15 / 42
一章
第十五話
しおりを挟む
芸術的とも言える不運を自覚した圭はその事実を頭の中から消し去って忘れる事にした。
頭を横に振りながら唸る圭を不思議そうに見つめていたヴァイオレットだったが、自分の中の疑問を解決するよりも仕事を優先する事にした。
「ではこちらが報酬の15万ゴールドになります。ご確認ください」
「この金貨が1万ゴールドでいいのか?」
「はい、ちなみに銀貨が1000ゴールドとなります」
金貨云々の質問で貨幣が無いような田舎から来たのかと思われたのか、銀貨や更に銅貨の価値まで教えてくれた。
銅貨は100ゴールドらしい。
「じゃあ……」
「こちらの依頼ですね。既に手続きは終了しております」
もう一つの依頼を受けたい、と伝える前に依頼の手続きを終わらせてくれていたようだ。やはり優秀である。
圭は改めて内容を確認する。
『パワーベアの討伐もしくは撃退』
「パワーベアが森の中に縄張りを作ったらしく、狩が出来なくなりました。どうにかしてください!』
概要
パワーベア1体の討伐もしくは撃退
報酬
35万ゴールド
備考
撃退については一週間以上パワーベアの姿が現れなかった場合のみとする。
報酬も一週間後に支払うものとする。
もし一週間以内に再度パワーベアが確認された場合は依頼の未達成とし、再度パワーベアの討伐もしくは撃退を行う事を指示する場合がある。
再度パワーベアの討伐もしくは撃退を指示され、それを拒否した場合は違約金を支払うことを命じ、依頼の失敗として処理することを留意しておくように。
先程報告した『フリージングボア十匹の討伐』より難易度が格段に上がっているそうだ。
それは『パワーベア』の強さによるものらしい。
単純に大きく、強い。攻撃方法も特筆すべき特殊なものは無い。だからこそ手強いのだ。
なので討伐報酬高額モンスターのリストに入っている。それほどに冒険者に恐れられているのだ。
しかし、圭はスノウリーフに到着する前に数度『パワーベア』を倒している。そして余り強いと感じてはいなかった。
だからこの依頼を受ける事にしたのだ。
確実に成功することが出来る、高額報酬の依頼。誰でも飛びつくと言うものだろう。
例に漏れず圭も一も二もなく引き受けてた。
「それでは、いってらっしゃいませ。無事の帰還をお待ちしております」
ヴァイオレットの見送りの言葉を背に受けながら圭は『パワーベア』を倒すべくギルドを後にした。
「行ってしまいましたか……出来れば圭さんの力の秘密を聞き出したかったのですが、上手くはいきませんね」
圭がギルドを去った後、ヴァイオレットはそうひとりごちた。ギルド職員として圭のあの異常な力の秘密を探らなければならなかったが、どうやらまだ警戒されているようだった。
「まあ、自分の力の秘密を明らかにしないというのは冒険者として必要な事ですし、私も現役の頃は秘密にしていましたから否定はしませんが……いざ聞き出す側に回ると、どうにもやり辛いですね」
どうしたものかと頭を捻らせていると、彼女の同僚顔を青くしながらが駆け寄って来た。
「大変よ!ヴァイオレット!」
「どうしたのです、そんなに慌てて。緊急事態ですか?」
「緊急事態も緊急事態よ!古龍が目撃されたの!」
「何ですって!場所は!?」
「森の近くよ!」
ヴァイオレットは目に見えて動揺した。そう、その場所は。
「その場所はパワーベアの生息地域……!圭さんが向かっている!」
ヴァイオレットは飛び出した。同僚の声を置き去りにして。
頭を横に振りながら唸る圭を不思議そうに見つめていたヴァイオレットだったが、自分の中の疑問を解決するよりも仕事を優先する事にした。
「ではこちらが報酬の15万ゴールドになります。ご確認ください」
「この金貨が1万ゴールドでいいのか?」
「はい、ちなみに銀貨が1000ゴールドとなります」
金貨云々の質問で貨幣が無いような田舎から来たのかと思われたのか、銀貨や更に銅貨の価値まで教えてくれた。
銅貨は100ゴールドらしい。
「じゃあ……」
「こちらの依頼ですね。既に手続きは終了しております」
もう一つの依頼を受けたい、と伝える前に依頼の手続きを終わらせてくれていたようだ。やはり優秀である。
圭は改めて内容を確認する。
『パワーベアの討伐もしくは撃退』
「パワーベアが森の中に縄張りを作ったらしく、狩が出来なくなりました。どうにかしてください!』
概要
パワーベア1体の討伐もしくは撃退
報酬
35万ゴールド
備考
撃退については一週間以上パワーベアの姿が現れなかった場合のみとする。
報酬も一週間後に支払うものとする。
もし一週間以内に再度パワーベアが確認された場合は依頼の未達成とし、再度パワーベアの討伐もしくは撃退を行う事を指示する場合がある。
再度パワーベアの討伐もしくは撃退を指示され、それを拒否した場合は違約金を支払うことを命じ、依頼の失敗として処理することを留意しておくように。
先程報告した『フリージングボア十匹の討伐』より難易度が格段に上がっているそうだ。
それは『パワーベア』の強さによるものらしい。
単純に大きく、強い。攻撃方法も特筆すべき特殊なものは無い。だからこそ手強いのだ。
なので討伐報酬高額モンスターのリストに入っている。それほどに冒険者に恐れられているのだ。
しかし、圭はスノウリーフに到着する前に数度『パワーベア』を倒している。そして余り強いと感じてはいなかった。
だからこの依頼を受ける事にしたのだ。
確実に成功することが出来る、高額報酬の依頼。誰でも飛びつくと言うものだろう。
例に漏れず圭も一も二もなく引き受けてた。
「それでは、いってらっしゃいませ。無事の帰還をお待ちしております」
ヴァイオレットの見送りの言葉を背に受けながら圭は『パワーベア』を倒すべくギルドを後にした。
「行ってしまいましたか……出来れば圭さんの力の秘密を聞き出したかったのですが、上手くはいきませんね」
圭がギルドを去った後、ヴァイオレットはそうひとりごちた。ギルド職員として圭のあの異常な力の秘密を探らなければならなかったが、どうやらまだ警戒されているようだった。
「まあ、自分の力の秘密を明らかにしないというのは冒険者として必要な事ですし、私も現役の頃は秘密にしていましたから否定はしませんが……いざ聞き出す側に回ると、どうにもやり辛いですね」
どうしたものかと頭を捻らせていると、彼女の同僚顔を青くしながらが駆け寄って来た。
「大変よ!ヴァイオレット!」
「どうしたのです、そんなに慌てて。緊急事態ですか?」
「緊急事態も緊急事態よ!古龍が目撃されたの!」
「何ですって!場所は!?」
「森の近くよ!」
ヴァイオレットは目に見えて動揺した。そう、その場所は。
「その場所はパワーベアの生息地域……!圭さんが向かっている!」
ヴァイオレットは飛び出した。同僚の声を置き去りにして。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のルナリス伯爵家にミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる