勇者がアレなので小悪党なおじさんが女に転生されられました

第4章 宮廷魔法士

第35話 ナツキ、死にかける

　ナツキはアニタに条件を出す。
　「もし、俺が勝ったら俺の彼女になってくれ。」「何を寝ぼけたことを言っているのですか。あなたの彼女になるくらいなら死を選びます。」
　「アニタちゃん、そんなに嫌わなくてもいいじゃん。」「私はあなたが大嫌いです。」
　「よし、アニタちゃんより強くなって見返してやる。俺に惚れさせてやる。」
アニタはナツキを汚物でも見るような目で見て言う。
　「冗談は存在だけにしてください。」
ナツキはアニタを最初恐ろしく感じていたが、慣れてくるとアニタが美少女であることに気づいたのだ。ナツキは本能で口説きにかかっている。
　アニタは今日こそナツキのスケベ根性を折ろうとする。アニタの目的はアニエスとのデート阻止である。
　ナツキは美少女アニタの動きを逃さずに見ようとする。アニタが白い影になる。彼女はナツキの右側を駆け抜けざま、木剣で胴を思いっきり打ち抜こうとする。
　アニタの打ち込みが普段より大降りになる。ナツキは自分の腹に迫る木剣を自分の木剣で受けて防ぐ。強力な打ち込みにナツキは耐える。
　打ち込みが終わった後、焦げ臭いにおいが漂う。打ち込みを受けたナツキの木剣が強烈な摩擦で焦げていた。
　アニタは信じられないような顔をする。見ていた「アニエス様をあがめ隊」の面々は固まっている。
　ナツキは、一人浮かれてアニタに言う。
　「アニタちゃん、君の剣を受けたよ。俺上達しているでしょ。少しは惚れたよね。」
最後の言葉が余分だった。アニタは怒り、再び木剣をナツキに向ける。彼女が消えるとナツキが鼻から血を吹き出しながら宙を舞う。そして、ナツキの落下地点にアニタが現れ、木剣をバットのように振る。
　再びナツキは宙を舞う。アヒムが止めに入る。
　「止めろ。死んでしまうぞ。」「こいつ、殺す。」
アニタが荒れ狂っている。アヒムは必死になだめる。ナツキはディルクのおかげで一命を取り留める。
　ナツキはふらついた状態で魔法の訓練をする。ヨーゼフがナツキに言う。
　「勇者様、今日は休みにしたらどうですか。午前中死にかけたんですから。」「魔法のレベルを上げてアニエスちゃんに見直してもらうんだ。」
エック、エマ、ヨーゼフはナツキを見て「こいつは女のためなら何でもするな。」と思う。