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一章
第十一話
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「えっと、先ずは『フリージングボア十匹の討伐』か。ヴァイオレットはさほど強くはないと言っていたが、油断は禁物だよな……慎重に行こう」
それにしても、と
ーーーボアってイノシシのことじゃ無くて、蛇のことだったんだな。
そう内心感心していた。今の今まで勘違いしていたことに恥じ入りながらもヴァイオレットの説明を聞いていたのだ。
そう、実はギルドを出る前にモンスターの情報をある程度ヴァイオレットから聞いていたのだ。
それによれば、フリージングボアはあまり強いモンスターではなく危険は伴うが、一匹なら町娘でも倒せるらしいのだ。そう、一匹ならだか。
フリージングボアの特徴は遅効性の毒を自身の牙から分泌する事だ。
毒と言っても三日以内に解毒剤を摂取すれば治る程度のものでしかない。
もう一つの特徴は徒党を組む、という事だ。彼等は弱い、だから徒党を組む。
そうして厳しい生存競争を生き抜くのだ。
そしてそれが冒険者がフリージングボアを討伐する理由だ。一匹だけなら大したことは無いが、基本的に群れで行動するので闘いに慣れている者でなければ危険なのだ。
「うん、やはり慎重に行こう。本来なら武器や防具を身につけるものだからな」
そう、圭は武器や防具の類いが無い。なら買えば良いのでは無いか、と思うのは当然だが思い出して欲しい。
圭は借金をしているのだ。プラスどころかマイナスにメーターが偏っているのだ。
「流石にギルドでも武具の支給はなかったし。ま、地図を貰えただけありごたいと思わなければな」
そういう事で、圭は他の冒険者よりも討伐依頼のリスクが大きいのだ。
何故採取依頼にしなかったのかとも思うがきっと彼はこう言うだろう。ノリと勢いだと。
「受けたものは仕方ないか、依頼を取り下げたら違約金が発生するらしいし。俺にそれを払う金は無いし……はあ、早く金が欲しい」
そう愚痴りながら歩いていると、先程町に入る時に通った門の前までたどり着いた。
少し前に見た男が立っていた。
あの門番だ。
「お前は……圭だったか。冒険者ギルドにはもう行ったのか?」
流石に門番の方も圭のことを覚えていたようで、手を振りながら彼から圭に近づいて来た。
「ああ、なんとか冒険者になれたよ」
一応圭も手を挙げて応える。
「そうか、そりゃ良かった。今から依頼か?」
「ああ、フリージングボアの討伐に行ってくる」
「あいつか、囲まれると厄介なんだよな。まあ、気をつけてな」
そう言って仕事に戻ろうとする門番を見て、大切な事を忘れていたのに気づいた。
「そうだ、あんたの名前はなんて言うんだ?」
一瞬キョトンとしたが、直ぐに言葉の意味を理解した門番はカラカラと笑いながら言った。
「キースだ、新人」
それにしても、と
ーーーボアってイノシシのことじゃ無くて、蛇のことだったんだな。
そう内心感心していた。今の今まで勘違いしていたことに恥じ入りながらもヴァイオレットの説明を聞いていたのだ。
そう、実はギルドを出る前にモンスターの情報をある程度ヴァイオレットから聞いていたのだ。
それによれば、フリージングボアはあまり強いモンスターではなく危険は伴うが、一匹なら町娘でも倒せるらしいのだ。そう、一匹ならだか。
フリージングボアの特徴は遅効性の毒を自身の牙から分泌する事だ。
毒と言っても三日以内に解毒剤を摂取すれば治る程度のものでしかない。
もう一つの特徴は徒党を組む、という事だ。彼等は弱い、だから徒党を組む。
そうして厳しい生存競争を生き抜くのだ。
そしてそれが冒険者がフリージングボアを討伐する理由だ。一匹だけなら大したことは無いが、基本的に群れで行動するので闘いに慣れている者でなければ危険なのだ。
「うん、やはり慎重に行こう。本来なら武器や防具を身につけるものだからな」
そう、圭は武器や防具の類いが無い。なら買えば良いのでは無いか、と思うのは当然だが思い出して欲しい。
圭は借金をしているのだ。プラスどころかマイナスにメーターが偏っているのだ。
「流石にギルドでも武具の支給はなかったし。ま、地図を貰えただけありごたいと思わなければな」
そういう事で、圭は他の冒険者よりも討伐依頼のリスクが大きいのだ。
何故採取依頼にしなかったのかとも思うがきっと彼はこう言うだろう。ノリと勢いだと。
「受けたものは仕方ないか、依頼を取り下げたら違約金が発生するらしいし。俺にそれを払う金は無いし……はあ、早く金が欲しい」
そう愚痴りながら歩いていると、先程町に入る時に通った門の前までたどり着いた。
少し前に見た男が立っていた。
あの門番だ。
「お前は……圭だったか。冒険者ギルドにはもう行ったのか?」
流石に門番の方も圭のことを覚えていたようで、手を振りながら彼から圭に近づいて来た。
「ああ、なんとか冒険者になれたよ」
一応圭も手を挙げて応える。
「そうか、そりゃ良かった。今から依頼か?」
「ああ、フリージングボアの討伐に行ってくる」
「あいつか、囲まれると厄介なんだよな。まあ、気をつけてな」
そう言って仕事に戻ろうとする門番を見て、大切な事を忘れていたのに気づいた。
「そうだ、あんたの名前はなんて言うんだ?」
一瞬キョトンとしたが、直ぐに言葉の意味を理解した門番はカラカラと笑いながら言った。
「キースだ、新人」
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