氷結セシ我ガ世界

晴れのち曇り

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一章

第九話

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思わず見惚れるほどの笑みを浮かべたヴァイオレットに対し、いつもそんな顔をすれば良いのに。と思わないでも無かったが、再度彼女の口が開いていくのを感じて慌ててその考えを頭の中から追い出した。

「では、これで試験は終わりました。冒険者となるのに問題はありません。
そして、一定以上の実力があると判断いたしましたので、新道 圭さんの冒険者等級を『三』とし、これよりは三級冒険者と名乗っていただきます。
ここまでで何かご不明な点やご質問等はございませんか?」

また無表情に戻ったヴァイオレットは息継ぎ無しで言い切った。

「あっ、ああ……大丈夫だ」

少し気圧されながら圭は頷いた。

「左様ですか。では後にご質問等ございましたら何なりとお聞きください。それでは受付に戻りましょう。お疲れ様でした」

そう言うと直ぐに訓練所の出口へ向かった。
しかし、何かを思い出したのかもう一度こちらに振り向いた。

「そうでした。この訓練所を戻していただけますか?」

あっ、という声が出た。すっかり忘れていたのだろう。

「わかった、直ぐに戻す」

圭が腕を一振りすると、氷漬けになった訓練所が元に戻った。氷漬けになったという事実が

ーーーやはり異常ですね。あれほどの規模の使ったというのに、それを無かったかのように消し去るなど術者自身にも出来ない筈だというのに。

改めて新道 圭という人間の異常性を思い知らされ、ヴァイオレットは戦慄するのであった。






















訓練所を元に戻した圭とその力にこっそりと驚愕の視線を送っていたヴァイオレットは先程の受付に戻って来た。

「改めて、試験合格おめでとうございます。貴方は只今を持って三級冒険者となりました。
その名に相応しい冒険者となることを心からお祈りしております」

本当にお祈りされているのか分からないような、無感動で無表情な言葉を受けた。

さっきのあの微笑みをもう一度見たいとも思ったが、それよりも気になることがあった。

「とうして冒険者ギルドの受付嬢があんなにも強いんだ?」

確かに只の受付嬢に高い戦闘能力など必要ないだろう。
しかし、これにも理由がある。

「はい、それは冒険者ギルドの受付嬢になるには最低でも二級冒険者以上で無ければならないからです。
主に冒険者の方々は荒くれ者が多いので、報酬の面で難癖をつけられる事がそれなりにあります。
それを収めるのが私達受付嬢なのです。
よって受付嬢には高い戦闘能力が求められるのです」

なら他の冒険者に任せれば良いのではないか。そう考えるかもしれないが、難癖をつけて来たのが高い戦闘能力を持つ冒険者であった場合、その場にいる他の冒険者では歯が立たないという事があり得るからという理由を付け加えておこう。













「じゃあ、早速依頼を受けたいんだが」

圭は僅かに笑いながらヴァイオレットを見遣った。
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