氷結セシ我ガ世界

晴れのち曇り

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一章

第一話

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見渡す限り白。
これは雪だろうか?

ーーーなんだ?

頭の中に流れ込む膨大な量の情報。

ーーーこれは……

自分の眼も頭も信じられない。

「どういう事なんだ……?」

その呟きに応えられる存在は見当たらない。
人間が生存できる所ではない。
だが、生命の息吹を感じる。

「まて……どうしてそんな事が理解わかる?」

そう、理解わかる筈がない。何故なら彼は只の一般人だったからだ。
このような生命の感知など出来るわけが無かった。

ーーーどうして?

その自問に答えを見出すより先に、彼にはすべき事ができた。
先程から感知している何かが此方へと向かって来る。

ーーー人間じゃ……ない?

敵意を感じる。

殺意を感じる。

唸り声が聞こえる。

狼だろうか。

だが、このような狼は知らない

かなり大きい。

人1人くらいの体長がある。

「獣……か?」

しまった、そう思い口を噤んだ時にはもう遅かった。

殺意が牙を剥いて此方へと疾走する。

ーーー逃走は出来ない。迎撃しなければ。

何故そこまで冷静に判断出来たのかは分からない。

しかし、やらなければならないことは不思議と分かった。

「貫け『アイスジャベリン』」

これが自分の声なのか?
そう思う程冷え切った声が白い世界に小さく響く。

槍の矛先のような形をした巨大な氷の塊は、少しも狂う事なく狼の額を貫いた。



















「……ふう」

溜息を一つ、自分の中に残っていた僅かな緊張を押し流した。

その姿はあまりに自然で、周囲に誰かがいればだと思うのは間違いないものだった。
その事実に彼は恐怖した。
まるで自分が自分で無くなるような言い知れぬ不安感に襲われた。

しかし、それに自分もいた。
恐怖心がまだ自分に残っていたのかと。
そう安心したのだ。

「落ち着け……落ち着け……俺は誰だ?」

そう自問する。

「俺は新道 圭、高校2年17歳だ。学生服を着ているのが証拠と言えば証拠だな」

ーーー良かった、まだ覚えてる。

「ここはどこだ?」

そう自問する。

「……わからない」

ーーーここは日本じゃない?

「いや、そもそも地球上なのか?」

彼、新道 圭は先程の巨大な狼を知らない。
地球にあのような存在がいる事など聞いた事がない。

現状を説明できる言葉を圭は知っている。
その知識がある。
しかしそれは、小説やアニメのような空想の中だけの現象の筈だ。

ーーーしかし、それ以外に考えられない。

急に現れた銀世界。
地球上に存在しない生物。
魔法としか思えない力。

ーーーつまりこれは……

「異世界転移……か?」




















これが始まり。
世界を揺るがす力を与えられた少年が、異世界に降り立った。
これは英雄譚となり得るのだろうか。
それは未だ誰にも分からない。
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