだろう。
「あ、ああ。確かに俺は武器なんて使ったことが無い。…………しかし、よくわかるものだな」
そう言うと店主はやれやれといった風に肩をすくめながら応える。
「こんなのただの経験だ。誰でも出来るようになる。それよりもその剣を振ってみてくれ、嬢ちゃん」
そうイルヴァに話しかけた。
「ふむ……ハッ!…………こんなものか?」
一瞬溜めてからイルヴァは剣を横に薙いだ。
大きく風が吹き、圭はたたらを踏んだ。
「そいつは魔剣だ。風の魔力が込められている。振れば今のように風が起こる」
「なるほど、使いようによっては大きな戦力になるな。…………だが、この剣は軽すぎる。もっと重くて壊れないやつが良い」
イルヴァがそう言うと店主は一つ頷いて、イルヴァに渡した剣を持って店の奥に消えた。
「次はこれだ」
戻って来たときにその手に抱えていたのは、またしても剣だった。
その剣はうっすらと紅く発光しており、それはまるで夕陽のようだった。
「こいつも魔剣だ。振れば炎が出る」
イルヴァは剣を持ち振ってみた。
ゴウ、と音を立てながら炎が上がった。
「そいつはさっきのより硬く重い…………どうだ?」
店主が確認の言葉を発するとイルヴァは首を横に振った。
「まだ軽い、もっと欲しいな」
そうイルヴァが言うと店主は驚いた顔を見せた。
「ほう……少し待っていろ」
そう言ってまた奥へ消えて行った。
「これならどうだ。俺の店の中で一番重く硬く、刃こぼれしない。だが、切れ味は悪い。叩き潰す感覚で使うやつだ。
今まで誰も扱える奴がいなかった」
その190センチは超えているであろう店主の大きな両手が持ってもまだ剣の大きさが目立つほどのものだ。
夜のように暗く深い黒の刀身に思わず眼が吸い込まれてしまうような感覚に襲われる。
「これは……人の身でこれほどの剣を打ったか。恐ろしくは人間の執念よな」
あのイルヴァでさえ感嘆し僅かに恐れを覗かせる。
「これならばかの古龍でさえ討ち果たすことが出来ような」
その言葉に圭は驚愕した。
それほどまでの剣の性能よりも、あのイルヴァがここまで言うという事に。
僅か二日間の短い付き合いだが、それでも彼女のプライドの高さは分かりやすいほどに高い。
その彼女が遠回しにではあるが、負けた、と言ったのだ。
「それほどか……」
圭には眼の前の大剣がどれほどのものなのかは分からない。
だが、イルヴァの驚きを隠すことができない表情で察することが出来た。
「そいつが使いこなせたなら、無料でくれてやる」
「ほう……いいのだな?」
イルヴァには自信があった。
いくら己を驚愕させる代物であったとしても、この大剣を使いこなす自信があった。
大剣の柄にイルヴァの手が触れた。
そう言って店主は一振りの細身の長剣を持って来た。
「嬢ちゃんは剣と槍なら使えるだろう?だからまず剣からだ」
その言葉に圭は疑問を呈した。
「ちょっと待ってくれ、どうしてイルヴァの使う武器が分かるんだ?」
「んあ?そりゃあ、俺は目が良いからな。誰がどの武器を使うかくらいわかる。ちなみに坊主は武器使ったことないだろ」
そう言う店主はさも当然の事であるかのように軽く言ってのけた。
しかし、普通の人にはそんなことは出来ない。
それだけ腕が良いということなのだろう。
「あ、ああ。確かに俺は武器なんて使ったことが無い。…………しかし、よくわかるものだな」
そう言うと店主はやれやれといった風に肩をすくめながら応える。
「こんなのただの経験だ。誰でも出来るようになる。それよりもその剣を振ってみてくれ、嬢ちゃん」
そうイルヴァに話しかけた。
「ふむ……ハッ!…………こんなものか?」
一瞬溜めてからイルヴァは剣を横に薙いだ。
大きく風が吹き、圭はたたらを踏んだ。
「そいつは魔剣だ。風の魔力が込められている。振れば今のように風が起こる」
「なるほど、使いようによっては大きな戦力になるな。…………だが、この剣は軽すぎる。もっと重くて壊れないやつが良い」
イルヴァがそう言うと店主は一つ頷いて、イルヴァに渡した剣を持って店の奥に消えた。
「次はこれだ」
戻って来たときにその手に抱えていたのは、またしても剣だった。
その剣はうっすらと紅く発光しており、それはまるで夕陽のようだった。
「こいつも魔剣だ。振れば炎が出る」
イルヴァは剣を持ち振ってみた。
ゴウ、と音を立てながら炎が上がった。
「そいつはさっきのより硬く重い…………どうだ?」
店主が確認の言葉を発するとイルヴァは首を横に振った。
「まだ軽い、もっと欲しいな」
そうイルヴァが言うと店主は驚いた顔を見せた。
「ほう……少し待っていろ」
そう言ってまた奥へ消えて行った。
「これならどうだ。俺の店の中で一番重く硬く、刃こぼれしない。だが、切れ味は悪い。叩き潰す感覚で使うやつだ。
今まで誰も扱える奴がいなかった」
その190センチは超えているであろう店主の大きな両手が持ってもまだ剣の大きさが目立つほどのものだ。
夜のように暗く深い黒の刀身に思わず眼が吸い込まれてしまうような感覚に襲われる。
「これは……人の身でこれほどの剣を打ったか。恐ろしくは人間の執念よな」
あのイルヴァでさえ感嘆し僅かに恐れを覗かせる。
「これならばかの古龍でさえ討ち果たすことが出来ような」
その言葉に圭は驚愕した。
それほどまでの剣の性能よりも、あのイルヴァがここまで言うという事に。
僅か二日間の短い付き合いだが、それでも彼女のプライドの高さは分かりやすいほどに高い。
その彼女が遠回しにではあるが、負けた、と言ったのだ。
「それほどか……」
圭には眼の前の大剣がどれほどのものなのかは分からない。
だが、イルヴァの驚きを隠すことができない表情で察することが出来た。
「そいつが使いこなせたなら、無料でくれてやる」
「ほう……いいのだな?」
イルヴァには自信があった。
いくら己を驚愕させる代物であったとしても、この大剣を使いこなす自信があった。
大剣の柄にイルヴァの手が触れた。
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