氷結セシ我ガ世界

晴れのち曇り

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一章

第十二話

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キースという圭にとって恩人と言える存在の名前を今の今まで知らなかった。というのは不味かったな、と密かに思いながらフリージングボアが目撃された地点に向かっていた。

自分の事でいっぱいいっぱいだったのは否定出来ないが、それでも失礼というものだろう。

肩を落としながら歩く圭の姿はどこか小さく見えたが、今はどうでも良い事だろう。













ーーーそろそろのはずなんだが、あの辺りか?

今までの目撃情報から推測されたフリージングボアの活動地域に到着しようとしていた。
辺りを見渡してもそれフリージングボアらしき影は一つも見つからなかった。

「予測が外れていたのか?いや、まだ分からないか。とにかく行ってみよう」

圭は一度足を止めて顎に手を当てて考え込んだが、この状況では判断のしようが無いとかぶりを振って再度足を動かした。

ーーーそれにしても、見晴らしが良いところだな。

フリージングボアの出現予測ポイント。そこは高台となっており、かなり遠いところまで見渡す事が出来た。

圭の眼下にはどこまでも真っ白な世界が広がっていた。

「いや、凄いなこの景色は。辺り一面銀世界なんて、向こう地球では見た事ないな。
こういう景色が見られる所もあるんだろうが、地元ではそんな場所無かったしな……」

まるで絨毯のように広がっている様は圭に感動という形で生きる希望を与えられたかのように感じた。
圭にとって知らない世界に一人放り出され、モンスターに襲われ、誰を恨めばいいのかすら分からなくなった。
ようやく街を見つけた時は腰が抜けそうなほど安堵した。
そうして心に余裕を持てたところにこの景色だ。かなり「くる」ものがあったのだろう。
圭の頰に熱い滴が落ちるのを感じた。

ーーーああ、世界はこんなにも…………





























1分か10分か、はたまたそれ以上なのか。長かったのか短かったのか。
それは分からないが、白い世界をその目にしっかりと焼き付けた。

「誰にも見られてないだろうな。どうにも可笑しなテンションになっていたな。こんなところを見られたら俺は首を吊るぞ……」

そう言いながら恥ずかしげに辺りを見渡す圭の眼に影がよぎった。

「あれは……?まさか!」

細く、小さなシルエットはを連想させた。
おそらくあれがフリージングボアなのだろう。そう認識した瞬間、凍る蛇フリージングボアに向かって右腕を突き出した。

「氷刃よ『アイスエッジ』」

刃物のように鋭い氷の刃がフリージングボアに襲いかかった。
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