父親が同じ私たちは霊でこづかいを稼ぐ

第76話 迷宮の家１

　その家は資産家の男が一人で住んでいる。
　その家は広大な敷地の中にある。
　男は、一緒に住む家族はいない、親戚も変人扱いして連絡を取ることもしない。
　男は、友人もなく一人のはずである。
　男は何を思ったのか５０歳の半ばにして、家の増築を始める。
　それも一回だけではなく何度も何度も・・・
　それは男が９０歳でなくなるまで続けられる。
　その家は巨大化して広大な敷地を埋め尽くす大きさになっている。
　男の死後、多くの親類縁者が現れる。
　男を生前避けてきた人たちが男の残した資産に群がっているのである。
　３０人以上の人々が、資産を漁りにその家に入って行く。
　その家は巨大な迷宮になっている。
　増築を重ね、廊下や部屋の配置に規則性はなく、中に踏み込めば自分のいる位置が分からなくなるのである。
　３０人以上の人々は、１人も出てくることはなかった。
　家の中で多くの人が行方不明になったのである。
　家族たちが警察に通報する。
　警察官は、命綱をつけて中を捜索する。
　中は複雑で捜索は難航する。
　数日にわたって続けられた捜索で、誰一人見つからなかったのである。
　一時はマスコミに出られない迷路の家として取り上げられる。
　行方不明になった人々は結局、どうなったのかわからない。
　そもそも、男が家を増築し続けた理由が分かっていないのである。
　その家は、その後、放置されているのに朽ちることなく立ち続けている。
　今は肝試しに訪れる若者がいるだけである。
　ある日、ユーチューバーが１人でその家に訪れる。
　彼は、１人で心霊スポットを渡りあるいて配信していた
　「今から迷宮に入ります。」
彼は、命綱を玄関ドアに結び付け、中に入る。
　入ってすぐ、彼は不思議に思う、この家に中は整然としていて、ほこりも積もっていない。
　まるで誰かが管理しているようである。
　それに内装も傷んでいるところがない。
　彼は違和感を覚える
　「結構ここは、変なところですね。」
その時、引き返そうか考えるが、生配信中なのでそのまま奥へ進む。
　本当に中は迷路の様で自分がどこにいるのかわからなくなる
　「本当にここは迷宮です。自分がどこにいるかわかりません。命綱だけが頼りです。」
そうしているうちに命綱のロープの抵抗がなくなる。
　彼は不審に思い、ロープを引っ張らないようにして、引き返す。
　するとロープが途中からなくなっている
　「ロ、ロープがない。」
彼は焦る。
　どこにもロープの先がないのである。
　彼はさまよい始める
　「どこにいるか分かりません。誰か助けてください。」
配信を見ていた視聴者が警察に通報する。
　突然、彼は
　「わーっ」
と叫ぶとスマホを落としたのか映像がぶれた後、配信が止まる。
　警察官が駆け付け、命綱をつけて捜索を始めるが、彼は見つからない。