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174話 婚約

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 翌朝、九郎はあやめと仲良く一緒に大学へ歩いていく。2人が構内に入るとつよしと美琴が声をかけてくる。
 「おはよう、社本さんと仲直りしたのか。」「おはよう、結婚の約束をしたんだ。」
 「うらやましいな。」「あやめ、そんなに早く結婚の約束して大丈夫。」
 「私は九郎がいいから。」「あやめ、一緒に暮らしたら見えないところが見えてくるわよ。」
 「みこ、それで同棲する話していたのか。」「つよし、一緒に暮らすなら当然よ。」
九郎はつよしの肩をたたく。久しぶりに4人で教室に入る。昼休み時間、4人は学食に行く。そして九郎に電話がかかってくる。父親からだ。
 「九郎、今、社本さんの家にお邪魔しているよ。」「お父さん来ているの。」
 「当たり前だ。お前の結婚が決まったんだから来るに決まっているだろ。」「どうして知っているの。一久さんから聞いて駆け付けたんだよ。」
 「えっ・・・」「それからアパートは引き払うことにしたから、今日から社本さんの家に泊まりなさい。あんなかわいいお嬢さんと一緒なんてうらやましいぞ。」
 「ちょっと待って。」「これから結納の予定立てるから電話切るぞ。」
九郎は、父義郎の電話に茫然ぼうぜんとなる。あやめが九郎に聞く。
 「九郎どうしたの。誰からの電話?」「お父さんから、今から結納の予定を立てると言っていた。」
 「えっ、ちょっと待って。」
あやめは一久に慌てて電話する。しかし一久は電話に出ない。
 「やられたわ。」
あやめがつぶやく。九郎があやめに聞く。
 「どういうこと。」「今頃、町内の役員たちや氏子は、私たちが婚約したと知らされているわ。」
 「ええ。」
九郎は氏子総代の喜ぶ顔を思い浮かべる。あやめはさらに言う。
 「このままだと結婚式まで一直線よ。」「うれしいけど、急すぎるよ。」
九郎とあやめは講義が終わると家へ急ぐ。あやめの家に着くと玄関で一久と義郎が待っている。2人に義郎が言う。
 「もう、町内の皆さんが集まっているよ急いで急いで。」「お父さんどういうこと。」
 「婚約発表をするぞ。この町の人たちはノリがいいなー」
あやめの予想は当たっていた。九郎とあやめと2人の両親は、拝殿の左側にある建物に行く。中にはみんなが集まっている。
九郎とあやめはみんなに結婚の約束をしたことを報告する。その後は祝いの宴会が始まる。

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